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「プロローグ~馬鹿とカワウと診断幽霊を添えて~」

ただコンテストに出すためだけに書いた、奴です

たとえそれが暑い夏の日だろうと、凍える冬の日だろうと、桜の木がピンク色の涙を零す暖かい日であろうと、紅葉が道路を彩る涼しい秋の日だったとしてもそうなることはまるで神がそう決めていたかのように、奇跡的に運命的にこったことのように思えて、しかし実際は大昔から計画されていたことのように必然的に起きた。


 そんな……不思議な出来事であった。


 私立源中学校の放課後、3階にある図書館内、すかしっぺでもしたらその音が図書館中を飛び回ることができる。


 そのくらいの音のスペースがある静寂を俺は謳歌していた。


 そんな中俺の静寂という名の衣服を切り裂き話しかけてくる奴が来た。


 その声は陽気で戦車の砲弾くらいのデカさがありながらその重さは気持ちペットボトルくらいしかなかった。

 そんな軽率で俺にとってはとても邪魔なものが俺に向けて放たれた。


 声の砲手はたっくーというあだ名を持った男だった。


 正直俺は彼が本名で呼ばれているのを見たことがなく、生徒はおろか先生も、もしかしたら親にすらあだ名で呼ばれてんじゃねーのか……そう思わせてくるぐらい彼の本名を聞いたことがなかった。


 でも正直どうでもよかった。


 どうせ中学校を卒業するまで俺が一度も口を利かないような人種の人間だったし、彼のような人間はすぐに死ぬだろうと自分は勝手に思っている、だから俺と奴どちらかが死ぬまでお互い言葉を交わしあうことはないと思っていた。


 そう思っていたからこそとても驚き、そして同時にどっか行けと思った。


 奴はそんな俺の気も知らずにうっきうきでしゃべり始めやがった。

「聞いたか!……例の噂!」


「…………」


 全く、驚くほど興味の湧かない話を奴がし始めたと脳が認識すると俺は無視をした。

 した筈だ……。

 絶対にした。


 絶対、絶対に無視した筈なのに、なのに奴は話を続けやがった。


 俺は心の中で死ねと言った。


「頭がいいやつにしか取り憑かない幽霊が22時丁度そこの道路に出るんだってよ!」


 こいつを黙らせる方法は何かないかと考えた結果、こいつをぶち殺す方法と、自分がつまらないやつだと思わせる方法の2つが思いついた。


 俺の経験上こういう奴はつまらないやつが大嫌いで、そういう奴がいるとそいつを徹底的に自分のいるコミュニティから追い出そうとする。


 ぶち殺すのもいいがそうなるとかなりめんどくさいだろうし15歳でくさい飯デビューは嫌だった。


 なので俺は後者を実行しようと、核シェルターのように頑強に閉じた口をすごいめんどくさいプロセスを実行しながら開いた。

「もしもそれが本当だったとしても5教科平均50点以下の俺には関係のない話だと思う。」


 自分の放った方法という名の槍はどうやら奴の性感帯にクリーンヒットしたようで、奴はその言葉を待っていましたと言わんばかりに鼻息を荒くして話を進めやがった。


「それがさそれがさ!面白いのがそこなんだよ!どうやらその幽霊IQテスト的な使い方ができるらしくって、そいつに取り憑かれたら頭良い、憑かれなかったら悪い的な」


 横で盗み聞きをしていたのか、いかつい金髪の女が興奮気味に「それッ面白そぉジャン!!!!!」と言った。


 ビックリマークが5つもつくくらいのバカでかい声のせいで外の木々に止まっていた小鳥たちが一斉に飛び立っていった。


 静かに読書(といっても漫画だが)をしていたというのにいきなり、微塵も興味の湧かないクソみたいな噂話をされていた自分にとって、唯一の楽しみであった外の木々に止まっているかわいい小鳥さんがどっか星の彼方に飛んで行ったのはさておき、自分は彼女の名前を知らなかったので 100均の音量調節ができないバカスピーカー、略してピーカーと命名した。


 かわいい小鳥さんをアンドロメダ星雲に吹っ飛ばすほどのバカデカい声を、彼女はなんと維持したまま話を進めやがった。


 再び、心の中で死ねと言った。


 女は話す。


 音量はそのままで。(大事なことなので2回言ったよ!)

