15cs 「ハウスマヌカン」
ガラス張りの正面。
外光は一度天井で受け、均一に落ちる。
直射はなく、時間帯による色の差も出ない。
床は硬く、濃い色で光を跳ね返さない。
靴音は短く沈む。
目地は広く、自然と歩幅が揃う。
棚は腰ほどの高さで角は丸められ、通路は二人分より少し狭い。
立ち止まると必ず背後に気配が残る。
商品は少ない。
色は抑えめ。
素材だけが照明に浮かぶ。
値札は小さく、裏返しやすい紙質。
試着室は奥。扉は完全には閉まらない。
中の動きは外から気配で伝わる。
BGMは一定。会話の隙間に入り込み、耳に残る。
スタッフの立ち位置は決まっている。
入口から三歩、棚から半歩。
声をかける距離も計算済み。
「こちらもございます」
棚の前で止まる。
一つ手に取る。
軽い。思ったより軽い。
指で縁をなぞり、指紋をすぐに拭う。
鏡に映る肩から上だけの自分。
頷いたような、そうでもないような微動。
表情は読めない。
別のものを差し出され、指が触れるがすぐ離す。
「今、選ばれる方が多くて」
呼吸が少し速い。
棚に戻す。
音を立てず、位置も最初と同じ。
また、最初の一つに戻る。
鏡を見る。視線を逸らす。
「サイズでしたら――」
言葉が途中で止まる。止めたのは、どちらか。
値札を裏返す。見なかったことにしてすぐ戻す。
一歩引き、半歩詰める。
息を吸う。
それに合わせて誰かも吸う。
まだ決まっていない。
でも、離れてもいない。
手の重さだけが確かだ。




