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第49話 アイデア出し

 ユキ、アイシャ、オーエス、ソレハの四人は食糧物資の運搬問題についてアイデア出しをすることにした。


「はいはいはいーー!」


 アイデア出しを始めるや否やソレハが挙手する。


「お、ソレハ、なんだい?」


 アイシャが尋ねる。


「魔物を殲滅すればいいんじゃないでしょうか!」


(うおっ、いきなりドラスティックな意見が……)


「そ、ソレハ……それは流石に……」


 ソレハの過激な意見に、オーエスはやや冷ややかな態度を示す。


 しかし、


「確かにそれは根本的な解決策になるから、まず最初に考えるべきことかもしれないな」


「アイシャさまー!」「アイシャ様!?」


 アイシャは意外にも真剣にその意見を受け入れたため、ソレハはにっこり、オーエスはびっくりである。


(確かに、そもそもの問題点を排除するという意味では、まずは検討するべきことか……)


「ただ、ソレハ、なかなか難しい問題でもあると思う」


 とはいえ、アイシャも冷静であった。


「デス・リザードを始めとする魔物達、どれ程生息しているのかは具体的にはわからないが、相当数が生息していることだろう。ゴーディレからウォタードまでの全域で、彼らを駆除するのは極めて大変だと思われる」


「……はい」


「駆除することの大変さ以外に懸念点がある人はいるだろうか?」


(…………生物学的なものはあまり得意ではないけれど……)


「生態系が破壊される可能性があるかもしれません」


「ぬ? ……どういうことー?」


 ユキの意見に対して、ソレハが不思議そうに尋ねる。


「デス・リザードがいるおかげで、生態系のバランスが取られている可能性があるということです。例えばですが、デス・リザードが小動物を捕食していたとします。そのデス・リザードが急に数が減少したら、逆にその小動物が大量発生してしまう……。その小動物が大量発生したことでまた別の問題が連鎖的に発生してしまうといったケースです」


「おぉー……なるほどー……そんなことまで考えてなかったよー」


「生態系というのは絶妙なバランスで成り立っているらしく……やるとしても少しずつ慎重にすべきかと思われます」


「確かにそうだな……。ユキは思慮深いな……」 


 アイシャも感心する。


(前世ではあるあるの知識をひけらかして褒められるのはちょっと恥ずかしいな……。こっちではあまり知られていないのだろうか……)


「魔物を殲滅についてはなかなか実行が難しそうだな……」


「……はいー」


 ソレハは少し残念そうだが、むやみに食い下がりもしなかった。


「あの、単純に馬車に護衛をつけるのはどうでしょうか?」


 ユキが素朴な質問をしてみる。


(アイシャ様ほど強い人は難しいとしてもそこそこの人であれば付けられないだろうか……)


「それも良き案であるな」


 アイシャは頷く。

 だが、オーエスが意見する。


「ユキくん、デス・リザードの群れに安定して対応できる人材となると、なかなかそんなにはいないんじゃないかな?」


(……! そうなのか……)


「……そうだな」


 アイシャは少し気まずそうにする。


 気まずそうなアイシャに代わり、オーエスが更に補足する。


「ユキくん、この件の問題点の一つとして、飢餓問題は上流階級の人々にはあまり無縁な問題だということにも目を向けなくちゃいけないと思うんだ」


(……! ……なるほど。要するに、飢餓問題はあるにはあるが、上流階級の人たちに食糧が行き渡らない程の問題にはなっていないということか。そして、護衛の能力のある者は、街の警護などの任が優先されるということだな……)


「わかりました。護衛案については、一旦、除外します」


「すまない、ユキ……」


 アイシャは申し訳なさそうにする。


(うーむ……、となると……なんだろうな。鉄道や地下道は流石にこの短期間でどうにかなることじゃないだろうしな……)


 と、考えていると、今度はオーエスが意見を出す。


「馬車をガチガチの装甲にするのはどうかな?」


「確かにそれも一つ、考えられるな。具体的な案も考えてみようか」


 アイシャはポジティブにとらえ、具体案を求める。


 が、


「オーエス、装甲を強くするには、鉱物の素材が大量に必要になるんじゃないのー? それもなかなか難しいと思うし、むしろ馬車が重くなっちゃって、逆効果じゃんー」


 ソレハから厳しいつっこみが入る。


「そこは受動的装甲じゃなくて、能動的な装甲を使うんだよ」


「能動的装甲ー? なにそれー?」


「魔道具さ」


(……!)


「つまり魔道具から常に攻撃魔法を出力し続けることで、馬車を防衛するってわけ」


「な、なるほどー……」


 オーエスの意見にソレハが相槌を打つ。


「……ユキはどう思う?」


 アイシャが尋ねる。


「え……、うーん、可能性としてはゼロではないです。ただ、いくつか大きな問題があると思います。流通を支えるだけの量を生産するには、それなりの量の魔石と魔法補助具が必要だと思います」


「うむ、それなら心配無用だ」


「へ……?」


「ユキが来た頃から、これはいつか大量に必要になると思ってな。魔石の採掘強化と魔法補助具のストック強化を進めていたからな! 三桁くらいならすぐに準備できるだろう!」


(そ、そんな前から……)


「あ、ありがとうございます……。た、ただですね……他にも問題が……。デス・リザードを撃退するほどの強い攻撃魔法を出力し続けるというのは、かなりのエネルギーが必要と思われます。それに、恐らく無差別攻撃になってしまい、扱いが難しく、なかなか難しいかもしれません」


「…………うむ、確かにそうだな……」


 四人はしばし沈黙してしまう。


(…………申し訳ないけど、攻撃魔法を出力し続けるのは、体感的にはやっぱり厳しいと思うなぁ……。ただ、馬車に魔道具を使うか……。うーん……)


「……!」


(…………あれなら、ひょっとしたらいけるかな……)


 ユキは一つの案を思いついた。



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