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プロローグ
今でも、ふと胸によみがえる言葉がある。
――降りしきる雪の中。
ある人が、私にこんな話をしてくれた。
「あなたの目の前には、“二つ”の大切なモノがあります。
それは、どちらも決して手放したくない、心から大切に思うもの。
けれど、人はその“二つ”を同時には手にできない。
どちらか一方を選んだ瞬間、もう一方は永遠に失ってしまう。
それでも選ばなければならない時がある。
そして人は、選んだその道をいつか必ず、
『なぜ、もう一つの方を選ばなかったのだろう』と後悔するのです――」
……ねえ。
あの時、私が選んだ道は――
本当に、正しかったのかな?