「だったら今日みんなでそのユーレイに会いに行こうヨ!」

 その みんな に俺が含まれていないことを願っているとたっくーが再び鼻息を荒くして言った。

「それ……めっちゃいいジャン!」


「お前も来るよな」


 視線がこちらに向けられていることに気が付くころには、もう自分も行くことが決定されているかのような空気になっていた。


 そうしてなんか自分も行くことになってしまい、時計は作戦実行時刻22時を指していた。


 俺は行かなかった。


 なぜ行かなかったのかと聞かれるとちゃんとした回答が返せないようなとても不純な動機で休んだのだが別にいいだろう。


 だってあいつ等自体が不純そのものみたいな見た目をしていたし、誰だってあんな奴らと真夜中の心霊スポットでドキドキ肝試しだなんて…………考えただけでひや汗が止まらない。


 下手な心霊スポットに行くよりも、ロウリュとか言う気取ったやつが好きそうなサウナに行くよりもよっぽど汗が噴き出る。


 穴という穴から滝のように汗が飛び出る。


 まぁ行かなくて良かったと今では思っている。


 登校中に盗み聞いた話によると二人は死んでしまったらしい。


 死因は心臓の欠損だった。


 というか心臓自体がなくなっていたらしい。


 それを聞いたときに俺はそのことに関して理解できなかった。


 だって普通に殺すならまだしも、そんな面倒くさい殺し方は不合理だし何よりもめんどくさい。


 めんどくさい……これに限る。


 心臓をくりぬいて人間を殺すなんて、俺が人生で聞いてきた人の殺し方の中でもTOP50に入るくらいにはめんどくさそうな殺し方だ。


 さっきからめんどくさいめんどくさいとしつこくて申し訳ないが、俺が何故ここまでめんどくさいことをそんなに気にするのかというにはちゃんとした答えがある。


 だって人を殺すのって生きている中でTOP10に入るくらいめんどくさいことじゃないか。


 それだけめんどくさいことをしたいと思わせる理由が作れなければそもそも人殺しは成立しない。


 どんな人殺しも突き詰めれば人を殺した理由が出てくるし、そもそも殺す理由がないのに人を殺す奴なんてフィクションの世界にも滅多にいない。


 つまり人殺しをするには理由がいるんだ。


 それがその人の面倒くささを超える理由になっていれば何でもいい。


 殺さないと世界大戦が勃発するから殺すでもいいし、不倫をしたから殺すでも、顔が好みじゃないから殺すでも、理由はなんだっていい。


 ただ俺にはそれが理解できない。


 何故なら俺はめんどくさがり屋だからだ。


 人を殺す理由があっても、その理由が俺の中にある高すぎるめんどくささのハードルを越えられない。


 何をするにもめんどくさく感じてしまう。


 電車に乗るのも、コンビニに水を買いに行くのも、水道に水を飲みに行くのも、椅子から立つのも、ベッドから起き上がるのも、生きることも何もかもがめんどくさかった。


 でも実はそんな俺でも人を殺す理由が自分のめんどくささを上回ったことが何回もある。


 自分を殺そうと思った時だ。


 俺は人殺しは理解できないが自分を殺す人殺しなら理解できる。


 だって生きることは究極にめんどくさいことだからだ。


 めんどくさいことが大嫌いな俺は生きるのがめんどくさいという使い古された理由で死のうと思った。


 でも死ねなかった。


 みんなが死なせてくれない。


 みんな自分勝手に俺の死を悲しむ。


 親に今日死ぬと伝えるたんびにベットに縛り付けられ「死なないで」と懇願された。


 皆イカれている。


 あいつらは死にたくないから生きているだけのくせに生きることを楽しみたいと思っている。


 だから奴らは楽しく生きるためにもともとなかったものを作りそれを自分の楽しみとして、生きる理由として必死に手放すまいとする。


 だから俺はそんな奴らを真似て死んじゃいけない理由を作って生きることにした。


 俺の人100倍強いめんどくさがりを超える、生きる理由を……


 話が盛大にそれてしまったが結局言いたかったことは、なぜ犯人がそんなめんどくさい殺し方をするのかが俺には理解できないということだ。


 でも……でももしそんなめんどくさい殺し方をする奴がいるとしたら、例の幽霊かジグソウくらいなものだろうと思った。


 まぁどちらかといえばジグソウだろうが……あのピーカー野郎どもは俺の貴重な時間と脳細胞を無駄にした。


 立派な命への冒涜だと言えるだろう。


 ジグソウさんも「あんなデカい声を出す奴を野放しにしていたら、どんな大爆発を起こすか知れたもんじゃない」と思ったんだろう。


 しかしそう考えるとたっくーは何だろう?


 数合わせとかだろうか…


 まぁ何であれそんな風に考えるとジグソウがやった確率の方が高いのだが……


 もしも……もしも幽霊の仕業だったら……そう考えるとなんだか申し訳なかった。


 何故なら俺は彼らに心の中で怨念をたっぷりと込めて死ねと言ってしまったからだ。


 なんでそれが彼らが死ぬ理由になるのかは稲○淳二のみぞ知るだが……ともかくなんか俺の怨念を吸い取ってそれをパワーにし、その怨念パワーで幽霊キックでもしてそれで心臓が飛んで行ったのなら、なんだかかわいそうに思えてきた。


 正直そんなことどうでもいいと思っていたが、俺の中の罪悪感が思考を邪魔してテストで5教科平均40点以下を取ってしまい、気がつけばこのままだと入れる高校がなくなってしまうところまで来ていた。


 そんなこんなで二人の死因を突き止める決心を俺はした。


 そうなると重大な大問題に激突した!


