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神様の椅子  作者: *amin*
三章
26/64

26 閉鎖された魔術国家エデン

「エデンはファライアンの首都ファーディナンドから東南の方角に向かった所です。深い森の中に集落を構え、本当はそこを通るのには特殊な魔術がいるんですが、オルヴァーを連れていってください。彼はエデン出身です、彼ならその森の中にある集落を見つける事が出来るでしょう」



26 閉鎖された魔術国家エデン



「俺も行きたい!」


エデンに行くと伝えれば、ルーシェルは絶対に自分も付いて行くと聞かなかった。そりゃ俺だって連れて行きたいけど、エデンの人間に攻撃される心配だってある。ルーシェルを連れていくのは正直怖い。悩んでいる俺にライナがコソッと耳打ちをしてきた。

緑の国宝石には魔法使いに会えって書いてたんだろう、と。つまりルーシェルは国宝石の謎を解こうとしてるのか?確かにゲーティアを探す為ならしょうがない。少し危ないけど、城の中に1人残していくよりかはずっといい。

俺とライナ、ルーシェルとオルヴァーは馬小屋に向かった。


「ライナ、あんたは馬に乗れるのか?」

「あぁ、心配いらないさ」


オルヴァーはライナに1頭、俺とルーシェルに1頭馬を渡し、自分も馬に乗った。ここからエデンには馬で3日かかるらしい。まぁ途中、色んな町に泊まるみたいだけどな。なんだかこうやって馬で移動とかシースクエアに向かう最中みたいだな。用件はだいぶ違うけど。

オルヴァーが腹を蹴って馬を飛ばし、俺とライナもその後に続いた。真っ青な緑が綺麗な平原を馬を使って走りぬける。見た事の無い光景にルーシェルは目を輝かせていた。

このまま飛ばし続けて、今日は隣の町のファランに泊るらしい。少し長旅になるみたいだけど大丈夫かな。


馬を飛ばし続けて3日が経過した。

途中で3か所の町で一泊して、辿り着いた先には森が生い茂っていた。この中にエデンが存在してるのか?冗談だろ。アルトラントを出る時に貰ったコンパスがあるけど、こんな森の中じゃ狂いそうだ。

オルヴァーは馬を森の入口に繋ぎ、逃げないように固定する。


「あんた達も早くやってくれ。ここから先に馬は進めないからな」

「いいけどよ……本当にこの中に存在するのか?」

「生まれも育ちもエデンの俺が故郷の帰り方を忘れる訳ねぇだろ。この森の中だよ」


オルヴァーがライナが乗っていた馬も逃げないように固定して、それを真似して俺も固定する。

でも生まれも育ちもエデンだなんて、どうしてオルヴァーはファライアンの将軍をやってるんだ?ファライアンとエデンは仲が悪いんだろ。黙っていたライナだったけど、やっぱり気になっていたらしく、オルヴァーにその事を聞きだした。


「あんたはどうしてファライアンに?生まれも育ちもここなら嫌悪感があるんじゃないのかい?」

「俺は言ってみれば駐屯大使みてぇなもんだよ。エデンがファライアンからの差別を受けた事をきっかけに独立してファライアンから正式な謝罪を貰ってからは駐屯大使を派遣する事に決まってな。それが俺な訳。最初は嫌だったけど、女王見たらそんなの吹っ飛んじまった。偉大な方だ」

「女王ねぇ……あんたは姿を知ってるんだね」

「俺だけじゃなくてルーシェル王子も知ってるはずだけどな。行こう」


オルヴァーは適当に流し、森の中に進んでいく。

はぐれたら最後だと言われて、ルーシェルがはぐれないようにしっかりと手を繋いで森の中に足を踏み入れた。深く生い茂った木々が光を遮断し、少しだけ薄暗い。道もなにも全く分からない中をオルヴァーは平然と進んでいく。一体どうやって分かるんだよ。


