メンバーの実力
「さあて、オマエら油断すんなよ」
「これでも一応ランクBなんでな、勇者サマにご忠告されるほど素人じゃないぜ」
「オマエはそうかもしれねえけど、他は……」
アンミェルの言葉にミスピが威勢よく返事をする。確かにミスピは問題ないが、他の面子のカエバスとリデーズは少し震えており、カルミアは酒を飲んで夢うつつの表情でフラフラと歩いている。
「確かにな、まあなんとかなるだろ」
(ホントに大事か……?)
少しだけ不安を感じながらアンミェルが先に進んでいると、ゴブリンの群れが進行方向に見えてくる。
「よし、ゴブリンどもがいるな。腕を見たいから試しにオマエらだけでアイツらを始末してくれ」
「そんなのお安いご用意だ!いくぜ!」
得物を構えて駆け出すミスピ、そんな気配を隠さない突進にゴブリン達も気がついて迎撃に入る。
「おらぁ!!」
ミスピは勢いのまま、全力で剣を振りかぶる。しかし、剣は手をすっぽ抜けて明後日の方向……アンミェルのいる位置に飛んでいった。
「え?うわっ!!」
アンミェルはすぐに気がついて間一髪で大剣の一撃を躱す。地面に深く突き刺さる姿に彼女の心臓が早く脈打つ。
「あっぶなぁ!!なにやってんだぁ!!ランクBを名乗るなこのマヌケェ!!」
流石に命の危機を感じたからか、アンミェルはブチ切れながらミスピに罵倒する。
「あはは、ごめんごめん……ん?うわぁぁ!?」
アンミェルに気を取られたミスピに、ゴブリンが詰め寄りその棍棒を振りかざしていた。アンミェルもすぐに気を取り直して対応しようとするがフォローが間に合わない。
「ギャウ!?」
もう少しで攻撃が当たるその瞬間、矢がゴブリンを貫き、ミスピが間一髪で助かる。
「あらあら〜こんな感じでいいですか〜勇者サマ〜?」
(なっ!?こいつ……!)
どうやらカルミアが弓を引いていたようで、ミスピの首を避けてゴブリンを撃ち抜くその腕前に、アンミェルが声も出さずに驚く。
「ギエェェェ!!」
「まだやる気ですか〜?そ〜れ」
まだ襲いかかるゴブリンに対し、カルミアは矢をつがえると今度は近くの木の一本に狙いを定めて矢を射る。
すると、木の中でも太めの枝を折り、ちょうど真下にいたゴブリン達に直撃する。
即死ではなかったが十分ダメージがあったようで、それに驚いたゴブリン達が逃げ出していった。
「お仕事完了、どうですか勇者サマ〜?」
「……あ〜オマエすごいな」
純粋に弓の腕前を認め、アンミェルが動揺しながらカルミアを褒める。
「お姉さんのスキルは『美しく奏でる弦』って言ってね。弓に精神を集中させると、頭で思った自然な物理動作で可能な場所ならどこにでも当てられるの」
当初アンミェルはこのパーティに期待などしていなかった、フリーになるということはそれ相応の理由があり、実際に癖の強さをひしひしと感じていたからだ。
しかし酒を飲んで隙だらけのカルミアが弓の技術だけは間違いなくSランクであり、こんな人材がいることに驚きを隠せなかったのだ。
(勇者パーティ(うち)に入れたいレベルの人材だが、あの酒癖の悪さは勇者連中が嫌がりそうだな……)
常に酒瓶を手放さない彼女の酒癖の悪さに呆れながら、アンミェルと他のメンバーがミスピの剣を引き抜く手伝いをしていた。