しょーもないと思ったワタシがしょーもなかった。すごく反省してます。ごめんなさい。
いまこの瞬間ワタシの書いた「切なかったお話。」が日間エッセイランキング1位でございます!
ありがとうございます! まさか一位になるとは思ってもいなかったので躍り上がって喜んでおります! そしてどうして一位になれたのか、まったくわかりません! 拙書の「姫さまですよねっ!?」でも一番人気だったのが後書きという、まったく狙ってない所で人気を博して動揺したのと同じように、今も動揺して混乱しております! プロを名乗るなら狙ったところで感動してもらえるのが当然でしょうに、まったくもって想定外のご反応をいただくので嬉しいながらも凹んでおります! 皆様のご反応がまったく読めません! 地図も読めませんけれど、空気も読めません! でも喜んでおります! ありがとうございます!
「切なかったお話。」をお読みになったあなた様は「ソウは良いヤツらしい」そう思ったかもしれません。でもワタシ、すぐに毒を吐きますから! 今日はぜんぜん良い話じゃないので、ガッカリなさると思います! 毒も吐きます! ゆえに先に謝ります! ごめん!!
では今日の本題です。
少なからず賛同してくださる方がいると信じています! この世の中で一番しょーもない話をするのはオカンです!!
「うちの母親は、しょーもない話なんてしない」そう思った方は、ワタシの人生より2割くらい得しています! よっ!幸せ者っっっ! しょーもない話をしないお母様でうらやましいです!!
私は以前に相談員をしていましたので、職業病がいまだに治りません。どうしても話を途中でさえぎることができないのです。オカンがしょーもない話をしてもけして途中でさえぎらず、熱心に話を聞いてしまうのです。支離滅裂な話を真剣にさいごまで聞いて「やっぱり今日もしょーもなかった……」そう思ってガッカリします。
そもそも話の最初からイラっとします。オカンは半笑いでこう言うのです。
「フフフ、おもしろい話があってね……。ww」
自分で話のハードルを上げるな! 上げたからには爆笑させろ! ぜったい笑わせろよ!! ところが案の定、ぜんぜん面白くない。ヘタしたらどこで笑ったらいいのかさえ不明のまま話が終わります。 うどんがおいしかった? それのどこで笑えばいいんだ?
話している途中で「そういえば、この話の前に……」なんて言い出して、時系列がグチャグチャになるのも気に入らん!! 時系列くらいちゃんと整理してから話せ!! 聞いてるこっちはワケがわからなくなって、何の話か見失うんだ!!
それから主語をきちんと言え! てっきり主語はオカンかと思っていたら、ぜんぜん知らない人だった時のあの脱力感は聞いてるワタシがバカみたいに思えてくるからやめろ!!
そうは言っても産んで育ててくれた母なので感謝しています。しょーもない話を聞いてあげるのも親孝行だと思って拝聴いたします。適切な相槌も忘れません。「それはタイヘンだったねぇ! それでどうなったの?」言ってるワタシが一番タイヘンだと思います。でもこれも親孝行……!!
どうしてこんな優しいことを言えるのかと申しますと、母と会うのは数年に一度だけ、それも数時間だけだからです。いままでの経験から母親と4時間以上いっしょにいるとワタシが発狂してしまうことがわかっているので、けして長時間一緒にいることはしません。だから数年に一度の数時間だけは、はらわたが煮えくり返る思いをしながら顔面に笑顔を張り付けて過ごしています。
注意して長時間にならないようにしていますけれど、それでも滞在時間が長くなる時がある。そういう時は自動モードに切り替わります。母のダラダラとした話に相槌をうちながら他のことを考える。ワタシの耳はパタンと閉じて母の声は聞こえないし、脳みそは遠い世界をさまよっています。
5年ぶりに福岡県へ帰省したその日も母は切り出しました。「マチちゃん、聞いて! すごい話があってね!」だから自分で話のハードルを上げるのはやめろ! 内心そうは思っても笑顔のままで「なぁに?」と聞き返します。
どうやら母が話したいのは、ワタシが知らない母の知り合いのことらしい。なろうの世界の皆さまなら登場人物の説明を多少なりともなさると思います。年代や性別、自分とどういった関わりのある人物なのか、できれば外見や性格も教えてほしいけれど、母にそれを求めるのは高度すぎて無理なので黙って聞きます。でも年代と性別くらいは教えてほしい……。
黙って話を聞いていると、どうやら男性らしい。ところが途中で、その方の夫という人物が出てきた。え? 夫がいるってことは女性? でもさっきはヒゲがボウボウって言ってたけど、なんで? このあたりでメンドクサイと思っていたら母が言い出した。
母:そうそう! この話の前にね!
