27cs 「揃いすぎている」
背の高い書棚が壁を埋め、額縁が正面から見下ろしている。
大きすぎる机。来客用のソファ。
空調の音だけが、息をしている。
窓を開ける。
金具が鳴り、外の音が流れ込む。
笑い声。拍手。音楽の切れ端。
名前を呼ぶ音と、返る返事。
背を向け、席に戻る。
椅子を引き、腰を下ろす。
書類を中央に寄せ、一枚ずつ端を当てる。
角を揃え、ずれを親指で押し戻す。
印を朱肉に沈め、紙に下ろす。
押す。浮かせる。戻す。
外で歓声が跳ね、拍手が重なる。
音楽が一段、大きくなる。
机の上は減らず、別の山が静かに育つ。
紙をめくる。
擦れる音。乾くまでの間。
引き出しを少し開け、閉める。
匂いが風に混じる。
呼び込み。笑い声。
外の気配が近づく。
手が止まる。
次の一枚を取る。
端を当てる。少し強い。
角が揃わないまま、印を押す。
わずかに、ずれる。
視線を落とし、押し直さない。
印を戻す。
時計を見る。
秒針が進む。もう一つ進む。
息を吸い、吐く。浅い。
書類をまとめ、束ねる。
拍手。割れる声。切り替わる音楽。
引き出しを開ける。
束を入れかけ、止める。
数えかけて、やめる。
朱肉の蓋を閉める音が、室内に残る。
まとめて押し込み、奥で位置を直す。
椅子を引き、立ち上がる。
机の上を一度だけ見る。
揃っている。
窓へ戻る。
身を乗り出しかけ、止まる。
窓を閉め、鍵を回す。
ドアに向かう。
ノブに手をかけ、引く。
振り返らず、外へ出る。




