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気付いたら周りが百合色になってた  作者: ノリあきさん
橋本さんと秋山さん
29/30

告白

 

「いらっしゃ~い」


「おじゃましまーす」


 あの後、結局あまり良く眠れなかった。

 数日ぶりに見る真奈の姿は勿論変わっていないけど、その数日ずっと外出をしていたのかTシャツから伸びる細い腕が健康的に焼けている。声のトーンは本当に友達の家に来た、っていう感じであまり緊張感はないと思う。まぁ、実際その通りなんだから緊張することなんて普通ならないんだけど。


 でも私には勿論普通なんかじゃない。だから昨日の夜はあまり寝れなかったし、今だって平静を装っているけど内心は心臓バクバクだ。


「なんか久しぶりかも。昨日も話したけどさ」


「確かに~最近は来てなかったよね~?」 


 あ、ちょっと意地悪だったかな。


「ごめんね。凪のこと、ちゃんと見てなくて」


「いっ、いいよ~!別にそれぐらい!真奈もやることあったんだからさ~」


 急に真面目な顔になって真摯に謝るのはやめて欲しい。唐突に普段と違う顔されたらどうしていいのかわからなくなるから!


「それでも、ごめん。あーし、散々から回っていたけど凪を放っておいちゃったのだけは後悔してる」


「う、うぅ~……いいよぅ、別に~」


 今日の真奈は絶対おかしい。


「と、取り敢えず私の部屋に行こ~?……お話すること、あるんでしょ?」


「うん。……どうしよう、あーし緊張してる」


「それは、私もだよ~?」


 親が居なくて助かった。働いてくれているのは感謝してるけど、途中で茶々入れられるのは絶対に嫌だったから留守にしているのはとてもありがたい。

 私の後ろをついてくる真奈は家に来た時から一転、真剣な顔を作って黙っている。

 どんな話をしよう。どんな話をされるんだろう。

 

 ……どんなことを話されても、どんな答えを出されても、覚悟はまぁ、できている。

 正直勝負の場に上がれたことすら奇跡だと思っているので、こうして真剣に考えてくれて話をしてくれるだけでも嬉しいし、満足だ。……いや、満足は嘘。それ以上を、私は欲してる。


「どうぞ~」


「おじゃまー。うん、全然変わってないわね」


「そんなにぽんぽん物増えないよ~」


「なんか安心したわ」


「それどういう意味~?」


 こうして自然と並んで座って、頬を指でぐりぐりしていると昔――と言ってもそんなに前じゃないけど――に戻れた気がして少し嬉しくなる。

 でも賽は投げられたし、というか投げたし、もう逃げることはしないと決めたから。

 真奈のお気に入りのクッションに座った彼女に向き合って、引き金を引く。


「……じゃあ、お話、しよっか」


「……そうね、うん。しましょ」


 真奈が目を閉じて深呼吸をしている隙に、私も隠れて呼吸を整える。

 何を言われても、大丈夫。

 ゆっくり目を開けた真奈が私の目を見て、静かに話し始めた。

 

「まずは、ごめん。此間も謝ったけど、あの後色々考えて、やっぱりちゃんと謝りたかったの」


「……ううん、いいんだよ。気にしてないって言ったら嘘になるけど、もう大丈夫。こうして真奈が向き合ってくれたから」


 そのことに関しては、実は本当に気にしていない。寧ろ勝手に私が離れていただけなのに、こうして謝ってくれるのが嬉しかったり申し訳なかったりする。そもそも彼氏を欲しがるのなんてごく当たり前のことだと思うし、そうやって疎遠になっていくことも良くあることだと思っている。でも、真奈は私にこうして謝ってくれているということが真奈の中での私の大きさを表しているような気がして、また嬉しくなるのだ。


「……凪は、優しいよね。昔から、そうだった」


「そう……かな?」


「そうだよ。あーしが小さくて弱かった頃も、あーしがやりたいことするようになってそれを後ろから見守ってくれてる今も、ずっと凪は傍に居てくれた」


「……うん。私は、ずっと真奈が好きだったから」


 今でも思い出せる。初めて会った時にお母さんの脚に隠れてこっちをちらちら見ていた真奈も。ひらがなを一緒に覚えた時の幼いながらも真剣な真奈も。いつの間にか私の前を歩くようになったかっこいい真奈も。同じ高校に受かって思わず抱き着いた時に一緒に笑った真奈も。