「オルヴァー、本当にこの道であってんだよな」

「あぁ、この森は通称迷いの森。冒険家や探検家が何度もこの森に足を踏み入れたが、エデンには辿り着けなかった。まぁそれもそうだよな、この森には魔術がかかってる」

「魔術?」

「方向感覚を狂わせる魔術がな。エデンの人間には見えるんだよ、魔術がかかって無い部分が。そこを辿ればエデンに辿り着く」


そう言う物なんだろうか。魔術なんて非科学的すぎて今一良くわからない。ぶっ飛び過ぎだ。やっぱりこの世界は特殊な人間がいるってことだ。それゆえに迫害を受ける。多分エデンもオーシャンと同じように何かしらの迫害を受けたんだろう。

だからファライアンから直接的な関わりを切って、この場所に閉じこもってるんだ。そして唯一ファライアンとエデンを結ぶ事が出来る人間がオルヴァーって訳か。


森を歩き続けて数時間が経過した。くたくたになったルーシェルをおぶっている俺の体も結構ガタが来てるんですけど。

ライナも少し疲れてるみたいだけど、まだ平気そうだ。ドリンに何かを話しかけている。そしてオルヴァーが歩みをとめた。もしかしたら辿り着いたんだろうか。


「オルヴァー?」

「この先がエデンの入り口だ。いいな、何があっても俺の傍を離れるな。殺されても文句は言えなくなるぞ」


脅すんじゃねぇよ。

オルヴァーが一歩踏み出し、森の中を抜ける。その先には森に囲まれてはいるけど開けた場所に辿り着いた。その先には家が立ち並んでいる。ここが、エデンなのか。

呆けている俺達にエデンの人間の視線が突き刺さる。なんでよそ者がいるんだ。明らかに目がそれを物語っていた。

オルヴァーはその視線を跳ねのけるように真っ直ぐ1つの家に向かって歩いて行く。どうやらあの家が長老の家の様だ。


エデンの人間が不快そうな表情をしながらも、俺達に関わるのは嫌なのか遠巻きに眺めている。正直言ってオーシャンよりも居心地悪いな。こっちは陰湿な感じが漂いすぎだ。

オルヴァーによって扉が開けられ、中に入るように促される。家の中には老人と、その娘だろう50前半のおばさんがいた。老人は手に水晶を持ち、来たか……と呟いた。

来た?もしかして俺達が来るのが分かっていたのか?どうやって分かったんだ。密偵でもいたのか?


「久しぶり。じいさん、母さん」


あーオルヴァーは長老の孫だったのか。だったら駐屯大使になってもおかしくない。それ相応の身分だろう。

じいさんは水晶をソファに置き、座るように促した。


「馬鹿な孫がファライアンの人間を連れてきたわい。わしらに何を望む」

「馬鹿言うなクソジジイ。この方はルーシェル第2王子。アルトラントの皇太子だよ」

「バルディナに潰されたアルトラントのねぇ……」


老人とおばさんの視線が俺達に向けられて気分が悪い。ルーシェルも居心地が悪そうだ。

その空気を感知したのか、オルヴァーは注目を自分に集める為に話を切り出した。


「今日はファライアンの大使としてのお使いだ。ファライアンはエデンに協力を要請してる。バルディナの次の標的はファライアンだろう。まずは大陸内を1枚岩にしないといけない」

「ほぉ……ルネ、あいつらを呼んでこい」

「分かったわ」


おばさんが老人に言われるがまま家を出ていく。あいつらって誰なんだ?


「悪いな。今から少し話し合いになる。エデンでは民衆を率いるのは歳が40までって決まりがある。じいさんはとっくに引退してるから、じいさんがOKしても意味ねぇんだよ」

「そうなのかい。あんたの父親でも年齢的に無理なんだろうね」

「俺の親父はファライアンのクーデターの際に死んだ。だから俺が向こうに派遣されてるんだ」


オルヴァーの父親はクーデターで命を落としている……それなのにファライアンにここまで尽くせるのか?そんなに女王は素晴らしい人なのか?

