14cs 「改札」
プシュー。
扉が開く。
それを合図に、人の波があふれだす。
押されてはいない。
でも、止まる余裕はない。
足は床をなぞるように前へ出る。
歩いているというより、運ばれている。
空気が重い。
人の熱で、温度が均一に上がっている。
音が多すぎる。
案内放送、警告音、足音。
意味は削られ、急げ、だけが残る。
肩と肩の距離は紙一枚。
当たらない角度を、体が勝手に選ぶ。
肘は畳まれ、
カバンは揺れない位置に固定される。
誰も目を合わせない。
でも、全員が周囲を計算している。
速さ、幅、癖。
一瞬で読み、合わせ、外す。
足音が揃う。
ばらばらなのに、同じリズム。
視線は前の背中。
その背中が進めば進み、
止まれば、止まれないまま減速する。
改札が見える。
光る部分だけが、等間隔に並ぶ。
そこへ吸い込まれるように、列が細くなる。
ピッ。 ピッ。 ピッ。止まらない。
カードを持つ手は、もう考えていない。
距離、角度、速さ、失敗しない前提で足が出る。
ピンポンッ。
腰の前で、扉が閉まる。
柔らかいのに、進めない。
半歩、体が残る。
背中に人の気配、肩がわずかにゆれる。
「……あっ……」




