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甘い秘密と、黄金色のひととき

 王都の片隅、密談に使われる古びた館。


 宰相ジグルドと財務長ギルバートは、目の前に現れた「かつての仲間」の姿に、露骨な嫌悪感を示した。



 二十年ぶりに王都へ姿を現したジン・サリュート侯爵は、かつての華やかな面影など微塵もなかった。服は汚れ、体は病的なまでに痩せ細り、その瞳にはどこか正気ではない光が宿っている。


「……ジン、それが侯爵ともあろう者の姿か。みすぼらしいにも程がある」


 ジグルドが鼻を鳴らし、蔑むような視線を投げた。

 ギルバートも、汚いものを見るかのように目を細める。


「臆病者が、地方に引きこもって何をしていた? まさか、その痩せた体で金を無心しに来たわけではあるまいな」


 しかし、ジンは二人の侮蔑など気にかける様子もなかった。震える手で、大切そうに抱えていた木箱をテーブルに置く。


「……素晴らしい、商品があるのです。お二人なら、この価値がわかるはずだ」



 ジンが淹れたその茶は、これまでのどんな高級茶葉とも違っていた。訝しげに口をつけたジグルドとギルバートは、次の瞬間、絶句した。


「な……んだ、この味は。喉を通った瞬間に、全身の疲れが霧散していくようだ」

「美味い。……それだけではない。何か、非常に心地よい感覚がする」


 驚嘆する二人に、ジンは笑みを浮かべて囁く。


「それだけではありません。——この茶を飲めば、その日の夜に、素晴らしい夢が見られるのです。懐かしい人、望んでいた景色……極楽の夢だ。そして……」


 ジンは震える手で、小瓶に入った黄金色の液体を取り出した。


 「——さらにこの特別な『蜂蜜』も。これは……淡青い花から、ほんの少ししか採れない、選ばれし者のための蜜です。茶よりも、もっと……もっと凄い効果がある。一度味わえば、もう他の快楽などゴミ同然だ」



 ジグルドとギルバートは、互いに顔を見合わせた。

 この痩せこけた男が持ってきた逸品は、単なる嗜好品ではない。

 これらを独占し、貴族や富裕層に流せば、どれほどの富と権力が手に入るか。依存性が高ければ高いほど、彼らは一生自分たちの奴隷になる。



「……ジン。この茶と蜜、すべて我が方で引き取ろう」

「ああ、生産体制を整えろ。金ならいくらでも回してやる」


 二人は満足げに笑い、手元のカップを飲み干した。

 自分たちが手に入れたのは「富の源泉」だと確信して。



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