そしてエデンにそんな風習があるなんてな。40って若すぎやしないか?国を引っ張るのはもう少し上でも全然問題ないはずなのに。まぁ他人の風習をとやかく言う趣味は無い。そいつらが到着するまで、聞きたい事を聞いてもいいんだろうか。

ルーシェルも同じ事を思っていたらしい、俺を見ている。それに頷いて、老人を見据えた。この人なら何か知ってるかもしれない。


「御伺いしたい事があります」

「なんじゃ、アルトラントの王子様達」

「国宝石の秘密を御存じないですか?緑の国宝石には魔法使いの国と記されていたようです。魔法を扱うのはここしかない」

「……なぜ記されていた文章を読めた」

「それを言うことはできませんが……ご存知ならばお話を御伺いしたい」


老人は俺達をじっと見据えている。どうやら何か知っているようだ。

そしてオルヴァーを交互に見定め、溜め息をついた。


「オルヴァー、お前達ファライアンはゲーティアを手に入れるつもりか?」

「あぁそうだ。軍事国であるバルディナや最強の武器とも言われている銃を扱うザイナスの侵略を追い払うのにファライアンとエデンだけじゃ無理だ。他の国にも要請を頼むが、それはバルディナもするだろう」

「愚か者が。ゲーティアの呪いも知らずに……お前も女王にたぶらかされたか」

「女王を愚弄するな。いくらあんたでも許さない」


オルヴァーの殺気が激しくなる。本物のそれに息を飲んだ。

何だかヤバい雰囲気になってしまった。一触即発の状態だ。ライナはその光景を黙ってい見ている。観察力が鋭いから何かを探ってるんだろうな。

老人は黙っていた重い口を開いた。


「確かに我がエデンが600年前の世界大戦の際、英雄ダレンにゲーティアを与えた。だが強大な魔術にはそれ相応の対価が必要になる」

「それ聞いた事があるよ。オーシャンが言ってたよ」


身を乗り出したルーシェルに老人は少しだけ困ったように笑う。それを知っているのに探そうとするのか。目がそう訴えかけていた。

でも疑問だ。エデンがゲーティアを作ったって言うのなら、エデンがいればゲーティアの様な魔法を再び作り出せるんじゃないか?そうしたら国宝石なんかなくてもバルディナを……


「あの、エデンがゲーティアを与えたって事はエデンが作ったって事ですよね?今もその技術が……」

「残念じゃが、あれは古代魔法じゃ。1000年以上前のエデンが数万人もの血を代償として作った魔法。その方法が記された物は全て無くなり、わしらが再び同じ魔法を作ることはできん」


そうか、まぁ話が出来過ぎてるもんな。ゲーティアの魔法をエデンがいくらでも作れたのなら、エデンが最強の国って看板をしょってもいいもんな。

落ち込む俺の隣に腰かけていたオルヴァーが再びゲーティアのヒントを聞こうと口にした。


「じいさん、俺は女王を外に出したいんだ。あの忌々しい日から女王は箱庭から出られなくなった。女王の呪いを解く為にもゲーティアが手掛かりになる」

「ゲーティアの呪いは解けん。女王は一生あのままだ」


何の事なんだ?さっぱり分からない。しかしライナの言葉にオルヴァーが息を飲み、老人が目を見開いた。


「なぁ、女王を箱庭に閉じ込めて世間に出していない割に国民の女王を支持する力は相当なものだ。これは異常だ、妄信的な何かを感じるね」

「……オルヴァー、お前言ってないのか」

「言う必要が無かった」

「馬鹿ものが。お嬢さん、王子様達、それこそが青の国宝石の呪いなんだよ」

「呪い?」


確かローレンツも女王は呪われているって言っていた。国宝石の呪い?じゃあルーシェルもそれにかかるかもしれないのか?オーシャンでマイアが国宝石の魔法を受け継げば、その代償があるっつってたけど、それが呪いって意味なんだろうか?

オルヴァーは唇を噛み、何も言う気は無いらしい。

そんなオルヴァーの代わりに老人が言葉を放った。


「青の国宝石……民衆を魅了し、全てを包み込む優しさ。国宝石を継承した者はその加護を受け継ぎ、民衆は魅了される。しかしその代償に全ての者を平等に愛す事を強制し、1人の対象を愛す事、他人を憎む事を禁じる。その禁を破った場合、主にも相手にも恐ろしい災いが降りかかる」

「じゃあ女王が出て来ないのは……」

「鋭いなお嬢さん、そうだ。女王を外に出す訳にはいかない。接する人間が多ければ多いほど、誰かを憎む事も、誰かを愛する確率も高くなる。だから女王はあの場所に閉じ込められているのだ」


それがファライアンの女王の真実なのか……女王は誰も愛せない。全ての人間を同じように愛するしか方法が無い。だからジェレミー達はあの場所に閉じ込めて情報を流さないんだ。

女王に余計な感情を与えないように、刺激しないように。女王を守る為に……でも閉じ込める事によって回避できる物なのか、女王はそれでいいのか、外に出たがらないのか?


