表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/100

16. 眼鏡男子参上(クララの視点)

 噂の王太子殿下が学園に戻ってくる。その姿を一目見ようと、生徒たちが正門に集まっていた。その横を、ヘザーはサクサクと通り過ぎていく。


「すごいわね。これじゃ殿下も落ち着かないでしょ。気の毒だわ」

「どんな人だと思う?噂では眉目秀麗って」

「同じ学園にいるんだし、どこかで会う機会あるわよ」


 ヘザーが興味なさそうに言う。そのときキャーっという歓声が響いた。殿下が来たらしい。


「ほら、ローランドよ。大人しくしていると思ったら、殿下のお供だったのね」


 ヘザーは昔から、ローランドを見つけるのが得意だった。なぜって天敵だから……らしい。ローランドを探してみたけれど、キラキラ集団の中に紛れてなかなか見つけられない。


「ローランドって、特別クラスなの?」

「次期宰相の最有力候補だからね。宰相は世襲じゃないけど、筆頭公爵家なんだから側近確実よ。昔からよく王宮に行ってたし、殿下のご学友枠なんじゃない?」

「そうなんだ。よく知ってるね」

「情報は武器よ。ペンは剣より強いの」

「じゃあ、あのグループはみんな高位の貴族令息なのね」


 集団の最後尾にカイルを見つけた。この国には珍しい色の髪と瞳を持つ彼は、きっとどこかの国の高貴な生まれ。


「そうでもないわよ。殿下は実力主義みたい。騎士には伯爵家や子爵家を取り立てているって」

「ふうん。ねえ、殿下って、どの人だか分かる?」


 キラキラ集団は十五人くらい。全員背が高くて見栄えがいい。ローランドすら埋もれるくらいに。


「殿下は、金髪で青い目だったと思うわ。あ、あれじゃない?眼鏡をかけている人」


 眼鏡男子。真面目でいかにも王族って感じ。そういえば、殿下には浮いた噂が全くない。たしか、外国の王女様と婚約間近という話だったっけ。


 そう思って眼鏡男子様に目を向けると、すぐ横にローランドがいた。さすが筆頭公爵家令息。王太子殿下と肩を並べている。親友?仲睦まじい恋人みたいな感じ。

 カイルはあの二人を見て、嫉妬してたりするのかな。ローランドってば、カイルを妬かせるために、わざと殿下にベタベタしているんじゃ? 男子も女子も、やることはあんまり変わらないんだ。


 そのとき、殿下がこっちを見て、にっこりと微笑んだ。


「きゃあ!殿下が笑ってくださったわ!」


 私のすぐ隣で、公爵家の令嬢が声を上げた。その声が聞こえたのか、ローランドは殿下に何かを告げると、こっちに向かって走ってきた。周囲の令嬢がざわつき始める。これはまずい。


「殿下の見物?それとも、俺を見てたのか?」


 ローランドがそう言うと同時に、ヘザーが私との間に入った。私を好奇の目からかばってくれている。


「まさか。どっちもないわね。興味ないもの」

「お前、俺や殿下を捕まえて興味ないって」

「俺様男子は好みじゃないの。殿下の性格は知らないけど、知りたいとも思わない」

「手厳しいなあ。俺も可愛げのない女子には、全く興味ないけどな」


 ローランドとヘザーは、何かにつけて張り合っているところがある。もちろん、たいていはローランドが負けるけど。


「クララ、もう大丈夫か?」

「ああ、うん。平気……」


 どうしよう。ピアノ室でのことを思い出すと、なんだか火照ってしまう。ハニー・トラップの効果絶大!いくら女に興味ないとは言っても、ローランドは男子。キス攻撃なんて反則だ。


「ヘザーも世話になったな」

「ローランド、あんた空気読みなよ。私たち浮いてるんだけど」

「うるさいな。分かってるよ」


 ヘザーに怒られて、ローランドはちょっとバツが悪そうだった。でも、爽やかな笑顔を向けられると、ついつい許してしまうのは幼馴染だから。


「私も、分かってるから」


 なにげなくカイルのほうを見ると、目が合ってしまった。こっちを見てた!ポーカーフェイスだけど、やっぱりカイルはローランドが気になるんだ。

 俺様なローランドとツンデレのカイル!やだ、二人のカップリングを想像すると、なんか照れる。顔が赤くなってしまう。


 次の瞬間、急に目の前が暗くなった。ローランドの腕が私の頭を抱えている。これは、もしやラリアート!いつもは、護身術の手合わせでしか技はかけてこないのに、なんでここで?


 ローランドのフェイント攻撃に驚いて、周囲から女子たちから悲鳴が上がった。大乱闘になったりしないから別に大丈夫なんだけど、なんでこのタイミングで技をかけるかな。ローランドって鈍感?


「見るなよ」


 カイルを見ないように、目潰し攻撃を仕掛けた? カイルに近づいても話してもいないのに、ローランドの心が狭すぎる!


「朝から女といちゃつくな。向こうに戻れ」


 すぐ近くでカイルの声がした。あからさまに女子を敵認定して、わざわざローランドを呼びに来た!ローランドは私をサッと離すと、カイルとじゃれあう。これが痴話げんかっていうもの?


「クララ、俺の言うこと守れよ」


 ローランドは一方的にそう言い残して、カイルの肘を引っ張って一緒に駆け出した。


 ここまで私をライバル視するなんて、ローランドってちっちゃい男!でも、ちょっとかわいいか。爽やかイケメンが独占欲を爆発させているって、素敵かもしれない。


「……なんか朝から、イイモノ見たねえ」


 私がそう言うと、ヘザーは大きなため息をついた。


「あんた、何したのよ?」

「え、どうかしたの?」

「カイル・アンダーソンと知り合いなの?」

「うん、話したでしょ。市場でゴロツキを追い払ってくれた人よ。お姉様方の呼び出しのときも助けてくれて」

「え?何、その呼び出しって」


 そういえば、その話はしてなかった。事情を説明すると、ヘザーはローランドのせいだと憤慨した。


「ろくなことしないわね、ローランド。私までいろいろ質問責めにされるのよ。さらに要注意だわ」


 ヘザーはその後、あれこれと今後の対策を練ってくれたのだった。親友って、本当にありがたい。

『鈍感男爵令嬢クララと運命の恋人 ~ 選ばれし者たちの愛の試練~』の「10. 眼鏡男子参上」とほぼ同じ内容です♪

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
別ルートにご興味があれば、ぜひこちらも読んでください!

『アレク・ルート』

『鈍感男爵令嬢クララと運命の恋人 ~ 選ばれし者たちの愛の試練~』

『セシル・ルート』

『王女セシルの宿命と恋の行方 ~ 無償の愛が世界を救う礎となるまで~』
― 新着の感想 ―
[一言] >親友?仲睦まじい恋人みたいな感じ。  妙なフィルターが入ってるなぁ(^^;)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