『ツレウンは許されない』
「くそっ、どうやったら合法的に体育をサボれるか考える時間がなかった……」
柾は午後一発目から訪れる本日の最難関に頭を抱えていた。
「おー、遊佐っち。午後体育だし早く体育館行こーぜ!」
「あ、ああキヨ。先に行ってていいぞ」
柾の親友であるところの清水は既に着替えを済ませており、その場で駆け足して待ち遠しそうに柾の着替える事を待っていた。
「水臭いこと言うなよ、オレは親友を待ってるぜ!」
鼻下をこすりながら「へへへ」と笑う姿は卒業文集が出た時にズッ友でいたいランキング第一位を掻っ攫いそうなほど爽やかだ。
しかし今の柾の中では余計な世話焼きランキングに絶対に許さないランキング、ぶん殴りたいランキングを総なめして映えなき一位に輝いている。
このままでは体育に遅刻してしまう。柾は苦肉の策に出た。
「すまんキヨ、オレはトイレに行くんだ」
「おっ、オレも付き合うよ!」
ニコニコと人懐っこい笑みで自分を追う清水に柾は、
「──ウンコだ、察しろ!!」
一喝。周りは言葉を聞き取れずなんだなんだとどよめくが、清水は涙目になりながらドン引きしていた。
「お、おう。なんか今日のお前、怖ぇよ……」
クラスメイトの追従を勢い任せに断ち切った柾の完璧なプラン。それは──。
「ふふふ。我ながら完璧だ。賢すぎる。天才なのではないだろうか」
自分が恐ろしい……。そうこぼす柾がいる場所。それは──トイレの個室!
万人、あらゆる人が隔絶された空間を得ることができる至高の領域。
人々は日夜そこで気張り、踏ん張り、努力する。そんな先人たちの誇りを踏み躙るように、柾は便器など見向きもせずに体操服へと袖を通した。
「これで体育に行けるぞ!」
柾は明日へと繋がる扉を開いた。