「他の国宝石にも呪いが?」

「無論。バルディナが持つ黒の国宝石は全てを屈服させる力、その代償にその力に魅入られて、破壊行動を繰り返すようになる。パルチナが持つ紫の国宝石は全てを欺く力。その代償に周りを欺き生き続ける為、最終的に己自身も欺き、分からなくなる。ルーシェル王子、あんた達アルトラントが持つ緑の国宝石は全てを癒す力。その代償にその傷を受け入れる事で寿命をすり減らす」

「なんだって!?」


ルーシェルも驚いてるけど、俺もそれと同じくらい驚いている。寿命をすり減らす?そんな馬鹿な話あるか!捨てさせなければ!

慌ててる俺をオルヴァーが諌めようとしてくる。そんなの悠長にしている訳にはいかない!


「落ちつけダフネ、心配するな。王子様は国宝石の主になってはいない。大丈夫だ」

「ど、どうやったらそんなの分かるんだよ」

「王子様自身が契約の手続きをしてないんだ」


それを聞いて少し安心した。ルーシェルもライナもだ。じゃあなんで女王は契約したんだ?契約さえしなければ、女王は箱庭に閉じ込められずに済んだのに……そして


「じいさん、赤の国宝石はどうなんだい?」

「東天が持つ赤の国宝石は大いなる民衆を導く希望の光。その代償に永遠に導き続けなければならない為、肉体が老いる事が無くなる」

「じゃあダレンは……」

「あぁ、奴は生きている。あの日から時が止まり、国宝石の呪いを強いられ、奴は今でも東天のリーダーだ。東天は今でも奴が表立って率いている。奴は見ているのだよ、英雄と言う名の神様の椅子を手に入れたその日から、今までの世界を」


600年前の世界大戦の英雄、ダレンが生きている。その事実が胸の中に浸透していく。

じゃあダレンさえいてくれれば、そんな英雄がいてくれたら士気が上がるのは間違いない。でもどうして鎖国なんてしたんだ。そんな事しなくてもダレンの言う事なら聞くんじゃないのか?


「どうして東天は鎖国を?」

「ダレンは愛想が尽きたんじゃよ。小競り合いの終わらない世界にね。こんな世界にする為に仲間も家族も全て犠牲にした訳ではないのに、結局はどの国も独自の発展を遂げ、いがみ合う。それならば自分の国だけでも守ろうと情報統制をし、鎖国体制を敷いた」


そんな事が……じゃあ東天が鎖国したのはダレンが他の国に絶望したから。自分達が血を流して手に入れた平穏を崩していくのが気に食わなかったからなのか……

ルーシェルは俺の服の袖を掴み、ライナは何かを考え込んでしまった。

暫く無言が続き、その空気に耐えられなかったのかオルヴァーが出ていってしまう。そしてそれを追いかける様にライナも出て行った。

これからどうなるんだよ……


-ライナside―――――

「聞きたい事があるんだけどいいかい?」

「なんだよライナ」


ある程度話が終わって、出て行ったオルヴァーを追いかけた。

オルヴァーは家から出て、少し離れた所で座りこんで、空を見上げていた。この深い森におおわれた中で唯一、この村の中だけが太陽の光を浴びる事が出来る。森の中に入れば、光が遮断され、昼間でも薄暗いから。


「姫さんの事……一体どういう事だい?あんた達がそこまでして外に出したいなら、どうして国宝石を継承させた。忌々しい日ってどういう意味だい?」


あそこまで躍起になるなら、どうして間違いを犯した。どうして箱庭に閉じ込める必要があった。女王が望んでした事なのか?自ら継承したって言うのか?