それを聞いてワタシの耳がパタンと閉じたのがわかった。今の話もワケわからんのに、さらにワケのわからん話を繰り出されても理解できない。そしてすべてを整理して話をまとめてみても、たいした話じゃないに決まっている。ワタシは笑顔で「そうなの? すごいねぇ! それで?」を繰り返す自動相槌マシーンになって、心は遠い世界へさまよい出しました。母の話が終わるまで、新しい小説のネタでも考えよう。
空想の世界をさまよっていたら遠くで母の声が聞こえました。
母:……というわけなの。びっくりしたっちゃ!
ワタシはあわてて相槌をうちます。「それはタイヘンだったねぇ! ビックリするよねぇ!」
母は話を聞いてもらえたので、とっても満足そうです。何度もうなずきながら「タイヘンやったんよ!」そう繰り返します。
母が嬉しそうでワタシも満足です。親孝行、終了! ワタシ、お疲れさまでしたっっっ!!
数日後、ワタシは滋賀県にある自分のボロアパートでお皿を洗っていました。つぎに福岡県へ帰省するのは数年後です。もっと頻繁に帰省して親孝行するべきだとは思うが、ワタシの経済力と忍耐力が足りない。母には申し訳ないがガマンしてもらおう。
そう思いながらお皿を洗っていると、母の話していた単語がフワフワと意識の表面に浮いてきた。あのとき母は、何の話をしていたんだろう? いくつも浮いてくる単語を寄せ集めて、時系列を整理して、話の前後から登場人物の人数と関係を考えます。話の合間にまったく別の話題もされていたので、本筋と関係のない話題は除外する。そしてわかった内容は…………、
母が知人女性(A子さん)の家に用事があって訪問したところ、A子さんの息子が金槌でA子さんを撲殺した直後で、何も知らず家の中へ入ろうとした母に彼は「アンタはずっとオレに親切にしてくれたから、家には入れない」そう意味不明なことを言って家に入れてくれなかったので帰宅した後に事件が発覚して、あのとき母が強引に家へ入っていたら、A子さんの息子は母を撲殺するつもりだったという内容の供述を、逮捕された息子が話していると警察官から母が聞いたっていう話でした!!!!!
母、殺されるところだった!! ぜんぜんしょーもない話じゃなかった!!
あわてて母に電話して確認すると、本当にそうだった! なんでこんな大事な話をあんなにダラダラとワケわからない話にできたんだっ!? 誰がどう話しても一大事の事件やぞっ!?
才能なのか!? 母には大事な話をワケわからなくする才能があるのか!?
そしてここまで書いて、ワタシは恐怖に震えております。もしかしたらワタシは母の才能を引き継いでいるのではなかろうか? ワタシが面白いと思って書いたお話は、まったく意図しないところで読者様にウケているのではなかろうか? そう考えると予想外のランキング一位もうなずける。そしてワタシがウケを狙って当てることは不可能!! だって狙ってないところでウケるのですから!!
うわぁ~! 作家として致命傷やん……! おいしい漬け物を作って出したつもりが「このケーキ、おいしい♪」そう言って誉めてもらってるのと同じやん……。オレ、ぜんぜんダメじゃん……(涙)。
ううぅ……(涙)。立派な和食の料理人になりたかった……。おいしい天ぷらや煮物を作って、皆さまに喜んでほしかった……。
まぁ、いいや!(← あきらめた) 狙いはどうあれ喜んでいただけるなら嬉しいです!! これからも狙ってないところでウケて心の底から動揺して生きてゆきます!! どうぞワタシのビビり具合をお楽しみくださいませ♪♪
それではどうぞ良い一日を~♪♪