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第30話 魔物

 翌日――。


「おー、おはよう、ユキくん、眠そうだな」


 学園生活二日目。


 授業が始まる前の教室でオーエスがユキに話しかける。


「あ、あぁ……」


「おいおい、ひょっとして初日から、かっ飛ばしたのか?」


「え、う、うん……まぁ、流石に徹夜はしなかったけどさ……」


 ユキは深夜二時まで、作業していた。

 なかなか思い通りに解析が進まなかったのである。


 うっかり初日から徹夜してしまいそうになりかけたが、流石に先は長いと思い、思いとどまった。


「ところで、オーエスとソレハは何をしてたのさ?」


 昨日、そうそうに研究開発室からいなくなっていたオーエスとソレハはその後、帰ってくることはなかったのである。


「あー、まぁ、ちょっとな……」


(……?)


 オーエスはなにやら誤魔化すかのように、あさっての方向を見つめている。


 すると……隣りの席の女子生徒がやってくる。

 赤みがかったサラサラしたセミロングの髪、気の強そうな釣り目がちではあるが、碧玉のような大きな瞳が特徴の女子生徒はルビィ・ピアソンだ。


 が、ルビィは特段、あいさつするでもなく、普通に着席するのであった。


 ユキが本日、教室に入ってくる際、すれ違った生徒はだいたいが挨拶をしてきた。

 恐らく、昨日のアイシャ襲来により、多くの生徒が関係は不明であるが、とりあえずアイシャの何者かであるということで、念のため、不敬のないように……という立ち回りをしているようであった。


 しかし、ルビィはそれには該当しないようで、特に興味なしという昨日の態度に変化はなかった。


 そんなこともあったが、二日目の授業は淡々と進んでいった。


 アイシャのおかげで、大変な日々になるかと思われたが、

 逆に、魔法学の時間において、魔法補助具を出しても、露骨にディスられなくなったのは普通に有難かった。


 とはいえ、やはりユキにとって授業はどちらかというと苦行であった。


 今更、国語や数学の復習なんてしたいと思えなかったし、前世時代から歴史といった文系科目はあまり好きではなかった。


 だが、そんな中でも魔法学以外にも興味深い科目が一つあった。

 それは〝魔生物〟の授業である。


「あー、お前ら―、今度の魔法学の野外演習では、魔物と対峙することになる。よくその生態を理解しておくようになー」


 角刈りの魔生物学教師が教壇にて、そんなことを熱弁している。


 ユキは教師の話をそこそこに聞きながら、ユキの編入前にすでに授業が終わっているであろう教科書の導入部を眺める。


 そこには、魔物の特性が記載されていた。


 =================================================

【魔物】

 ・魔力を持つ生物である

 ・知性ある種は魔法を使うことができる

 ・多くのは種は好戦的である

 ・知性ある魔物は稀に我が国の者に対し、忠誠を誓うことがある

 =================================================


 といったものであった。


 幸い、ユキはこれまで魔物という生物に接したことはなかった。

 人間が住む街では、ほとんど見ることがない。

 だが、人里を離れると野生の魔物は普通に存在しているようだ。


 この魔王の支配する国では、古くから軍に魔物を引き入れる風習があり、現在の地位を築いているとかなんとか……。


 正直、普段、暮らしている分には、ここが魔王が支配する国であるということを忘れがちであるが、 魔物が軍にいるというのは、なんとなく魔王らしいなぁと思うユキであった。


 魔生物の教科書では、スライムやゴブリンといった前世のJRPGではお馴染みの魔物も紹介されており、改めて、この世界がきっとゲームの中の世界なんだなぁと実感させられる。


 ただ、それについて、ユキは特に絶望するというようなことはなかった。

 そうであってもそうでなかったとしても、別に構わないし、その違いに大した意味はないと感じていた。


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