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気付いたら周りが百合色になってた  作者: ノリあきさん
須藤さんと牧原さん
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二人きりの保健室であった話

「杏の身体、拭かせて?」


「……う、うん」


なんという目使いでこちらを見てくるのか、このおなごは。

漸く冷えた頭が再び熱を持ち始める。彼女が私の身体を?拭くのか?こんな貧相な身体を拭いて楽しいのか?いやまずは服を着なさい服を。鮮やかな赤色がとても目に毒だ。致死毒だ。


「あ、ちょっと待って」


「ぅん?」


「すぅぅぅうぅぅぅ!」


「なにしてるのぉ!!」


まずいまずい、危うく雰囲気に飲まれるところだった。なんとか愛美分泌液が染み込んだタオルを顔に当てて一命をとりとめた。

拭いた汗で少し湿っていて、なのにいい匂いがする気がする。あーこれだよこれ。もう麻薬だよ。


「だめっ!タオルは没収!」


「あぁー私の聖骸布がぁー」


「そんな大層なものじゃなぁいっ!もぉー……」


ぷんすかしてしまった愛美は、私から愛美成分が凝縮されたタオルを向こうへ放ってしまった。ああぁ。


「……ね、ほらぁ、こっちきて?」


「あ、……うん」


あダメだこれ。私の付け焼刃な雰囲気ブレイクでは、碌にダメージを与えられなかったらしい。一瞬で場を持っていかれた。

寧ろ益々やる気になっているようにも見える。ナニを?ヤるの?


「脱いで?……あ、それともあたしが脱がそうかぁ?」


「い、いや、大丈夫。自分で脱げる」


「そっかぁ。えらいえらい」


そう言って頭をなでてくれる愛美はもう、私が欲して止まない母性の化身でたまらないんだけど……


「わぁー……杏綺麗だよぉ」


「うぅ……あんまり見ないでくれ……愛美に比べたら全然……」


「そんなことないよぉ!あたしは杏の身体、めっちゃ好きだよ?」


「あ、ありがとう……」


うぅ、いっそ殺してくれぇ。

私は攻撃力には自信があり、実際に定評があるけど、防御力に関してはクソザコなんだぁ……二番目の村で買える防具レベルなんだぁ……


「んふふ、傷つけないように、丁寧に拭かなきゃねぇー?」


「そ、ソウデスネ……」


「そんなに緊張しないでよぉ。さっきまでノリノリだったじゃぁん」


いやもうお店なのよ。雰囲気とか私の気持ちが完全に童貞を捨てに初めて風俗に来た男の子なんよ。

はっ、まさかこれが今まで愛美に食われた童貞君達の気持ちか!?なんか初体験の時より緊張するんだけど!

うわぁいいなー、私もこんな初体験がよかった……なんかうらやましくなってきたぞぅ。おのれぇ……


「はぁーい、ふきふき。ぽんぽん」


「……ふ、フキフキ」


「ぅんー?ふふ、ふきふき♪」


「ふきふき、はは」


あ、やばい幸せ。

目が合う幸せ。ありがとう大聖母。ありがとう愛美。


「ほぉら、万歳してぇー?」


「う……ばんざーい」


「はぁーい♪」


それはそれとして恥ずかしい!

うぅ、なんて楽しそうなんだぁ愛美!私は今にもサラマンダーとなって口から炎が出せそうだというのに!卑怯だぞ!一心不乱に鉄打つぞ!


「いいなぁ、杏。腕とか超細いぃ」


「私のは貧相って言うんだよ」


「もぅ!自分を卑下するの禁止ぃー!そんな悪い子はー……こうだぁ!」


「ひぅっ」


私にかわいらしく指をずびし!、と向けたと思ったら、掛け声とともに下着姿の愛美が私に襲い掛かってきた!

えっちょっとまって私たちほぼ裸だしここ保健室だし先生戻ってきたらやばいしアッ、女の子の素肌って意外と冷たい!


「んふふ、どう?」


「ぁ……」


でも、段々とお互いの体温で温まっていくのがわかる。共有してると言えばいいのか。


「んー……にへへ」


「……」


私に絡みつく愛美の身体を、温めてあげたいと思う。

自然と彼女の背中に腕が回って、より密着しようとする。

彼女の胸に頭を埋め、心音を確かめる。生きている。……若干、速い。


「……」


「……」


何も言わない彼女は、胸の代わりに私のうなじに顔を埋めて、抱えて、より密着しようとしてくれる。

そんな愛美を、愛おしく思う。

慈しむように、彼女の髪を撫でる。ふわふわの金髪は、しかし手に絡まず、気持ちよく流れていく。

愛美も、私の髪を撫でてくれた。最近手入れを真面目にするようになった、自慢の黒髪だ。

全身の無駄な力を抜き、ひたすらに彼女の感触を確かめる。

私より肉付きのいい腕、腿、胸、腰、背中……

愛美の存在をより近くに感じたくなって、もっともっと、と身体を押し付けた。

それに応えてくれる愛美が、愛おしい。


「……きもちいい、ね」


「あぁ……幸せだ」


それからどれだけの時間が経っただろう。長かったのか、短かったのか、もう私にはわからなかった。

小柄な私を胡坐の上に抱えた愛美は、それから私の頭を一撫ですると顔をあげた。自然と私も、それに倣う。

鼻もくっつきそうな距離で、お互いの目が合った。


「……ね」


抱き合ったせいか、せっかく拭いた汗はいつの間にか戻ってきて、二人の身体をつたっていく。

温もりを共有したせいか、愛美の顔は火照って、その綺麗な瞳は心なしか揺れているように見える。

愛美が目の前にいるせいか、さっきから私の心臓の鼓動が嫌になるくらい聞こえてくる。BPMが、速い。

段々と、愛美が近づいてくる。ただでさえ近かった距離が、もう、おでこも、鼻も、くっついてしまった。

いつか釘付けになった、愛美の形のいい唇が静かに動いた。


「……ねぇ、しても、いい?」


「……うん。わたしも、したい」


お互いに自然と目を瞑って、そして、二人の唇が優しくくっついた。

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