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神様の椅子  作者: *amin*
二章
17/64

17 話し合いの結末は

「皆の者、今日は集まってくれて感謝する。情報はそれぞれ行き届いておるはずじゃ。わしらはこれからのオーシャンの方針を今日決めなきゃならん」


夜、夕飯を食い終わってライナに話し合いに参加しろと言われた俺はダナシュ族の集会所に足を運ばせた。

正直ルーシェルを連れて行けないのは気になったけど、確かにこんなピリピリした空気の中でルーシェルを連れていってたら愚図ってたかもしれないな。ルーシェルはライナの家で大人しく留守番している。まぁライナのおばさんもついてるし、大丈夫とは思うけど。



17 話し合いの結末は



集まっていたのはマイアと直族長のカーシー、それぞれの部族も族長と族長補佐が出席していた。皆が緊張した面持ちで待機している中に入るのは気まずい。

顔にペイントを施している部族もあれば、比較的アルトラント風の服を身につけている部族もある。かと思えばオーシャン特有の露出の高い服を身につけている奴もいて十人十色だ。


「ライナ、全員揃ったのか?」

「あぁ、左からリーフ族、その隣の身体にペイントを施してる奴がウルジー族、そしてオーシャンの伝統的衣装であるチャグスを着ている奴がノックス族さ。少し距離を置いて座ってるのが左からフィエロン族、アデレイド族、バルフォア族だ。この3部族は外の世界と交流があるから文化もどちらかと言えばアルトラントやファライアンに似てる部分があるだろ」


交流があるのとないので、これだけ服から何から変わってくるんだな。

ダナシュ族は他国との交流は基本、国の会議でない限りは今の3部族に任せてるみたいだから、ライナも含めてオーシャン人独特の格好をしている。

全員が揃った事を確認してマイアが声を出した。


「さて、今日は皆に伝えねばならん事がある。バルディナがアルトラントを侵略したそうじゃ。もしかしたらバルディナはオーシャンへの侵略も考えちょるのかもしれん」


集会場がざわめきだす。

やっぱり信じられない状況の様だ。本当なのか?とざわつく声が耳に届く。

しかしその時、リーフ族の族長であるガタイのいい男が言葉を発した。


「ならば我らも国を守る為に戦わなければならん。守備を徹底させる為にな」

「何を言ってる。オーシャンの人口と攻撃力じゃバルディナには敵わない。バルディナの武器や装備はオーシャンのよりも格段にいいからな」


フィエロン族の族長の隣にいた族長補佐の青年が反対意見を出せば集会場は荒れた。

リーフ族、ウルジー族、ノックス族は腰ぬけの売国奴と声を荒げ、フィエロン族、アデレイド族、バルフォア族は狭い世界しか見ないお前達に情勢が分かる訳がないと反論した。

荒れているこの場をマイアは冷静に見ている。

そして1つの結論を下した。


「皆の者、わしは今回フィエロン族達の考えを支持しよう。オーシャンを世界に開き、情報を集めるのじゃ。今の封鎖された世界ではわし等を救ってくれる国も現れん」

「じっちゃん何を言うんだ!?そんなの俺は反対だ!」

「カーシーの言う通りだマイア、わしらは他国の干渉は受けん!先の大戦での屈辱を貴様は何も理解していない!」

「オーシャン全土に関わる一大事に過去を持ちだしてどうする!?もう600年も昔のことではないか!」

「我らが住処には過去の傷跡が今も残っている!貴様らに我らの気持ちが分かるはずがないであろう!」


ウルジー族の族長がバルフォア族の族長に掴みかかり、乱闘にまで発展する。こんなに国内でいがみ合って、どうやって世界と交流するって言うんだ。

ライナの言う通り、オーシャンには問題が山積みだ。同じ国の人間達がこんな状況じゃ、バルディナが手を下さずとも自滅だ。この国を救おうとは東天もパルチナもファライアンも考えないだろう。

そのまま終結しない話しあいに嫌気がさしたのかライナが立ち上がって声を張り上げた。


「いい加減にしな!あんた達は本気でオーシャンの未来を考えた事があるのか!?バルディナの侵略国に対する扱いは知ってるのか?奴隷政策だ、自分達に反抗する気力すらも失くすほどの過酷な奴隷生活を強いられる!自分の子どもや孫たちに、その苦しみを味わわせる気なのか!?オーシャンを守る為なら、どんな恥をかいても泥を被っても耐えるのが族長の務めじゃないのか!?」


ライナの怒りの籠った訴えに集会所は静まり返った。

でもそれ以前にバルディナの奴隷政策に戦慄が走った。親父とお袋は大丈夫なんだろうか、どんな過酷な事をさせられるって言うんだ?セラやジェイクリーナス達は?クラウシェルとミッシェルと国王たちは?

