表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

39/51

第39話 ピンチ

「ハハ、オモロ……ムシミタイダナ」


 ゴブリンは嘲るように笑いながらも、その手のひらに魔力を込め、その力をスパに向けて解き放たんとする。


 と……


「〝瞬く炎よ―― (はし)れ 瞬炎(フラッシュ・フレイム)〟」


「ゴ……? グワッ!?」


 閃光のような炎の筋がスパとゴブリンの間を駆け、ゴブリンは炎を受け、一歩、後退する。


「〝力水よ―― 押し流せ 搬水流(リフト・スプラッシュ)〟」


「お? おぉおおおお……うわぁあああ」


 更に、オーエスが発生させた水流により、スパが流されていく。


 ルビィとオーエスにより、荒療治ではあるが、ひとまずゴブリンとスパを引きはがすことに成功した。


「まさかルビィ嬢がこんな正義感があるとは思わなかったよ」


「別に……私は私の矜持(きょうじ)を守りたいだけ」


「ルビィ嬢、世間ではそれを正義感と言うのだよ」


「……」


 オーエスの言葉にルビィは返答の言葉に詰まる。


 だが、やがて……、


「フリー、あなた回復魔法が使えたわよね?」


「あ、あぁ……たしなむ程度だが……」


「十分よ……倒れている二人を頼むわ」


「……わかった」


 そうして、オーエスは倒れている男子生徒と女子生徒の元へと向かい、安全なところへ移動させ始める。


 と……、


「〝ウガツトゲ〟ェ」


「っ……!?」


 激しい(とげ)の嵐がルビィを襲う。


「っ……〝炎壁(フレイム・ウォール)〟!」


 ルビィはなんとか炎の壁を発生させて、棘を防ぐ。


「ホォ……ヤルナ……コムスメ」


「っ……」


 ゴブリンが不敵な笑みを浮かべる。


 ……


 ルビィとゴブリンの激しい戦いは続いていた。


 ルビィはすごかった。


 とても初めての実戦演習とは思えない程に、強力な炎魔法を連発し、ゴブリンを食い止めていた。


 ルビィがすごいのは確かであった。


 だが、それ以上に……、


「〝マタタクタマ〟ァ」


 ゴブリンが無数の石球をまき散らす。


「くっ……!」


 ルビィは歯を食いしばりながらも、なんとかそれに対処している。


 正直、その光景には、ユキも驚きを隠せなかった。


(なんなんだ、このゴブリン……俺の知ってるゴブリンと違う……ゴブリンってこんなにバキバキに魔法使ってくる生物なのか!?)


 ルビィは善戦しながらも、徐々にゴブリンに押されてきているのは明らかであった。


 となれば……、


実行(エグゼ)!」


 ユキの魔道具から放たれた氷の礫により、ゴブリンが放っていた魔法マタタクタマの石球をいくつかは掻き消せたであろう。


「ゴ……?」


「……リバイスくん?」


「自分も微力ながら参戦します」


「……」


 ルビィはユキの参戦宣言に、歯がゆそうに唇を噛みしめる。

 ユキに助けに入られるのは悔しいが、現状について彼女も正しく判断できており、拒む程の説得力を持ち合わせいなかった。


 そこからしばらく一進一退の攻防が続く。


 ユキが参戦したことで、多少は状況がましになったかもしれないが、ユキが自認している通り、微力はあくまで微力であった。

 戦況を覆すほどの勢いはない。


 そんな中でもユキは必死にこの状況を打開するための思考を巡らせていた。


(……俺のスプリンクラー戦闘版(バトル・エディション)じゃ、普通に使ってたら、どう考えても威力不足……超至近距離でぶち込むくらいじゃないと大きなダメージにはならない……なんとか奴に近づくことはできないだろうか……なんとか……)


 と……、


「〝ウガツトゲ〟ェ」


「っ……!」


 ゴブリンはその間にも攻撃の手を緩めない。

 ゴブリンの狙いは先ほどから徹底してルビィ。どうやらユキのことは邪魔な羽虫程度にしか思っていないようだ。

 そして、再び、激しい(とげ)の嵐がルビィを襲う。


「っ……〝炎壁(フレイム・ウォール)〟」


 ルビィも素早い反応で炎の壁を展開しようとする。


 が、しかし……、


「「っっ!?」」


(…………炎の壁が……薄い……)


 魔力の枯渇……強力な魔法を連発していたルビィの魔力がついに枯渇し始めたのである。


「きゃぁあ!!」


 いくつかの棘が壁を貫通して、ルビィへと襲い掛かる。

 それでもルビィは、何とか致命傷を避けるも脚には棘が刺さっている。


 そして……、


「〝タケルイワ〟ァ!!」


 ゴブリンはその隙を見逃さなかった。


 強力な魔法で、容赦なく追い打ちをかける。


 巨大な岩石が発生し、ルビィに向かって発進する。


「っ……!」


 ルビィはその方向を見据えてはいるが、素早く動くことができない。

 なんとか這いつくばるように移動するが、巨大な岩の攻撃範囲から逃れることができない。


 あ…………やばい……死ぬ……。


 ルビィは強烈な臨死感に襲われる。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