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13cs 「着信」
昼休憩。
弁当のふたを閉じ、輪ゴムを外して端に置く。
その音に重なるように、着信。
会社支給のスマホが机で震える。
画面は伏せたまま。
箸をそろえ直す。
少し曲がった箸先を指で押して真っ直ぐにする。
「今じゃない」
喉を動かしただけ、誰にも届かない。
着信音が止まる。すぐに、また鳴る。
コップを持ち、口をつける前に一度置く。
息を整える。
スマホとの距離を測る。
手を伸ばせば届く、伸ばさなければ、届かない。
「……今じゃない」
今度は、はっきり音になる。
それでも、手は動かない。
椅子の脚を、かかとで押す。
ぎし、と鳴る。
着信は続いている。
止まらない。
弁当の端を、箸で一度突く。
意味はない。
呼吸を整える。
吸って、吐く。
その間も、
スマホは鳴っている。
「出る」
「出ない」
「出る」
「出ない」
指が、先に動いた。
「もしもし、田中です」