 自分で調べるのが面倒くさい。


 本来ならば俺はそんなことに時間を費やしたくなくて……


 今回は俺の高校進学が掛かっているから調べようと思っているだけだし。


 どうしたもんかなぁ……


 そんなことを思いながら登校をしていると横断歩道のど真ん中にいる車椅子に座った大学生くらいの女性が目に入った。


 彼女はやけに赤と黄色の比率が多いチラシを配っており、女性からはとてつもないオーラが放たれていた。


 恐る恐る近かづくと目が一か所に吸い寄せられた!


 女性の胸が核爆弾くらいの威力を持ったとんでもないデカさをしていた。


 おいおい……超大型おっぱいかよと思っているとその超大型の横にいたウォールマリアが話しかけてきた。


 最初、男かと思って全く目を向けていなかったが(真っ先に超大型おっぱいに目が行ったことも影響しているが)声を聴いて女だとゆうことに気が付いた。


 ウォールマリアはその口を開くとその奥からとてつもなく小さな声が飛び出した。

「ぁ……ゅ………………ぇ」


「???????????」


 俺が聞き取れないでいると超大型がウォールマリアをどかして後ろに隠すようにして話し始めた。

「今キャンペーンを実施していて初回限定で無料の事件解決行っているんですよぉ!」


 俺が聞き取れたウォールマリアの単語が1つも出てきていないことを不審に思っていると超大型が続けて話した。

「いまならわたしたちのこじんてきなれんらくさきもかいてありますよ!」

 

 もらったチラシに書いてある番号にさっさく電話をかけると、スピーカーの奥からけだるげな声が聞こえてきた。


 さっき話した二人のどちらの声とも当てはまらない声だった。

「おでぇんわぁあぁぁぁぁぁめぇぇぇぇぇぇぇぇ」

 

 突然、モーツァルト「ピアノ協奏曲第21番 ハ長調 k 467 第二楽章」が流れ始めると14秒ほどで曲が切れ、そしてまた別の陽気な声が飛び出した。

 「お電話!変わりました!雑用でしょうか!迷惑電話でしょうが!うちは水道の浄化は結構です!」


 ピーカーほどではないものの、それでもデカい声ではあった。


 どれぐらいデカいかと言うと車がドリフトしたときみたいな音が時々聞こえてくるくらいにはデカかった。


 スピーカーから響くデカい声に少しビビッて気持ち小さめな声で「依頼なのですが……」と答えると3秒ほどの間をあけて返事が返ってきた。

「うそつけやぁ!!うちに電話をかけようと思う奴はなぁ!悪徳業者かぁ電話しようと思った時にはもう死んでるかのどちらかなんだよぉ!」


 ここからは草を食ってのうのうと生きている牛よりもコミュニュケーションの取りにくい相手だったが、俺はまともに話を聞かない奴には慣れていたのでこういうときなんて言えばいいかを知っていた。


「もしもそれが本当だったとしても5教科平均40点以下の俺には関係のない話だと思う。」


「…………」


「…………」

 

 気まずい沈黙


「お前……何だろう……バカだろ」


「違う」


「違くないだろ」

 食い気味に奴は言う。


「まぁおれが馬鹿か馬鹿じゃないかは置いといて、セールスマンがこんなことを急に言い出すと思うか?」


 電波が俺の声を奴のところへ運び出すと、奴は回答した。

「どうだろう…………セールスマンと会ったことがないからわからん」


 …………え?は?


「いやっ、さっき悪徳業者だとかなんとか言ってたじゃないか!」


「悪徳業者とセールスマンは違うだろ?」


 あぁ、今わかった。


 こいつ、めんどくさい奴だ。

 

 こいつと話しているとなんだか頭が痛くなる。


 俺とこいつとではそもそも、脳みその作りが違うんだ。


 話が通じないどころの話ではない。

 

 こんな奴とまともな会話はできない。


「ほかの人と変わってくれますか?」


「何故だ」


「あんたと俺じゃ話が成立しないと判断したからだ」


「そうか」

 奴がそう言うと、再びモーツァルト「ピアノ協奏曲第21番 ハ長調 k 467 第二楽章」が流れ始め、今度は5秒ほどで曲が止まると先ほどまで鳴り響いていたドリフト音は消えており、代わりに女の声が響いた。


「お電話変わりました。ご依頼ですね」

 女の声を聞くと俺の中に不快感が注がれた。


 その声は人間が本能的に嫌がるような音をしていて、例えるならば、黒板を爪で思いっきり引っ搔いてる時みたいな……


 そんな、なんだか不安になる声だった。


 女の声を聴いているとなんだか寒気がしてきた。


 左を見ると教室の窓が開いていることに気が付いた。


 スマホを耳を当てながら窓を閉めようと席を立つと、スピーカーから「でしたら」と聞こえた。

「でしたら21時、妙亭競技場工事現場のある通り、鈴谷目高速道路の下でお会いしましょう」


 そう聞こえると電話が切れた。


 俺は不安を抱えつつも事件の真相を暴く第一歩を踏み出だした。


 そうして時計は待ち合わせ時刻21時を指していた。


 俺は遅刻した。


ここまで読んでくださりありがとうございます!

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