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それから

ありがとうございました!

 

「……なるほど、それで?」


「こうなったとー」



「ね、次は何食べたい?」


「ん~とね~……これ!」


「いいよ、はい、あーん」


「あ〜……ん!んふふ~、美味し~い!」


「あ、ほら、口元ついてる。んっ」


「ん。ありがと~♡」



「あ、あはは……」


「……私も気を付けないと。もしかしたらあんな感じになってるのかもしれない……」


今私の目の前で繰り広げられているのは、まさにバカップルのいちゃつきである。

いや別にいいんだけど、いいんだけど!ようやく丸く収まって、幸せそうなのは良いんだけどさ!



「幸せそうに食べてる凪マジ可愛い」


「真奈だっていつもかっこいいし可愛いよ~?」



ものには限度があるって言うかさ!ここ普通に外だしファミレスだしほら向こうの家族連れの方々が見てるからさ!流石に私たちも恥ずかしいから抑えて欲しいって言うかさ!


「凄いな……完璧に二人だけの世界だぞ。私たち要るのか?」


「二人が仲良しに戻って嬉しいけどぉ、ここまでになるとは思わなかったなぁー」


「み、見ているこっちが恥ずかしくなっちゃいますね……!」


「いや、でも由真が可愛すぎるのは仕方がないしな……寧ろ私のものだって見せつけないと……」


「さっきから何を受信してるんだ日向君は」


「毒電波?に中てられちゃってるねー」


人目も憚らずこれでもかといちゃつく真奈ちゃんと凪さん(名前でいいと言われた)は、それはもう幸せそうに一つのパフェを二人で食べさせ合っては愛を囁き続けている。

抑圧されていたものが解放されたんだろうか、これまでの時間を取り戻すかのように身体を寄せ合って笑っている。


「……まぁ、幸せそうでよかったよ。私も友人が苦しんでたのは辛かったから」


「私もです!喧嘩……はしていないけど、もう離れ離れになるなんてことにはならない……ですよね?」


「続けばねー」


「は?あーしが凪を手放すわけないんだけど?」


「私が真奈から離れるなんてありえない~」


「普通に話聞いてたのかよ急に会話に入ってくるな」


「いいじゃんあんたもやれば?ていうか二人だけの世界最初に作ってたのはあんただからね、杏」


「半分は当たっている、耳が痛い」


「全部でしょ」


真奈ちゃんと凪さんがくっついた日、真奈ちゃんから通話が来てお礼を言われた。

どんな感じだった?と聞いてみると、もう凪さんの顔を見た瞬間から想いが溢れてきて、それをそのまま言葉に乗せて叩きつけたらしい。

結果は御覧の通りで、漢らしい告白にもう最初からメロメロだった凪さんがノックアウトされて、そのまま一日中抱き合ってくっついていたそうだ。なんか私もそうだった気がしてあまり強く言えないが、ここは棚に上げてしまう。


「よし、私たちもやろう!由真、もっとこっちに寄って」


「ふぇっ!?」


真奈ちゃんたちに中てられた日向君が、由真ちゃんを持ち上げて膝に乗せ始めた。恥ずかしくて小さくなっている由真ちゃんは可愛いなぁ。


「……愛美」


「はぁい、いらっしゃーい♪」


流石愛美だ。私の考えていたことはバレバレだったらしい。

背中から包んでくれる愛美は超いい匂いだし超柔らかい。勝ち負けではないが、得意気になってしまうのも仕方がないことだろう。


「ふっ」


「……なによ、その目は」


「いやね、私たちみたいないちゃつきは流石の真奈ちゃんたちも出来ないだろうと思ってね。私や由真ちゃんという低身長組にのみ許された身長差を強みにしたこの『自分だけのソファ』は」


「は?あーし達もそんぐらいできるし。凪、ちょっとこっち」


「ん~?膝?」


「そそ、で、こっち向いて」


「な、何を……?」


「い、いいのかなぁ……ここお店なのに……」


「みんなでいれば怖くないさ」


既に二人の世界に旅立った由真ちゃんたちはさて置き。

真奈ちゃんが凪さんを同じように膝に乗せたかと思うと……っ!あ、あれは!

対面〇位!!


「ファミレスのライン越えてるだろうそれは!」


「あーし達は負けてないし。それにいつでもこうやって凪と顔合わせられるんだよ?最高じゃん」


「えへへ……恥ずかしいよ真奈ぁ~……」


「凪さん戻ってきて!いつもの常識的な貴女はどこに行ったの!」


「あのなぎっちがここまで骨抜きになるなんてー……やるねぇ」


時折鼻を擦り付け合いながら(こちらからは確認できないけど恐らくそうしてる)、頼んだパフェを器用にスプーンで掬って食べさせる真奈ちゃんには、もう以前の面影は……そこまで残っていない。

全く変わってしまったわけではないけど、険が取れて柔らかくなったイメージがある。

それに行き急ぎていた様子がなくなって、余裕が出来たみたいだ。

当然か。可愛い大切な人に気付いて、あれだけ幸せそうなんだから。


「ほら、あーん」


「ん~♪」


「……やば、どうしよ。あーし我慢できなくなってきたかも」


「ん~?」


幸せそうでよかった。……よかった……?

