終わった後の始まり
「……ん、あれ……ここはどこだ……?」
ふわふわとした感覚に違和感を感じ、少女が目を覚ます。
純白の中にパステルカラーの霧がかかるこの光景に、全く見覚えのない少女は訝しげな表情を浮かべたまま、直前の記憶を呼び起こそうとした。
“目が覚めましたか”
すると、突然頭の中に声が響いてくる。
「な、なんだてめぇ!ボクをどうするつもりだこのやろう!」
突然の声に驚いた少女は、咄嗟にナイフを取り出そうとするが、腰には何も持たずそもそも手ぶらな事に気がついて拳を握りファイティングポーズを取る。
“身構えなくて結構、私はこの世界の管理をする者。あなたをここに呼んだのは私です”
「ンダァ!?何わけのわかんねえこと言ってんだ!ボクをここから出せ!出さねえとぶっ飛ばすぞ!」
聞く耳を持たない少女は威勢よく啖呵を切る。するとなんの予兆も無しに少女の眼前に石柱が降ってきた。
楔型のそれは、足元こそ無事だったが少女の鼻先と額を擦っており、そこが熱を発しながら血を滲ませ赤くなる。
「あ、く、う……わ、わかったよ!話なら聞いてやる!早く話せ!」
流石にオラつくには相手が悪いと悟ったのか、少女はすぐに縮こまりおとなしくなる。
“よろしい、では本題に入りましょう。我ら管理者はこの世界を『クローミリ』と呼び、比較的平穏な世界として大事に保管していました”
(よくわからねえけど、こいつ偉そうでムカつくな……)
どこか尊大な態度の管理者に、心の中で悪態をつく少女、そんな彼女の態度を知ってか知らずか、管理者は淡々と続ける。
“しかし、この世界に変化をもたらそうと『スキル』というものを人々に授けるようになってから歪みが起き、今や世界は格差と種族間の争いが蔓延ってしまいました”
(スキルをもたらした……?人間が神祈の義を行うようになったのは500年以上前だってシエノンが言ってたぞ……?こいついつの時代の話してんだ?)
“それを憂いた私達管理者は一人の人間に変革をもたらせるほどの力を与え、その者に世を変えてもらおうと考えました。しかし、結果は人間の中心都市の崩壊による世界のバランス崩壊と力を与えた者の独裁的な秩序がもたらされただけとなりました”
(…………こいつらバカなのか?さっきから話を聞いてると計画性がなさすぎるぞ……)
神妙な顔で話を噛み砕く少女、しかし聞けば聞くほど突発的で意味を考えない計画に、現実味を感じなくなっていった。
“その為、私達は別の計画を考えました。それは別の者に記憶を継承したまま時を遡ってもらい、試行錯誤を繰り返して状況の改善をしてもらう。あなたはその計画に選ばれたのです”
「つまり、ボクはてめえらのやらかしたことに対して代わりにケツを拭いてこいって言われてるわけか」
“言い方を選ばなければ、そういうことになりますね”
「くだらねえ、とっとと元の場所に戻せ!」
“もうあなたは死んでいます。これはある意味あなたに対する救済なのですよ、凄惨な死に方を回避するチャンスを与えているのですから”
一方的な物言いに怒りを表す少女に、管理者は淡々と告げる。少女がその意味を理解できずにいる間にも、管理者は続ける。
“あなたを選んだのは機転がきき、あなたが持つスキルがこの計画に有用だと考えた為です。ではスキル『修正の歯車』を与えます。ご武運を”
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