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第51話 試作品

 ユキ達は荷車に浮力をかけて、荷物を軽くする方針を立てた。


 ユキは、ひとまずプロトタイプの作成に着手することにする。


 なお、方針が決まると、アイシャは研究開発室を離れた。


「すまない、私も一緒に開発に取り組みたいが、私がここでできることは限られている。きっと私には私にしかできないことがあるはずだ」


 アイシャはそのように言い残し、名残惜しそうにしつつも研究開発室を出ていった。


 それからしばらくして、


「こんな感じでいいかなー?」


 ソレハとオーエスがユキに声を掛ける。


「おぉー、すごい! いい感じですよ」


 ユキはソレハとオーエスの工作物を見て、小さく拍手する。


 ソレハとオーエスがこしらえてきたのは、簡易荷車である。


 横1メートル、縦1.5メートル程度の荷台に、四輪のタイヤ。

 それからそれを引いて運ぶための取っ手がついている。


「ソレハさん、オーエスさん、ありがとうございます! それじゃあ、この荷車を使って、いろいろ試してみますね。ここから先は時間がかかると思うので、少し待っていてくださいね」


「わかった。それじゃあ、ソレハ、我々も我々にしかできないことをするとしよう」


「そうだねー!」


(お……?)


 オーエスとソレハがそんなことを言うので、ユキはなんだろう? と思う。


 と……、


「…………オーエス、ところで、我々にしかできないことなんてあったっけー?」


「ちょっ! ソレハ……! わかってないで、返事したのかよ!」


「あ、うん、ノリでしちゃったー」


「全く……」


 オーエスは少し呆れたようにする。


「それで、オーエス、我々にしかできないことってなにー?」


「ソレハ、それはな…………これから考えよ?」


「なんだー、オーエスも実は思いついてないんじゃん」


「あぁ、そうさ! アイシャ様の真似して言っちゃっただけさ!」


 オーエスはなぜか誇らしげだ。


 そんな寸劇を繰り広げつつ、オーエスとソレハも研究室を離れる。


(…………多分、俺が集中できるように離れてくれたんだろうな)


 などと、ユキは思いつつ、


(…………さてさて)


 魔道具の作成に着手することにする。


(……コアとなる属性は〝風〟だよな)


 垂直方向への力。

 それを破壊力を持たせずに、揚力を生み出すことができる属性となると、やはり風属性であった。


(そもそも現時点で、俺の魔道具でできることは基本的には魔力弾の出力だけ。だから、今回の方法も魔力弾の出力だけで出来そうなことに絞って案出しした。物凄くシンプルに考えるなら、荷台の下に魔道具を設置して、下方向に風の魔弾を撃ち続けるというものだ)


「まぁ、あれこれ考えていても進まない。まずはやってみるか」


 ユキはそう呟くと、研究室備品である魔法補助具を拝借する。


(さてと……)


 そうして、ユキは魔法補助具内の魔法論理(マジック・ロジック)の改ざんに着手する。


(まずはスモールスタート。シンプルに風を出力する魔道具を作ってみよう)


 ユキは魔道具の状態を読み取る。


////////////////////////////////////////////


// 弾の初期化処理

time = 0 // 射出時間

interval = 0 // 射出間隔

angle = device.angle // 射出角度

position = device.position //射出位置

size = 1.5 // 大きさ

power = 0.7 // 威力

attribute = NONE // 属性=無

speed = 0 // 速度

acceleration = 0 // 加速度


////////////////////////////////////////////


(うんうん、よくある無属性の単発弾を出力する魔道具だ。まずは風属性を設定してみよう)


【メイン属性=風】【サブ属性=圧力】に設定する。


 弾の初期化処理で、【弾の初期位置=(デバイス)の先端位置】にはすでに設定してあった。 

 なので、弾の更新処理にて、【弾の位置=杖の先端位置】に設定する。

 こうすれば、ずっと杖の先端位置に固定できるというわけだ。


(よし、これで、これに魔石をセットすれば、ひとまずは基本となる風属性を出力し続ける魔道具はできたことになる。さてと……)


 ユキは荷台に50キロ程度の荷物を置く。


 まだ、魔道具はセットしていない。


 そして、おもむろに引いてみる。

 魔道具をセットしていない状態での重さを確認するためだ。


(うん……、まぁ、やっぱり、それなりに重さは感じるかな)


 50キロ程度であれば、余裕で引くことができるが、手に重みを感じる程度の荷重はあった。


(実験としてはひとまずこれでOK)


 次に、準備した魔道具を荷台にセットする。


 下方向への送風が始まる。


「よし……」


(さて……やるか……)


 ユキは一人きりの研究室で、こっそりドキドキしながら、荷車を引いてみる。

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