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気付いたら周りが百合色になってた  作者: ノリあきさん
橋本さんと秋山さん
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お風呂に入る橋本さんと秋山さん


「ただいまー」


「大丈夫だった?愛美に何かされなかった?」


「な、なにもされてませんよ!」


「あたしのことなんだと思ってるのさー。ただちょっと洗いっこしたりぎゅってしただけだからぁ」


「してるじゃん!愛美?」


「てかあれは誰でもやっちゃうよぉ。ゆまっち可愛すぎるもん」


「わかる。宮永さん超可愛いよね」


「それは……まぁそうなんだけどさ」


「は、恥ずかしい……!」


 牧原と由真が風呂から帰ってきて一気に姦しくなる。由真たちが帰ってきたということは、次はあーしたちの番ということだ。


「行きましょ」


「行こ~」


「あ、場所わかる?案内しようか?」


「大丈夫~。ばっちり場所はリサーチ済だよ~」


「いつの間に。やはり侮れないね秋山さん……」


 着替えを持って、部屋を後にする。喧騒は一瞬で置いて行かれ、虫の声と月や星の光が代わりにあーし達を包む。会話は、なかった。


「ここ……かな」


「へー、完全に温泉とか銭湯みたいな感じじゃん」


 暖簾をくぐって中に入ると、まさにそれ。取り敢えず立ち往生してても仕方ないので、手際よく衣服を脱いでいく。


「……」


「凪?」


 ふと隣に凪が居ないと探してみると、広い脱衣所の隅っこで隠れるように着替えているのを発見した。若干動きが硬く、背中から僅かに見える頬が赤いように感じた。

 ……動きが硬いどころか、全く着替えようとするそぶりがない。背後から近づいて声をかけた。


「凪?そんな隅っこで縮まってどうしたのよ。脱がなきゃ入れないわよ」


 するとこちらを向いたと思ったら慌ててまた背を向けて、


「い、いや私は後から行くよ~」


「……む」


 せっかくまた喋られるようになったのに、やはりどこか余所余所しい。かくなる上は……


「ならあーしが脱がす!」


「えっ!?」


 下着姿で凪に飛びつき、Tシャツを万歳させて脱がす。すると観念したように凪は白旗を上げた。


「わ、わかったから!脱ぐから~!」


「よし」


「あ、あんまり見ないでね……?」


「……」


 普段の余裕のある表情ではなく、焦りと恥ずかしさに染まった凪の顔は新鮮で、少しからかいたくなった。


「どうせこれから一緒に風呂入るんだからさ、別に見ても良くない?」


「よくない~!」


 手をぶんぶん振って拒否する凪に和んで、戻って自分も残りを脱いだ。

 ようやく脱ぎ終わった凪の手を引いて、浴場に赴く。

 

「ほら、行くよ」


「あ……」




「……」


「いい湯だね~」


 浴場は明らかに人の家の規模を超えていて、まさに温泉と言っても過言ではない広さをしている。

 この浸かっている湯舟?も銭湯の大浴場並みの大きさで、とても贅沢。

 そこで気になることと言えば。


「そうね……なんだか凪、遠くない?」


「そ、そうかな~?」


 凪が異様に遠い。確かにこれだけ大きいお風呂ならくっつく必要はないかもしれないけど、だからと言ってここまで遠くに居られるとなんだか悲しくなってくる。


「……」


 なんとなく、無言でざぶざぶと詰め寄る。


「な、なんで寄ってくるのっ」


「寂しいじゃない」


「っ」


「……最近、ずっと寂しかった。ねぇ、なんで凪最近、あーしから離れてたの?」


「……べ、別に~?何と言うか、気分?」


 嘘だ。気分であそこまで暗くなったり、あからさまに避けるようにはきっとならない筈。


「嘘。……あーし、何かした?何か気に障ったことしたなら謝るから。教えて」


「……ううん。真奈は悪いことなんて何もしてないよ。これは私がやりたくてやってることだから」


 俯いて呟く表情は見えないけど、声色は明らかに悲し気で。とてもじゃないけど『やりたくてやってる』ようにはまるで見えない。


「あーしから離れるのがやりたいことって言うなら、もうあーしとは友達で居たくないってこと?」


「違うよっ!……真奈、最近ずっと彼氏づくりに忙しいみたいだったから。私がずっと一緒に居たら自由に動けないでしょ?だから……離れて見守ろうって思ったの」


「……そう」


「ねぇ。いい人、見つかった?」


 暗い声のままそう聞いてくる凪に、自分に呆れたように返す。彼女の表情は、まだ見えない。


「……全然。もう見つからないしフラれるしで、出会い系にも手を出そうとしたわ」


「えっ!?」


 弾かれた様に私を見た凪と目が合う。泣きそうな、真っ青な顔を向けてくる彼女を落ち着かせたくて言葉を続ける。


「そんな顔しないで。その前に牧原達に止められたから」


「そっ……か。……よかった」


「もっと考えろって言われたわ。そんなに焦って恋人探してもいい人なんて見つからないって。佐藤にも似たようなこと言われたっけ」


「……」


 私の話を聞いて安堵したらしい凪が、また俯いた。心配になってまた、声をかける。


「凪?」


「……ねぇ、真奈はなんで急に恋人が欲しいって思ったの?」


 声から暗さは消えたけど、まだ心からの笑顔を見れていない。表情は、見えない。


「そりゃ……夏休みだし、高校生にもなって彼氏無しとか嫌だし……」


 周りに置いて行かれたような気になるし。


「……それだけ?」


「それだけって……」


「ねぇ、真奈……須藤さん達のこと、どう思う?勿論、ゆまちん達のことも」


「どうって、んー……」

 

 それは、女の子同士でってこと?


「別にいいんじゃない?あーしがとやかく言うことじゃないし、幸せそうで羨ましいぐらい。好きになっちゃったんなら貫いて欲しいって言うか」


「……そっか」


「凪……?」


 俯かせていた頭を上げた凪の表情は、どこか決意に満ちていて。目が自然と離せなくて。

 

 だから、ざばっという音と共にその顔が近づいてきて、私の唇に柔らかいものが触れたことに反応できなくて。


「え……?」


「じゃあ、私がこう想ってても、いいよね?」


 あーしの唇から離れた、眉尻を下げて笑う凪に何も言えなくて。


「……え?」


「……ごめん、先上がるね!」


「あっ……ちょ、ちょっと!」


 慌てたように浴場を出ていく凪に手を伸ばすけど、勿論間に合わなくて。


「凪……」


 ただ、凪に触れられた……キスをされた唇をなぞることしかできなかった。




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