第27話 アイシャ襲来2
「ユキ、どうだ? 学園での初日は?」
「「「っっっ……!!」」」
「やっぱりあいつだ」
「イクリプス様があいつに話しかけている」
「しかもなんか心なしかかなり親しげじゃないか?」
(……な、なんなんだこれ。めちゃくちゃ気まずい……。え? アイシャ様ってこんななの? ここってほぼほぼどこかの貴族が集められてる学園だったはずだが……。その中で、この扱い……何がどうなってるんだ?)
ユキは最近まで研究開発室で、敬語は崩さないまでも、割と普通に接していたり、なんなら二人きりで話したり、更に言うと、寝落ちしてたり、パンツ見えそうになっていたアイシャが、まるで有名人かアイドルであるかのように、貴族たちから扱われていることに大分、動揺していた。
「大丈夫か? すごい汗だが……そんなに緊張したのか? そうだよな……新しい環境だもんな……」
アイシャはなんか違う心配をしている。
いや、全く違うわけではない。実際、さっきまでの授業では、ユキは結構、嫌な思いもした。
だが、今はそれよりも違う意味でまずいような気がしていた。
(と、とりあえず……なんか返事しないと……)
「あ、えーと……まぁ、おかげ様でなんとか……」
「おー、そうか……よかった……半ば強制的にしてしまったからな。少し心配していたのだ」
「半ばじゃなくて、ほぼ100%強制的だった……」
(あ……やべ……)
ユキはアイシャの天然なのか冗談なのかわからない理不尽発言に、つい本音で突っ込んでしまう。
「お、おい……あいつやべえぞ。イクリプス様に口ごたえしてるぞ」
「しかもため口きいてるぞ」
「やばい……殺されてもおかしくないぞ……」
(あーーー、そういう感じ? ダメだ、これ……もう色んな意味で終了です)
ユキは学園生活、あるいは第二の人生の終了を確信していたが……、
「確かにそうだな。申し訳ない。だが、どうしてもそうしたかったのだ……許してくれ」
「あ、アイシャ様が逆にあいつに許しを請うているだと……?」
「ダメだ……理解が全く追いつかない……」
(あぁ……どんどん裏目に……)
「だが、もし何か、困ることがあれば、いつでも私に言ってくれ。できることには限界もあるが、私にできることであれば、なんでも協力する」
「あ、ありがとう……ございます」
「うむ。では、また研究開発室で会おう」
そう言うと、アイシャは颯爽と去っていくのであった。
「「「「「……………………」」」」」
残された1年1組の生徒たちは一瞬、呆然と立ち尽くす。
そして……、
「あの……リバイスくん、なんかさっきの授業……ごめんね……」
「すみません……本当……無学な自分が恥ずかしいです」
「申し訳ない、不徳の致すところでした。あと、今度、アイシャ様のサインもらえないかな……弟がファンで……」
世渡りがうまそうな調子いい奴が何人か謝ってきたり、ついでになんか、ねだってきたりしていた。
「あ……うん……別にそんなに気にしてないから……」
(……アイシャ様にファンとかいるの? やっぱりアイドルか何かなのでしょうか……?)
ユキも別にまだクラスの誰が誰だかもわかっていない状態だったので、特定の誰かを恨んだりはしていなかった。
それはそれとして……先のアイシャ様襲来により、ユキの穏やかライフゲージはごっそり削られた気がした。




