2cs 「親友」
踏切の前で、遮断機が下りる音だけがやけに大きかった。
きっかけは些細なことや。試合に出る、出えへん。俺がレギュラーで、あいつが補欠。
「仕方ないやろ」
その一言で火がついた。
ほんまは、あいつが悔しいの、わかってた。
わかってたのに、勝った側の言葉を選んでしもうた。
胸を押して、言わんでええことまで言うて、引っ込みがつかんようになった。
三日、家でスマホを何回も手に取っては、置いた。
画面を何度も開くけど、指は文字に触れられない。
布団に寝転んで、天井を見て、
「俺は悪くない」
って声に出してみた。
洗面所で歯を磨きながら、ふと名前を呼びそうになって、
泡だらけの口を閉じた。
警報が鳴る。赤いランプが点滅する。
踏切の前で、俺らは並んで立ってる。
遮断機が上がりかけた――
踏切が開く前の空気が重くて、胸が張り裂けそうだった。
そのとき、俺は息を吸った。
「……健太」
同時に、あいつも俺の名前を呼んだ。
「ごめんな」
「ごめん」
踏切が開く。
俺らは何事もなかったみたいに、歩き出した。




