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気付いたら周りが百合色になってた  作者: ノリあきさん
宮永さんと荒木さん
8/30

純粋小動物さんとまだ見ぬ不良さん

「あれ、牧原と須藤は?」


「早退だって~。あそこの二人、怪しくな~い?」


「な、仲いいよね……」


お昼休みの予鈴が鳴っても帰ってこない二人を不思議に思ったのか橋本さんが聞くと、いつも一緒にいる秋山さんが答えた。

いつも不思議に思うんだけど、一体いつその情報を聞きつけたんだろう?


「仲良いっていうか、良すぎ」


「廊下でもしょっちゅういちゃついてるって、他の学年でも噂だよ~?」


「あいつらいっつも昼休み連れたってどっか行ってるもんね。どこ目指してんだか」


「不思議と廊下以外にあんま目撃情報がな~い」


「……マジでどこ行ってんだろ」


「あはは……」


「ゆまちん、なんか知らない~?最近、たま~に須藤さんと話してるよねぇ~?」


「え!?私!?」


「あーそいえばそうだね。差し向けたあーしが言うのもなんだけど、意外と波長合ったの?何話してんだかマジで想像つかないけど」


二人の会話に合わせてなんとなく相槌を打っていると、矛先がこっちに向かってきた。

確かに、あれから何度も須藤さんとはお話しているけど……

その実態はいつも須藤さんがよくわからないことを言って、それに私が困惑しているだけだ。


「えーっと、昨日は確か……Dカップって聞くと結構ありそうだけど、実際見るとそうでもないよねって言ってたよ!」


「……マジで何の話してんの」


「あはは、須藤さんわかんね~」


どうしよう。確かに、とか思わずうなずいてしまったことは秘密にした方がいいのかな。


「由真。あんた純粋なんだから、須藤から変な影響受けないようにね」


「う、受けないよぉ!」


「ほんと~?結構仲良さげに話せてるように見えるから、ひょっとしてもう手遅れ~?」


「そ、そんなことないよぉ……」


た、確かに最近は普通に須藤さんの話についていけちゃってる気がする。

楽しく会話ができるのはいいことだと思うけど、方向性がまずいのは私にもなんとなくわかる。

ど、どうしよう……


「……ま、いいわ。由真があーしら以外とも話す相手ができたってことで」


「真奈は優しいね~」


「そ、そんなんじゃないし」


「えへへ……ありがとう」


橋本さんは、入学式の時に道がわからなくて縮こまっていた私を引っ張ってくれた人。

2年生になって同じクラスになった後も、馴染めない私を見かねてか良くお話してくれるとっても優しい人。

秋山さんはそんな橋本さんとよく一緒にいる人で、必然的にその流れでお話するようになった。

どこかから鮮度の高い噂を持ってきては、話のタネにして盛り上がっている。本当にどこから仕入れているんだろう……?



「以上、HR終わり!各自解散!」



「終わった~。どうする?どこ寄る?」


「んー、由真はどっか行きたいとこある?」


「そうだなぁ……」


HRが終わって橋本さん達と放課後の予定を考えていると、不意に声がかかった。


「あー、宮永ー!ちょっと来てくれー」


「あ、はーい!」


声の主は先生だった。こちらに向かって手を振っている。何かあったんだろうか?

先生は少し考えるそぶりをすると、小さく頷いてファイルされた書類?を差し出した。

え、何だろう、これ。全く見に覚えがない。


「あー、これはまぁ訳ありの書類でな。しかも割と緊急性の高い奴だ。本当は牧原に頼む予定だったんだが、早退しちまった」


「は、はい……?」


「というわけで、比較的家が近い宮永が抜擢された。こいつを持って、荒木のとこに行ってくれ」


「荒木……さん?」


「そう、荒木だ。殆ど学校に来なくなっちまったから、知らんのも無理はない。でかいマンションだからすぐわかるし、簡単な地図も入れといた。じゃ、頼んだぞ」


「あっ……はい、わかりました……」


呼ばれたと思ったら、不登校中の荒木さんなる人物への謎の書類を受け取ってしまった。

どうしよう、って言ってももう受け取っちゃったし……うう、どんな人だったか全く思い出せない。大丈夫かなぁ?


「由真?何だったの?」


「おりょ、それは……何〜?」


「えっとね、なんか緊急性が高い書類?みたいで……先生に頼まれちゃって、今日荒木さんのとこまで行かなきゃいけなくなっちゃったんだ」


「荒木?そんな奴いたっけ?」


「あ~ほら、いっつも空席のそこだよ、荒木さん。そういえば全然学校に来てないよね~」


「なに、引きこもり?」


「いんや、確か見た目的には~……所謂不良って奴?」


「えっ!」


不良って、あのコンビニで屯したりなんかえっと、兎に角怖いあの不良!?

ふ、不良に書類……?ど、どういうことなんだろう?

いや、不良だからってそんなに訝しんじゃ……!で、でも……


「マジ?由真あんた一人で大丈夫?あーし達もついていこっか?」


「百人力だぜ~?」


「う……」


……で、でも、いつも二人に守ってもらってばっかりじゃだめだ!私だって、一人でできるようにならなくちゃ!

それに、この書類を渡すだけだし!あとはさっと帰っちゃえばいいし!


「だ、大丈夫!私一人でも行けるよ!」


「ホントに?無理してない?」


「む、無理してないよ!」


「……そうだね。ゆまちんが一人で行くっていうなら、止める理由はないし~。道だってわかるよね~?」


「う、うん!先生に地図ももらったから!」


「……まぁ、そこまで言うならいいけど。何かあったら電話しなさいよ?」


「真奈ってば過保護すぎ~」


「しょ、しょうがないでしょ。由真は色々心配なのよ」


「あはは……ありがとう」


そうだ、私だっていつも橋本さんや秋山さんにおんぶにだっこじゃない。小さい荷物をを届けるぐらい、一人でだってできる!

私はぐっと気合を入れると、まだ見ぬ荒木さんへの闘志を燃やした。待っていてね、荒木さん!



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