なんか見つめ合う二人の視線が如何わしいような……?


「……ねぇ?このクリームさ……二人で味わったら、どうなるかな?」


「……どうしよ、絶対、美味しいよ?」


「お二人さん?」


待って?こっちから見える真奈ちゃんの目がやばいんだけど?何かやばそうな会話聞こえてくるんですけど?


「こうやって、凪の舌に乗っけてさ……」


「ふぁぃ……♡」


何やってんのここファミレスだよ!流石に私でもドクターストップだって!


「オイ!ストップストップ!愛美も止めて!」


「ほら正気に戻ってぇ日向ぁ!あたしたち出禁になっちゃうからぁ!」


「ほら、あー……なんだ揺らすな愛美。私は……何やってんの!?」


「あー……?え!?な、何しようとしてるんですか真奈ちゃん!?」


「何?邪魔しないでよ。今からあーしは最高のデザート味わうんだから」


「それ家に帰ってからやって頼むから!今は抑えて!」


「もぐもぐ。そうだよ~真奈。家に帰ってから、たっぷりやろ~?二人きりで、い~っぱいするの」


「いつの間にそんなにエロくなったの凪さん!?」


「凄ぉい……あのなぎっちが超雌の顔してるー……」


「あ、あわわ……!」


「……もう出たほうがいいね。目立ちすぎだよ私たち」



暴走する真奈ちゃんを何とか押し込めて、会計をして店を出る。何か凄い目で店員さんから見られていたような気がするけど、きっと気のせいだから気にしない。うん。

気にしないけど、もうあそこのファミレスには行けないかもしれない。

大きな交差点まで六人で歩いて、それぞれ別れて今日はお開きだ。


「じゃあね。ほんとありがと、みんな。あーし達幸せになるから」


「またね~」


まず真奈ちゃん凪さんカップルが離脱。真奈ちゃんの腕に抱き着く凪さんと、それを見せびらかすように歩く真奈ちゃんが街へ消えていった。


「なんか今生の別れって言うか、結婚式みたいなセリフ言ってたね」


「私、真奈ちゃんがあんな風になるなんて思わなかったよ……」


「まぁいいんじゃないー?誰も不幸になってないんだしぃ」


「その内良い感じに落ち着くんじゃないかな。暫くはそのままかもしれないけど」


まぁ、いいか。幸せそうだし。友人の幸福は歓迎こそすれ、それを呪うなんてことは絶対にない。

笑顔になってくれたのなら、それが一番いいことなのだ。


「じゃあ、私たちもこの辺で」


「今日は楽しかったです!また集まりましょうね!」


「うん、またね。また誘うし、そっちも気軽に誘ってよ。愛美の先客がない限り、最優先で動くからさ」


「私は?」


「五番目かな」


「オイ」


「あはは、こんなこと言ってるけど、杏ってホントは日向のことめっちゃ気に入ってるから安心して?」


「え?そうなの?」


「……ほら、行ったいった」


「……えへへ、なんだか私も嬉しいです。では、また今度っ」


「あー、うん、じゃあね、また」


「はいはい」


「またねー」


手を振って二人を見送り、隣の愛美を睨む。


「むー……」


「もーなぁに?そんな顔で見られても、可愛いだけだよー?」


 「ほれほれー」とほっぺをこねくり回されて、ぶー垂れた気持ちも何処かへ行ってしまう。

 落ち着いた私は愛美と手を繋いで、私の家に帰っていく。


「でもさぁ、ホントあたしたち、世界広がったねー?」


「……うん。正直、あそこで屋上に愛美が居なかったらと思うと気が気じゃないよ。今日みたいに友達たちと馬鹿騒ぎなんて絶対出来なかったし、生きていることが楽しいって思うこともなかった」


 本当に、あの時屋上で愛美と会わなかったらどうなっていたことか。

 まず間違いなく私は塞ぎ込んだまま、由真ちゃんや真奈ちゃん達と友達になんてなれていなかっただろう。当然こうして夏休みに遊ぶーなんてこともなく、一人寂しく家と図書館辺りを往復する日々を過ごすことになっていた筈。

 愛美と出逢えたのは紛れもなく私の人生一の幸運で、宝だ。

 こうして腕に抱き着いて、その存在を強く確かめて、噛みしめる。

 それに気づいて私を優しく見下ろす彼女を、愛おしく思う。


「……お互い見つけられてよかったし、見つけてくれてありがとうって感じだねぇ」


「だね。私を見つけてくれてありがとう、愛美」


「私も、見つけてくれてありがとう、杏」



 笑い合って、傍にいる大切な温もりを確かめ合って、歩いていく。

 それがいつまでも、いつまでも、続いていくと良いなと、

 臭いことを言っていると自覚しながらも、そう思わずにはいられなかったのだ。

  




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