お風呂に入る金髪さんと小動物さん
「超良い湯だったよ。日向君のおっぱいもでかいし」
「何言ってるんですか!?」
「それ関係ある?」
戻ってきて開口一番、杏が馬鹿なことを言い放った。日向が呆れている辺り、どうやらかなり仲良くなったみたいで少し嬉しくなる。幼馴染と恋人が仲良くなってくれるのは素直に喜んでいいと思う。
「じゃぁ、次はあたしたちだねーゆまっち」
「あ、はい!」
慌てているゆまっちを連れて、お風呂に向かう。場所が変わっていないなら大丈夫。身体が覚えている。
「あの、場所わかるんですか?」
「昔よく来てたからねー。変わってないならー……ほら、あったぁ……あれー?」
「男湯、女湯って分かれてますね……」
「見た目も相まって、この別荘やっぱり旅館にしか見えないよねー……」
以前は入口なんか一つだけで、当然分かれてもいなかった。まぁ以前がもう数年も前だし、この別荘を遊ばせとく意味ないから旅館として経営してるんだろうなぁ。
ということは今は旅館の貸し切りってことか。しかも只で!
「この分だと中も変わってそうだねぇ。期待しちゃおー」
「どうなってるんだろう……楽しみです!」
にこにこと楽しそうに笑うゆまっちを連れて暖簾をくぐると、やっぱり旅館は大浴場の様相を呈していた。いやー、貸し切りって思うとワクワクするねぇ。
「私、こうやって友達とお風呂入ったことなくて……いやあの!修学旅行とかでは入ったんですけど……」
「わかるわかる。プライベートでってことねー?あたしが初めてで良かったかなぁ?」
「全然そんな!私こそ貧相な身体を見せてしまってすみません……」
ああ、しょぼくれちゃった。もう、ゆまっちは謙虚なのは良いけど自虐まで行くことがよくあって、そこは要矯正だ。せっかくこんなに可愛いのにとても勿体ない。
「もう!ネガティブ禁止ぃー!ゆまっちとっても可愛いんだから、自信もって!……それに、自分のことそんな風に言っちゃったら、ゆまっちのこと好きだって言ってくれてる人はどう思うかなー?」
「あっ……!そ、そうですよね!失礼ですよね!」
「うんうん、良く出来ました。少しずつでいいから、ちゃんと自分のことを好きになってあげてね」
「はい!あの、気づかせてくれてありがとうございます……!」
丁寧に頭を下げてお礼を言うゆまっちの頭を撫でてあげる。こうやって素直にこっちのお話を聞いてくれて、ちゃんと噛み砕いてくれる子は中々居ないと思う。日向め、ほんとにいい子を捕まえたなー?
さて、いつまでも脱衣所で話しているわけにはいかない。私がまず浴場に足を踏み入れて、ゆまっちがちょこちょことそれに続いた。
「うわぁ……!」
「おー、前より大きくなったかも?それに見て、露天もあるよ!」
「す、凄い贅沢です……!」
「ね。早く洗って入っちゃおう?」
「はい!」
二人で並んで、シャワーを浴びる。ふと隣の綺麗な茶髪が気になったので、衝動のままに提案する。
「ねーゆまっち!髪洗いっこしよぉ?」
「洗いっこ……!やってみたいです!私妹によくやってあげてたので、自信ありますよ!」
「おーそれは期待できそうだねー!じゃまずあたしの番ねー」
ゆまっちに後ろを向かせて、優しくお湯をかけて頭皮を揉みこむ。ある程度馴染ませたら、シャンプーで同じようにマッサージ。もみもみ、もみもみ。
「痒いところはございませんかぁ?」
「とってもお上手です~……」
蕩けた幼い声が返事として聞こえてくる。よしよし、上手くいっている。しっかり濯いで、リンスを全体に馴染ませて、またしっかり濯いで、終わり!リンスはしっかり落とさないと、毛穴に詰まってアレなことになるので注意が必要だ。
