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4cs 「上司」
深夜のオフィス、最後の資料を抱えて立ちすくむ。
窓の外は深い闇、フロアはL字型で、モニターの光だけがぽつぽつと机を照らす。書類の山が所々に積まれ、コーヒーカップやホワイトボードのペンが静かに佇む。椅子の軋む音すら遠くにかすむ。
「田中君、ここまでよくやった」
白髪交じりの髪をかき上げ、書類をめくる上司。肩は丸いが背筋には何十年も戦い抜いた力が残り、ページをめくる指先やため息の一つ一つに信頼感が宿る。
「課長の判断があったからです」
冷静な指摘も、経験に基づく助言も、すべて僕を守る盾だった。
「田中君の正確な情報や資料作成があればこそだよ」
胸に熱がこみ上げ、拳を握る。
「久しぶりに一杯、どうだ?」
その声に、思わず胸が高鳴った。
書類を机に置き、肩の力を抜く。
「ありがとうございます」
「お疲れさま」
背中で今日の勝利を讃える上司の姿を、ただ見つめる。
胸がじんわり熱くなる。もっと強くなりたい――何度でも挑戦したいと心から思えた。