 全部、ぜんぶ宝物。


「勿論、それだけじゃないけどね。一緒に居ると楽しいし、落ち着くし、……私が一番私で居られるのは、きっと真奈の傍なんだって、何時からか思うようになったの」


「凪……」


「重い……かな?」


「全然。あーしがこうしていられるのだって、凪が守って、傍に居てくれたからだから。寧ろ感謝してるぐらい。ありがとう、ずっと一緒に居てくれて」


 ……多分、凄く恥ずかしいことを言われているし、言っているけど。そんなことを気にしている余裕はない。どうしよう、私、滅茶苦茶大事にされているみたい。

 思わぬ期待に、心の何処かで期待していた答えに、自然と胸が高鳴っていく。

 その胸の高鳴りに感化された様に、口が勝手に動き出して、想いの丈を告げていた。


「真奈……私、真奈のことが好き。大好きなの……」


「……凪」


「ずっと好きで、でも真奈には迷惑だからって、ずっと黙ってた。でも、やっぱり自分に嘘は吐けなかった……こうして居る今だって、ドキドキして、触れたくて、たまらないの」


「凪……」


 きっと今の私は他の人には見せられないような目や表情をしているんだろう。目を合わせている真奈の瞳が揺れている。感情が高ぶって視界がぼやけている気がするけど、もう自分ではわからない。

 そんな私の様子をどう受け取ったのか、目の前の真奈は震える私の両手を掴んで、自白するように語り始める。

 その目はまるで覚悟を決めた戦士のようで。熱っぽい頭でかっこいいなぁなんて考えていて。


「凪、聞いて。あーしね、この数日、ずっと考えていたの。最初は一人で考えたり思い出したりしてたけど、上手く結びつかなくて堂々巡りで答えは出なくて、次の日に由真に頼った。その次の日には須藤や牧原にも話をして、その中で沢山気づかせてもらったことがあったの。全部わかった今は、自分一人で気づけなかったことがめっちゃ悔しいけど、感謝もしてる」


「うん」


「それに、今だって凪に気付かせてもらったこともあるの。凪、聞いて」


「うん……なに?」


 すると真奈は繋いだ右手の指を、絡ませるように握りなおして、


「まず、あーしは凪とずっと一緒に居たいってこと」


「……うん」


 繋いだ手がお互いの体温を交換し合って、


「凪が居てくれることが、あーしの、私の力になってること」


「……うん」


 左手も気づけば指が絡まっていて、


「凪と居た時間が、今までの中で一番好きだったこと」


「……うん」


 熱っぽい視線も、絡まって、


「凪が他の誰かに取られるのが、死ぬほど嫌で我慢できないってこと」


「……う、ん」


 繋いだ手が、熱くて、


「凪と離れ離れになるのは、絶対に嫌ってこと」


「っ……うん」


 でも離れないように、強く握って、


「凪の笑顔が好きってこと」


「……うん」


 真奈も強く、握り返してくれて、


「凪が悲しむのは嫌ってこと」


「……うん」


 気づいたら、お互いが近づいていて、


「私の中で、凪がこんなにも大きな存在になっていたってこと」


「……うん」


 窓の外で照らされ続けている太陽も、騒ぐ蝉の声も、


「凪が、欲しいってこと」


「っ!……う、ん」


 気にならなくなって、真奈しか見えなくなって、


「……凪」


「……うん」


 真剣な顔から、目が離せなくて、


「私は、あーしは、……」


「……」


 言葉を、待って、


「凪のことが、好き」


「っ……真奈っ!!」


 思い切り、抱き着いて、


「真奈、真奈、まなぁ!私も、真奈が好き、大好きなの!」


「凪、なぎ……!あーしも、凪のことが大好き。もう絶対、離さないから!」


 受け止めてくれる真奈が温かくて、耳元で感じる真奈の声も吐息も、全てが愛おしくて、


「うぅ……!!真奈ぁ……!好き……!」


「ありがとう……ごめんね、こんなに待たせちゃって」


 濡れる肩も気にせず、頭を撫でてくれる真奈を離したくなくて、


「いいのっ……!私こそ、あり、がとう……!」


「うん、うん……好き、大好きだよ、凪」


 触れ合う頬の感触が、たまらなくて、


「ね、凪。あーしリベンジしたいことがあるんだけど、いい?」


「……今はやだ。絶対私、酷い顔してるから」


「駄目。今じゃないとしない」


「……わかったよ、なに?」


 こんなに近くで見る真奈の笑顔は、とても眩しくて、


「ん……」


「っ……ん」


 二回目のキスは、とても幸せで、


「……ふふ」


「……えへへ、されちゃった」


「あーだめ、可愛すぎ、凪」


「えへへ~、今頃気づいたの?」


 あなたと過ごす時間はやっぱり幸せで、


「……ね、凪。もう絶対、離さないから。あーしと一緒に、これからもついてきてくれる?」


「……うん。不束者ですが、よろしくお願いします」


 これからも、きっと幸せが溢れていって、


「ありがとう、凪。大好きだよ」


「私も大好き、真奈」


 そして、いつまでも続いていくんだ。




いっけんらくちゃく!

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