だがきっと、あたしが思っている以上に複雑な事情があるはずだ。だからオルヴァーはこんなに辛そうな顔をしている。


「……あんたも知ってるだろう。ファライアンのクーデターの件は」

「あぁ、犠牲者は数万人、死者は1万人以上だったクーデターか。確かパルチナの情報操作のせいだったね。騎士団の被害が最もでかく、ファライアン壊滅のカウントダウンとまで言われてた。まさか……そのクーデターを鎮める為に?」


あたしの仮説が外れていたのか、オルヴァーは笑いだした。でもそれは馬鹿にしていると言うよりは自傷しているような笑い方だった。


「騎士団の被害がでかい、パルチナの情報操作、ね……あながち間違ってはねぇけどな」

「何が言いたいんだ?」

「確かに事件が起こったのはパルチナの情報操作のせいだ。だが、そのお陰で助かったのは騎士団だ。俺達の被害は議員、市民を含めて一番少ない。騎士団の被害がでかくて数千人以上死んだって聞いてるだろ?実際は200人も死んでねぇよ。パルチナのお陰で俺らはヒーローになった訳よ」

「なっ……」


訳が分からない。パルチナのせいでクーデターが起こったんだろう?それなのになぜ騎士団が助かる。じゃあ騎士団が何か問題を起こしてパルチナが庇った?だがパルチナのせいでクーデターが起こったのは事実。だとしたらなぜ……

詳しく聞きたかったが、オルヴァーは話を変えてきた。


「ビアナの当主イグレシアの片腕、レオンの事は?」

「あぁ、あいつは少し気になっているんだ。あいつがどうしたんだい?」

「レオンは数年前パルチナのクーデターに紛れて青の国宝石を盗みに潜入した」


国宝石を盗みに来た!?

オルヴァーは軽々と言ってのけているが、重罪だ。だがレオンは確かにビアナで生きていた、一体何がどうなっている。


「どう言う事だ」

「トレジャーハンターの世界ではゲーティアは最高ランクのお宝だそうだ。勿論国宝石も。クーデターで俺達騎士団が対応してる時、国宝石を飾ってある部屋にいた女王と侵入したレオンは対面した。レオンは女王に危害を加える気はなかったそうだが、気が動転した女王は何とかしてその場を助かる為に……まぁ女王は自ら国宝石と契約してクーデターを鎮める気ではいたらしいんだが……」


少しだけ話が成り立ってきた。女王が国宝石を継承した経緯を。ファライアンのクーデターを救う為。だがそれではレオンが生きていた事を説明できない。

国宝石に関する犯罪は重罪、アルトラントだって使者を死刑にしたんだ。ファライアンだって当然その権利はあったはずだ。


「レオンに罰は与えなかったのか?」

「あぁ、無罪釈放。レオンは俺達が捕まえて処刑しようとしたが、女王がレオンを逃がした。どうせ最初から継承するつもりだったから、と。女王は昔から詰めが甘い御方だったからな……その時は国宝石の呪いなんて俺達も知らなかったし、気にもしなかったが……こんな事になるなんて思いもしなかった」

「そうかい……」

「レオンはあの時の事を今も気にしてる。あんた達を敢えて逃がしたのも女王の為を考えてだ。あの日以来、レオンは陰ながら女王を支える誓いを自ら立てている」

「だからあの時、あたしたちを敢えて逃がしたんだね」

「あぁ、ルーシェル王子がファライアンに渡れば、国宝石は2つになる。呪いを解く方法が見つかると思ったんだろう」

「謎が解けたよ。気になってたんだ」


全て繋がった。レオンがあたし達を逃がした理由も、国宝石を継承した理由も、閉じ込めている理由も。悲しい運命だ。本当は継承なんかしたくなかっただろうに、外の世界を見たかっただろうに……

だがこの国が何かを隠してるのは確かだ。オルヴァーはこれ以上言わなかったが、クーデターの真相は闇のままだからね。あたし達に伝わってる情報と真逆なんだ。


「俺達がゲーティアを欲する理由、バルディナに対抗する為でもあるが、女王の呪いを解く為でもある。過去の大戦でダレン以外の英雄は国宝石に力を託す事に成功してるんだ。ゲーティアにその方法が載っているはずだ。それを見つけて俺達は必ず女王を自由にして見せる」



――― 力を手に入れる代償は余りにも重く ―――



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