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神様の椅子  作者: *amin*
二章
16/64

16 オーシャンの言い伝え

「まず、なぜわしらがこの伝承を知っているかと言うと、世界を手に入れた英雄達は国宝石を封印する際、第3者からの協力を要請した。英雄たちは前の大戦で迫害を受けたわしらに、その役目を担わせてくれたのじゃ。1つは償い、もう1つは新世界にわし等が必要じゃとな」



16 オーシャンの言い伝え



「わしらの民族は英雄たちと敵対していた国に協力をしておった。そして迫害を受けた。しかし英雄達はそんなわしらを救ってくださったのじゃ。しかしわしらの先祖の傷はいえなかった。十数万いたと言われるオーシャン民族もその時はわずか四万程度にまで減少したと言われておったからな。そして英雄達は我らに国宝石を封印する見届け人になってほしいと言ってきた」

「見届け人?」

「国に返還される国宝石を見届け、監視するのじゃ。英雄たちはその時に誓った。この世界の中心に我が力の全てを捨てた。そしてその欠片を世界各地にばらまいたと。そして英雄しかその場所には辿りつけぬと」


どう言う事だ?

その話を聞く限りじゃ、ゲーティアはこの世界の中心に位置する場所に隠されたって事がすぐに分かるじゃないか。

首をかしげた俺に何かをひらめいたライナが顔を上げた。


「世界の中心てどういう事だい?」

「英雄たちはゲーティアが人の手に渡るのを恐れ、ゲーティアに封印をかけて世界の中心に沈めた。そしてその封印を解かぬ限りゲーティアは我らの前には現れん。生憎、中心と言う言葉の意味までは分からん。それは英雄にしか分からんことじゃろう」


まぁオーシャンが知ってたら、国宝石に場所を隠す必要なんてないもんな。

でも封印するくらいなら壊してしまえばいいのに。それか証拠を残さず隠すとか……中途半端なことするからバルディナが国宝石について研究しだしたんじゃないか。

なんで英雄はあえてヒントを残したのか。


「そして英雄達は続けてこう言った。我が国の宝にゲーティアの封印を解く5つの鍵を宝石に封印した。その意味を理解した者にしか力は授けられん」

「じゃあこの国宝石には……」

「国宝石はゲーティアの居場所を記している。それともう1つ、ゲーティアの魔法の1つを宿しておるのだ。英雄は再びゲーティアが必要になった時、探し当てることが出来るように国宝石に魔力を残してヒントを与えた」


そう言うことだったのか……バルディナがどこまで知ってるかは知らないけど、国宝石全てを集めて読解しなきゃゲーティアを見つける事は出来ないんだ。

バルディナはまだ国宝石に書かれた文字を読解出来てない。そして読解にまだかなりの時間がかかるだろう。

だからルーシェルが欲しいんだ。

世界を敵にしたバルディナが世界から攻められる前にゲーティアを手に入れる為には時間がない。ルーシェルを手に入れて一気にゲーティアを手に入れたかったんだ。


「そこまでして封印しなければならないほど危険な物だったんだね」

「そうじゃ、5人の英雄には異名がある。これはライナ、お前も知っている伝承じゃ」

「あぁ、ダフネにも伝えた」

「ゲーティアに封印されている魔法は5種類。1つ目は勇気、民衆を導く絶対的なカリスマ。2つ目は慈愛、罪深き物を許し、抱擁する力。3つ目は癒し、どんな傷も癒す力。4つ目は破壊、歯向かう者がいなくなる絶対的な力。5つ目が嘘、周りを欺き、常に相手をコントロールする力。ゲーティアにはこの5つを手に入れる魔法が記されていると言われておる。そして国宝石にはこのそれぞれの魔法を凝集させている。しかし強大な魔法には代償も付き物じゃ。残念ながらそこまではわしも分からんのだがな」


やっぱりただでは使えないって訳か。でも緑の国宝石の中には緑……つまり全てを癒す力が秘められている。それをどうやって使えるかは分からないけど。すごい物を手に入れてるんだ。

