3cs 「琥珀の雫」
春の夕暮れ、机の上には二つの小さなグラスが並んでいた。僕の前と、隣の友だちの前。琥珀色の液体が揺れて光を反射し、まるで生きているみたいに光を跳ね返す。
「……飲んでみる?」友だちが、ほんの少し笑った。その声も表情も普段と変わらないのに、胸の奥がざわつく。
友だちはためらわずグラスを口に運んだ。少し先に進むその姿を見て、僕の手が震える。
息を吸い、香りをかぐ。甘いような苦いような、懐かしい匂いがする。
そっと唇にグラスをあて、液体を口に含む。
――苦い。
でも舌の奥に広がる温かさが、体をじわっと包む。思わず目を閉じて息を吐く。
心臓が跳ねる。僕は自分の心臓の音が、グラスを通じて友だちに届くんじゃないかと、妙に意識してしまう。
小さく呟く「……意外と、いけるかも」
友だちはくすりと笑った。僕の胸の奥はますますざわざわする。肩の力が抜けないまま、ゆっくりグラスを置く。
二つのグラスの間の空気が、妙に濃く感じられる。温もり、気配、期待、緊張――どれが何なのかはわからない。
隣の友だちも同じようにグラスを置いた。その瞬間、何かを共有したような気がして、僕は自然と微笑んだ。




