『クラスメイトの名前くらい覚えろ』
──授業は体力テストだった。始めは屋内で行われるものが多く、握力測定や上体起こし、長座体前屈など、ゆるいものから始まっていった。
「──よっし、去年より伸びた! うん? どうしたキヨ?」
「いや……遊佐っちって二重人格なんかなと思って……」
そんなわけないだろう、とパートナーである清水を一蹴する柾。
続いて交代すると、清水は泣きながら上体起こしを始めた。
(うっわ、なんだこいつ。えっ、なんで泣いてんの。こっわぁ……)
親友が号泣しながら腹筋を使って顔面を近寄せるのを繰り返すという新手の拷問に、柾はドン引きしていた!
「お前に何があったんだ……」
「こっちのセリフだよッ!?」
計測後に詮索すると清水は逆上した。柾は危ない奴だからしばらく放っておこうと思った。
「次は反復横跳びか……」
幸いここから個人競技だ。清水と顔を合わす必要はない。
今日の俺はツイてるかもしれない。柾は心の中でガッツポーズをした。
「……ふう。まさか去年より一回少ないとはな」
全力でこなす遊佐の目標は去年の自分に勝つ、だ。ここまで順当に記録を塗り替えていたものの、一つ逃してしまったことが心残りになっていた。
「やっぱすげぇな、遊佐は……」
「まだまだだよ」
既に満身創痍な名も無きクラスメイトを尻目に柾は次の項目に目を通した。




