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25cs 「知らない音量」
舞台袖。
暗幕の影に立つ。
床に貼られた白いテープ。
位置は知っているはずなのに、ほんの少し遠く感じる。
膝が、勝手に震える。
息が浅くなる。
胸の奥が、固まる。
誰かも、きっと同じように動いている。
腕が上がる。
大きく、迷いなく。
揺れている足を押さえつけるように。
その姿に、身体がついていく。
声が出る。
どの声かはわからない。
重なり、溶ける。
音が揃っているかどうかも、わからない。
次のフレーズ。
口が開く。
胸が少し震える。
空気が震える。
誰かの呼吸が、近すぎる距離で触れる。
指揮棒が振られる。
動きの残像だけが、揺れる身体を導く。
揺れは止まらず、音は続く、揃っているかどうかは、判断できないまま。
最後の和音。
響きが重なり、ほどける。
拍手が波のように押し寄せる。
一拍、二拍、遅れて返ってくる。
腕を下ろす。
胸の奥に、振動だけが残る。
音量は測れない。
それでも、この位置で出した、という感覚だけが残る。




