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第16話 ポリモフィズム

 ユキは【魔法実行処理】の前に一つ、条件を追加する。


 それが【カウンターが1200の倍数になるごとに】という条件である。


 (カウンター1200でおよそ10秒だよな……)


 ユキはこれまでの定性的な検証により、魔法論理(マジック・ロジック)記述におけるFPSフレーム・パー・セカンドは120程度であることが分かっている。


 その前提の元、カウンターは1/120秒(約0.0083秒)に一回、カウントアップされる。

 つまるところ、カウンターが120増えると1秒、1200増えると10秒というわけだ。


 つまるところ【カウンターが1200の倍数になるごとに】は【10秒に1回】と言い換えることができる。


 ユキは少々、ビビりながらも、改めて、魔法論理(マジック・ロジック)を改造した魔法補助具を手にする。


 手に持ってからしばらくすると、実行(エグゼ)を宣言していない状態で、魔法が発動する。


 そして、ユキはそのままの状態で、魔法補助具を持ち続ける。


 すると、初回の魔法が発動してからおよそ10秒後に、魔法が発動する。

 さらには20秒後、30秒後にも魔法が発動する。


 成功だ。


(よし……これで、魔法補助具を実行(エグゼ)なしに発動し続けるという課題はクリアした……)


 意図通りの動作をしたので、ユキは一度、魔法補助具から手を放す。


(……だけど)


 問題はこれがそのまま魔石に適用できるかどうかであった。


(まぁ、そんなにはうまくいかないとは思うけど……)


 ユキはダメ元で、魔石を魔法補助具にくくりつけてみる。


 すると……、


(…………え? マジか……!)


 なんと、魔法補助具の魔法が発動したのである。


(これはもしや……)


 ユキはそのまま魔法補助具の様子を観察する。


 すると、人間(ユキ)で試した時と同じように、10秒後に、再び、魔法が発動したのである。


(うぉ、これは流石に熱いな。この魔法補助具の使用者として、魔石も想定されているということか。これはすごいことだ……ポリモフィズムに感謝だな)


 ユキは一人で興奮していた。

 ユキが興奮している理由であるポリモフィズムという概念については(少しややっこしいので)一旦、無視するが、とにかくこれが画期的であることは確かであった。


 自動的に発動する魔法補助具が発見されたのである。


 と、オーエスがユキに話し掛けてくる。


「ユキくん、さっきから、何をやってるんだい? いくら夏とはいえ、なんだか少し寒いのだけど……」


「あ、すみません……」


「ん? なんだなんだ?」


 オーエスがユキの作業スペースをのぞき込む。


「あ、えーと……」


 ユキはオーエスに説明しようとするが、ふと、今朝、アイシャに言われたことを思い出す。


 ◆


「ユキ……! すまない、昨日の件はまだ我々だけの秘密にな……!」


 ◆


(……言ったらまずいのか……いや、見られたらまずい……?)


 ユキがあたふたしていると……


「……? 特に何もないな……」


 オーエスはユキの作業スペースに特段の変わったことを見いださず、自分のスペースに戻っていく。


 ユキはほっとしつつも、自分自身も改めて、魔法補助具と魔石を確認する。


(……あ、止まってる)


 魔法補助具からの魔法の放出は止まっており、魔石は光を失っていた。


(これは……燃料切れか)


 その通りであった。

 単なる燃料切れではあった。

 しかし、たかが燃料切れ、されど燃料切れであった。


 ……


 その夜――。


 ユキは二夜連続で夜更かししていた。


 一人きりの研究開発室で、ユキは魔法補助具に向き合う。


 そして……、


「あぁ、ダメだ……うまくいかない……」


 ユキは頭を抱える。


 日中、魔石から得た魔力で、魔法補助具の魔法を発動させるという成果は得られた。

 しかし……、


「ダメだ……こんなんじゃ、全然、実用に耐えがたい……」


 〝長時間〟、〝大容量〟の冷却。

 これがアイシャから要望されている冷却装置の要件である。


 しかし……、


 よく冷えるように、冷気の出力を上げれば、すぐに燃料が切れてしまう。

 逆に、稼働時間をのばすため、冷気の出力を下げると、時間は延びるが、あまり冷えないという状況であり……

 現状では、とても実用的とは言い難かった。


 そんな時……、


「ユキ、今日もか……?」


(……!?)


 研究開発室に透明感のある声が響く。

 ユキが振り返ると、えんじ色のブレザー姿、透き通るような白銀の髪で、青い瞳の少女がいた。

 それはアイシャであった。(二夜連続、二回目)


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