17/19
17cs 「正月カルタ」
畳の上。
札が散らばる。端が少し反っている。
みかんがひとつ転がる。誰も拾わない。
膝が触れる。離れない。気にしない。
手が重なる。誰の手か確かめず、そのまま。
動かない時間が少し続く。
それでも、笑いが先に出る。
「それ、今のちゃう」
「まだや」
「早いって」
笑い声が先に響く。
「これやこの――」
早すぎる。まだ読まれていない。
札が鳴る。
畳が鳴る。
手が弾かれる音。
「ちはやぶる――」
被る。 同時。
「痛ぁっ!!」
手を振る。もう一回。少し大げさ。
「わたのはら――」
広い、広い、や……こ?
手を伸ばす。どっちだ。
笑われる。また笑う。
正解が勢いよく読まれる。
「はなのいろはうつりにけりな……わが身世にふる ながめせしまに」
一瞬、静か。
札が散らばる。
指先が追いかける。
次の声がもう飛んでいる。
「待って待って、待って」




