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十八年の時を経て

 王都通信社。


 ここは昔から真実よりもスキャンダルを、正義よりも扇情的な見出しを優先する、三文情報を書き飛ばすだけで細々と経営し続けている生きた化石のような新聞社だ。



 重い扉を開けると、安物の巻煙草の煙がどんよりと淀み、インクの染みとカビの臭いが鼻を突く。

 レオンを迎え入れたのは、活気溢れる表の街並みとは対照的な、淀んだ沈黙と咳き込むような空気だった。



「モーリス? ……ああ、そんな奴もいたかね」


 カウンターの奥で、吸い殻の山を前にした年配の編集員が、黄ばんだ指で顔を掻きながら気だるげに目を細めた。


「悪いが、ここは人の入れ替わりが激しくてね。彼を覚えているような人間はもういないよ。十八年前と言えば、この社も経営が傾きかけて、適当なゴシップを乱発していた時期だ。彼もその波に消えた一人さ。事故だか自殺だか知らないが、とっくに終わった話だよ」


 男は吐き出した煙を追い払うように手を振り、レオンの隣国風の高価な上着を値踏みするように眺めて鼻で笑った。


「ただ、地下の資料室……とは名ばかりのゴミ溜めになら、当時の書き損じやボツになった資料がまだ眠っているかもしれん。勝手に探すがいいさ。誰も整理なんてしてないから、目当てのものが見つかるとは思えんがな」





 案内された地下室は、窓一つない鼠の寝床のような場所だった。天井まで積み上げられた書類の山は崩れかけ、あちこちに蜘蛛の巣が張っている。


 レオンは上着を脱ぎ捨て、埃にまみれながら、十八年前の束を一つひとつ紐解いていった。




 指先がインクと埃で真っ黒に染まり、澱んだ空気のせいで喉の奥が引き攣るようにむず痒くなってきた頃。


 山積みにされた低俗な不倫騒動や金銭トラブルの記事の底から、色の褪せた、一冊の黒い表紙のファイルが姿を現した。

 表紙には、『聖教暦418年度 監査報告書類一式』と書かれている。


 その退屈な標題にうんざりしながら一枚めくると、そこには、力強くも達筆な筆致でこう記されていた。



【エリュシオン公爵令嬢断罪事件に関する再聴取記録】



 レオンが震える手でその頁をめくると、そこには彼が探し求めていた、しかし誰も語ろうとしなかった真実の断片が、モーリスという記者の執念と共に刻まれていた。




 「……あった。記録番号、001……」


 埃っぽい沈黙の中で、レオンの呟きだけが冷たく響いた。


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