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7cs 「転職」
深夜のリビング。パソコン画面がぼんやり光る。転職サイトに映る「IT企業・初めての管理職候補」の募集。指先は「応募する」ボタンの上で止まる。手のひらにじっとり汗。
「押す……いや、待て……安定、給料、家族、生活……」
胸がぎゅっと締まる。ここに居れば安全。でも、このままじゃ変われない――そんな焦りがざわざわ胸を突く。
「もっと挑戦したい……変わりたい、ここじゃ終われん……」
指先がカーソルに近づく。心臓が跳ねる。
目の前には、やることばかりで報われない現実、認めてくれない人たち、くだらないルール――怒りと不満が渦巻く。
「なんで、こんな会社に……」
拳を机に打ちつけ、息を荒げる。
でも、頭には温かい記憶も浮かぶ。
一緒に笑った同僚たち。
頑張って乗り越えたあの瞬間。
小さな達成感――あれは本物だった。
指先がカーソルに触れるたび、頭の奥で次の一手を計算する自分がいる。
「押す準備、戻す準備、どっちも怠るな」
押す。
戻す。
押す。
戻す。
深夜のリビング、一人。
胸の中で、安全と挑戦、愛着と不満、希望と恐怖がぶつかり合う。
手は震え、汗は冷たい。
でも心の奥では、もう次の一歩を虎視眈々と狙っている。




