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地方紙『サリュート日報』三面記事(聖教暦436年 3月17日)
【侯爵邸で侍女急死 私物から多数の盗品発見】
16日早朝、サリュート侯爵邸の使用人棟にて、侍女のうちの一人であるゾエ・ドゥール( 23 )が死亡しているのが発見された。
遺体に外傷はなく、当初は病死と見られていた。
しかし、検死を行った医師によれば、その形相は極めて異様であったという。
瞳孔は限界まで見開かれ、顔面の筋肉は激しい痙攣を起こしたかのように歪んだまま硬直しており、何らかの強力な神経毒、あるいは過剰な刺激に曝された可能性が示唆されている。
遺体発見後、警察による立ち入り検査が行われた際、女性のクローゼット奥から、邸内から盗み出されたと見られる多数の物品が発見された。
銀の食器や宝飾品のほか、主人の研究室から持ち出されたと思われる用途不明の実験器具や、中身の空になった数種類の小瓶などが無造作に詰め込まれていた。
鑑識は、侍女がこれらの盗品に含まれていた未完成の試薬、あるいは何らかの抽出物を誤飲したことによる中毒死と見て、押収された物品の鑑定を急いでいる。
家主であるサリュート侯爵は「彼女に重度の盗癖があったことは把握していなかった。研究室の物品がどの程度持ち出されたのか、現在精査中である」と述べるに留まった。警察による詳細な死因の特定と、流出物の特定調査は現在も継続されている。