「はぁい。どうだったー?」
「気持ちよかったですっ!負けないように私も頑張りますね!」
むん!と気合を入れるゆまっちを微笑ましく思いながら、背中を向けて髪を差し出した。
(なーんかゆまっちと接するときは、小っちゃい子を相手にしてる感じになっちゃうんだよねぇ)
懸命に動く私より些か小さい手を頭に感じながらぽわぽわと和んだ。
「せっかくだし、露天風呂の方に行ってみよっか!」
「はい!」
大きな石で囲まれた湯舟に二人並んで浸かり、空を見上げる。此処は街の光があまり届かなくて、普段は見えない星が綺麗に輝いていた。
「はー……生き返るねぇ」
「ですねー……」
今日は割と怒涛の一日過ぎて、思ったよりも疲れがたまっていたらしい。ゆまっちも同じように力を抜いて、石に背中を預けている。
しかし本当にゆまっちはいい子だ。日向とくっついたのは意外と言うか予想もできなかったけど、実際に並んでいるとこれ以上ないくらいにしっくりくる。
「ゆまっちはいい子だよねぇ」
「ふぇっ?と、突然何ですか?」
「んー?ふと思っただけー。にしても日向とくっつくとは思わなかったけどねぇ」
「それは、自分でもまだ信じられないです……」
「あ、勘違いしないでね。ネガティブな意味じゃないから!そもそも接点が出来ないと思ってたし、あの日向がデレデレになってたのも超びっくりしたからぁ」
「デレデレ……ですか?」
「もうすっごいよ。今までの日向知ってたら誰?ってなるからぁ」
「そ、そうなんですね……私と初めて会った時から優しかったけどなぁ……」
日向め、さては一目惚れだな?まぁ仕方ないか。このご時世ゆまっちみたいな純粋無垢な女の子は天然記念物だし。割と可愛いもの好きなあいつのことだ。ゆまっちの純白スマイルに秒殺でもされたんだろう。
「ゆまっちと話すとみんな優しくなっちゃうからねー」
「な、なんでですか!?私何かしましたか?」
慌てふためくゆまっちは可愛い。思わず腕を伸ばして肩を抱いた。そのままぐりぐりと頭を撫でる。
「何にもしてないよー?ゆまっちはそのままで居てねぇ」
「きゃー!えへへっ」
一通り堪能して解放してあげる。
暫く星を一緒に眺めていると、ゆまっちが少しトーンを下げながら話しかけてきた。
「……あの、橋本さんと秋山さんなんですけど」
「あー、後半は普通に遊べてたけど、最初はちょっと気まずそう?だったね。学校でもあんまり一緒に居なくなってたし」
理由は大方予想つくけどね。
「解決、したんでしょうか……最近、秋山さんも元気なくて心配で……」
「んー、あんまり長く話していた感じはないし、解決はまだかなぁ?そんなことより今は楽しもうって、共同戦線はった感じ?」
「じゃ、じゃあ次の番できっと……!」
「解決、するといいねぇ」
「はい……秋山さん、なんだかずっと苦しそうで。夏休みに入る前教室で、橋本さんからはそろそろ離れなきゃみたいなこと言ってて。私、何を言っていいのかわからなくて、力になれなくて、悔しくて……」
「……大丈夫だよ、ゆまっち。あの二人ならきっと」
「そうでしょうか……?」
「うん!あたしの勘は結構当たるんだよー?」
このお風呂二人組分けであの子たちが一緒になったのは僥倖だった。
橋本さんと秋山さんが一緒になったと決まった時、秋山さんが何かを決意したような目をしていたのを思い出す。
「……こりゃ、もしかしたら一騒ぎあるかもねぇ」
「やっぱり大丈夫じゃないんじゃ!?」
あたふたと慌てるゆまっちを宥めながら、お風呂を出て部屋に戻った。