でもちゃんと代償があるんだな。まぁそんな都合のいい魔法が存在するはずがないもんな。

これで分かった。ゲーティアを見つける方法が。まずはこの緑の国宝石に書かれた内容を解き明かさないといけない。

やっぱりファライアンに向かうのが最優先事項だ。

話が終わって、1時間後程経った時、カーシーが戻ってきた。


「じっちゃん、伝えてきたぜ。今日の夜話し合いを開こうってさ」

「おぉそうか。お前達は今日は休みなさい。疲れたじゃろう、奥の部屋を好きに使っていい」

「そうさせてもらいます。行こうルーシェル。ライナはどうするんだ?」

「あたしはもう少ししたら行くよ。ゆっくり休みな」


ライナはまだ話す事があるようだ。まぁ折角の家族水入らずだ。俺が邪魔するのも悪い。

村の外には出ない方がいいと釘を刺され、俺とルーシェルはそのまま奥の部屋に缶詰めになった。

まぁ確かにオーシャン民族からしたら、他国の人間入れたらいけないんだから仕方ないけど、缶詰は船の中だけで終わると思ったのになぁ。


「海で遊びたかったな」


ポツリとルーシェルも呟く。

仕方ないから昼寝でもしよう。こんなにのんびりできる事も中々なかったしな。


―ライナside――――

「じっちゃん、本当に国を解放する気か?国を閉鎖する事で他国との摩擦を失くしてきたのに、また国を解放したら奴らは俺達を襲ってくる」

「しかし今のままではバルディナが攻めて来るのは承知。まず全ての部族を1つにまとめねばならん」


カーシーは今一つ納得が出来てないみたいだね。こんな世界を冷静に監視できない奴が直族長になるなんて恐ろしいったらないよ。

まぁそれもしょうがないのかもしれない。

カーシーは前までは世界に興味を示していた。世界に出てみたいと口にしていた。

でもその夢が叶って初めて外の世界に出た時に、親父を目の前で殺された。その時あたしはまだ6歳でカーシーは12歳だった。

理由はヴァシュタンのお宝をオーシャン人の一部が横から奪った事、カーシー達はたまたまタイミング悪く、その場に居合わせてヴァシュタンに勘違いされた。

誤解が解けた後、ヴァシュタンは勿論謝罪してきたし、それ相応の態度を示してくれたが、勿論そんなもんであたし達の傷はいえない。

親父が戻ってこない事を理解できないあたしは、いつも村の入り口で日が沈むまで親父を待っていた。

そんなあたしにカーシーは泣きながら何度も何度も謝った。


それ以来か……カーシーが外の世界を見なくなったのは。

そして頑なにオーシャン内だけで生きようとした。その反面教師なのか、逆にあたしが外の世界に憧れて村の反対を押し切って外の世界に飛び出した。


“ライナ、一緒に行かないか?もうこんな所に閉じ込められる必要なんて無いんだ”


そう言って手を伸ばしてきた幼馴染。あたしが国を飛び出す1年前にそいつはそう言っていた。本当はあたしだって行きたかったさ。でもカーシー達を見捨てるなんて、その時は出来ないと思ってた。

結局あたしは首を横に振り、そいつは残念そうにして出て行った。幼馴染はオーシャンでは誰もが知ってる英雄の子孫だった。その為、そいつには他の奴の何倍もの束縛と枷が待ち受けていた。自由を望んだあいつは国と家族を捨てて、1人出て行ってしまった。

あいつ……リインは今どうしてるのかねぇ。

そしてあれから7年、15歳だったあたしは22歳に、21歳だったカーシーは28歳になった。でもお互いの考えは今も変わらないようだね。


不機嫌になったカーシーをじっちゃんが複雑そうな顔で眺めている。

じっちゃんもカーシーに外の世界を見せるのは怖いんだろう。でもそんな1人の孫の為に国全体を危険にさらす訳にはいかない。

分かってんのかいカーシー、もう駄々をこねて許される場合じゃないんだよ。


他の部族が集まるには最低でも5時間はかかる。今夜の話し合いは遅くから始まってしばらく続くだろう。

国の運命がかかってるんだ。あたしも参加して積極的に発言しよう。勿論ダフネも参加させる。

王子様は話が分かんないだろうから奥の部屋に待機させよう。話自体はダフネがいれば成り立つんだ。

問題はリーフ族とウルジー族とノックス族をどう納得させるかだ。

話し合いが終わり次第ダフネ達に船を貸そう。そこからビアナに向かえばいい。

オーシャンからビアナへの通路にバルディナの監視船は無いはずだ。ビアナに入っちまえばこっちのもんだからな。


巻き込んでしまって悪かったが、ダフネ達を連れて来れたおかげでじっちゃんに危機感は与えられたようだ。

後はじっちゃんがどう動いてくれるか……



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