1. 37歳で診断されても手遅れじゃないですか?
※この作品には「理解のある彼くん」は登場しません。
※家庭での葛藤や発達障害の診断など、センシティブなテーマを扱っています。
この物語は、アラフォーで引きこもり、ようやく「発達障害」の診断を受けた主人公が、自助グループとの出会いを通じて、少しずつ変わっていく物語です。
「診断が出ました、間違いなくあなたは発達障害ですね」
「……え?」
あかりは耳を疑った。検査を受けたのはオンラインゲームの友人の勧めだった。そんなはずないと思いつつ他にすることもないので結構長い間病院に通った。
それがまさか本当に発達障害だなんて夢にも思わなかった。
検査の書類を持った中年の医師は落ち着いた声で説明した。
「数値に大きなばらつきがあります、今までご苦労されたでしょう」
「……」
苦労だったのだろうか?
あかりはずっとみんなにできることができなかった。ずっと自分の努力不足だと自分を責めてきた。家族にも「なんで普通のことが当たり前にできないの、みっともない」と責められた。
本当は違ったのだろうか? 生まれつきの体質で自分が怠けているせいではなかったのか? 生まれつきの障害なら仕方なかったのだろうか?
今まで辛かったのは自分のせいではなかったのか? いつも母に「なんであたり前のことができないの?」と冷たい眼差しを向けられるのは当然のことではなかったのか?
「……うっ、ううっ」
「八木さん、大丈夫ですか?」
あかりは俯いてぼろぼろと涙をこぼした。
「先生……私が普通にできないのは、私のせいじゃないんですか?」
「ええ、そうですよ。生まれつきの脳の特性です。八木さんは自分を責めなくていいんです」
「でも……」
あかりの視界の端に窓の横に貼られたカレンダーがよぎった。三月になったばかりだった。
「それならどうしてもっと早く見つからなかったんだろう、もっと早く見つかってれば私だってもっと普通に、今更……私もう手遅れなのに!」
あかりは一週間前、三十七歳になったばかりだった。
発達障害と診断されること、それを受け止めること――簡単なことではありません。特に年齢を重ねてからの診断は絶望も深くなりがちです。
この物語では「もう手遅れなのか?」から、少しずつ再生していく過程を丁寧に描いていきたいと思っています。
次回は「他の発達障害の人との出会い」。
よかったら、また読みにきてください。
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