9cs 「永遠の数秒」
会議室の空気が重い。プロジェクターの光で手元の資料が白く飛ぶ。今日の会議でこの企画が通らなければ、プロジェクトは白紙になる――そのプレッシャーが胸をぎゅっと締めつける。上司や同僚の視線が一斉にこちらに向く。心臓の音が耳まで響き、手が微かに震える。口を開こうとした瞬間、声が裏返りそうだ。資料の文字がぼやけ、同僚のペンのカチカチがやけに大きく聞こえる。時計の秒針が止まったように見える。ほんの数秒が永遠みたいだ。
その瞬間、体育館の壇上に立つ小学五年生の自分が浮かぶ。名前を呼ばれ、手がブルブル震え、足は硬直する。クラスメイトの視線が突き刺さり、胸がぎゅっと締めつけられる。額にじんわり汗がにじみ、原稿を握る手だけが震える。呼吸が速く、視界が少し揺れる。時間が止まったように感じる――数秒が永遠に思える。
胸に手を置き、深く息を吸う。泣きだしそうな声で、なんとか最初の一言が言えた。「ぼ、僕の夏休みは……」小さくても、やりきった。「次はもっと練習しよう」――心の奥でそっと誓った。
今、胸に手を置き深呼吸する。あの小学生がいたからここまで来られた。震えても声を出す。空気が重くても、視線が痛くても、最後までやりきれる自信が胸の奥にじんわり広がる。
「……ありがとう」