顔が真っ青になった俺をライナは皆の前に突き出した。


「いって!」

「この男はアルトラントから国外逃亡してきた男だ。バルディナの非道をこの目で見てきた。ダフネ、こいつらに話してくれ」

「そんな事より奴隷政策の事をっ!」

「悪いな、それは後で話す。今この場に協力してくれ……頼む」


ライナの真剣な顔に言い返す事が出来なくなった。

奴隷政策の事が気になって仕方なかったが、ここはライナの言った通り、こいつらに真実を伝えよう。


「バルディナは俺達に因縁を吹っかけてきた。国宝石を盗もうとしたバルディナの使いをアルトラントの国王が処刑した事に腹を立ててだ。あいつらは反抗した一般市民をも剣で斬り殺した。わかるか?剣も持ってない市民を騎士が斬って捨てたんだ。あいつらに騎士の誇りなんかない!奪うもの全てを奪って行く!そうなったらお終いなんだよ!」

「我らは戦のノウハウを学んでいる!海戦ならば負けはしない!」

「あんた達は世界に目を向けなすぎる。バルディナの海軍がどれほど強大か分かってないんだよ。あんた達が所持するあんなちっせぇ船じゃバルディナの軍艦の体当たり1発で沈没さ」

「貴様っ!」

「事実だ、バルディナの軍事増強は著しい。奴らは本気で世界侵略を始めてる。ビアナの領海付近をパトロールしてるし、ビアナの商人も参ってるよ」


アデレイド族がそう告げれば、リーフ族、ウルジー族、ノックス族は黙ってしまった。どうやらバルディナの強大さが少しは伝わった様だ。

静まり返った場を壊すようにマイアが紙を広げた。紙には読めない文字が並んでる。

どうやらオーシャン専用の文字の様だ。


「ライナあれ……」

「オーシャン古来から伝わる古代文字だ。先の大戦の英雄たちによって文字と言語が統一される前まで使ってた文字さ。オーシャン内でもあれを読める奴は少ないんだよ」

「お前読めないのか?」

「残念ながらね。普段使わないから読めなくても困らないし」


あぁそうですか。全くこいつは……

でも他の族長たちは読めるようだ。顔を上げてマイアを見ている。

マイアは頷き、そこに自分の名前を部族名を書いて行く。


「これは協定の証じゃ。我らオーシャンは何者にも屈さぬ。まずは皆で協力してバルディナの動向を探るのじゃ。古いしきたりはこれでもう終わりにしよう」

「マイア……」


フィエロン族、アデレイド族、バルフォア族が次々と署名をしていき、残りはリーフ族、ウルジー族、ノックス族だけになった。

ウルジー族は何かを考え込み、顔を上げライナに視線を向けた。


「ライナ、お前の言う通りだ。我ら族長はオーシャンを守る為ならどんな屈辱でも耐えて見せる」

「そうかい、やっとその気になったかい」


ウルジー族とアデレイド族が署名をし、リーフ族だけになる。

リーフ族の族長は険しい顔を崩さなかったが、溜め息をついて筆を取った。


「1部族だけが違う方向と言う訳にも行くまい……不本意だがな」


リーフ族も署名をし、全ての族長がオーシャンから世界に出る決意をした。

オーシャンがどうなるかなんて分からないけど、でも団結する事でバルディナに脅威は与えれるはずだ。オーシャン人が気性が荒いってのは俺でも知ってる情報だ。バルディナが知らない訳がない。

そのオーシャンの7部族全てが1枚岩になったんだ。本気で怒らせたら怖い事になりそうだ。

まずは牽制できたら上出来だろう。少しずつ軍備を集めて、他国との情報交換をスタートさせればいい。


でもこの状況を未だに快く思ってないカーシーが集会所を出ていってしまった。

カーシーは頑なにオーシャンを開きたくないと言っていたから無理はないのかもしれないが、同じ考えのリーフ族達が同意したんだ。カーシーも受け入れてくれたと思ってたんだけどな……

マイアも今は1人にした方がいいだろうと言ったので、俺達はカーシーを追いかける事はせず、その後も話し合いは続いた。


「なぁライナ、奴隷政策の事教えてくれよ」


族長たちの話し合いもひと段落つき、俺とライナは先に戻る事にした。

礼を言ってきたライナに俺は奴隷政策の事を訪ねた。


「そんなの簡単さ。全てを制限するんだよ。買い物も食料も外に出る事さえも」

「そんな……」

「そしてバルディナの奴隷になり下がったと判断したら規制を解除してある程度の自由を認める。分かるかい?その時に国民はバルディナの国王に酔いしれるのさ。自分達を奴隷から解放してくれたってね。全く上手く人間の心理を逆手に取ってるよ」

「じゃあやっぱり急がなきゃいけねぇ……」

「だけどダフネ、国民の希望がある限り、国民の心は折れない。ルーシェル王子に思いを馳せ、そして国王と后、ミッシェル王女とクラウシェル王子が折れさえしなければ、国民の心がバルディナに染まる事は無い」


ミッシェルとクラウシェル達が……

途端にクラウシェルの言葉が思い出された。自分は王になる為に今まで生きてきた。こんな所で無駄にする気はないって。

クラウシェルならきっと折れない。ミッシェルだってそんなクラウシェルを見たら耐えてくれるはずだ。

待ってろよ。必ず助け出してやるからな……


「ダフネさん!ライナ!大変なんだっ!」


その時、ライナのおばさんが俺達に向かって走ってきた。

息を切らしてパニックになってるおばさんをライナが支えてどうしたのかと聞くと、おばさんはとんでもない事を口にした。


「カーシーが……ルーシェル様を連れて行ったんだよ!もしかしたらルーシェル様を使ってバルディナと交渉するのかもしれない!」

「なんだって!?」


ルーシェルがカーシーに連れて行かれた!?

どこに向かったと聞けば入江の方面に連れて行かれたとおばさんは口にした。どうやらカーシーは無理やりルーシェルを連れて行ったようだ。止めようとしたおばさんは突き飛ばされたらしく怪我をしていた。

助けなければ!やっぱりルーシェルから目を離したら駄目なんだ!カーシーがルーシェルを引き渡さなかったら……ライナ達には悪いけど、カーシーは俺が殺す。

俺とライナはカーシーが向かったと言う入江に走って向かった。



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