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3話 信じてくれる人がいる

 第一章 4つの大陸に選ばれた者 

 3話 信じてくれる人がいる


「次の一撃で仕留める」


 俺はそう呟いた。

 そして、《古炎舞斬》の三撃目をグルネスの左肩から俺の右足へ斜めに刀を振り下ろす。


 しかしこれも避けられてしまった。俺はちっと舌打ちをする。


 《古炎舞斬》は四連撃。最後の一撃を避けられれば、大技を出した反動で体が一秒ほど硬直してしまう。その隙にグルネスは俺の首を狙ってくるだろう。

 どうする…………この一撃が避けられれば俺は死確定だ。

 俺がグルネスを倒す方法を考えていると、グルネスはニヤリと笑い黒い猛毒の塊である黒毒を投げた

「!!」

 しまった。戦闘中に何を悩んでいるんだ。反撃されてしまったじゃないか!

 黒毒を切った方がいいか、それとも、うまく避けられれば………いや、この間合いじゃとても間に合わない。



 ………いっそ黒毒に飛び込んでしまおうか。



 毒と言うものは、浴びてすぐに毒が回り体が痺れる訳じゃない。ただ猛毒は痺れる前に激痛に襲われる。この激痛を我慢できる自信はないが、それでもチャンスはある。それに、俺のこの行動でグルネスが驚いてくれれば隙が生まれる。その瞬間に首を斬る。

 よし、これでいこう。


 俺は前に前進しながら刀に魔力を込め、黒毒に目もくれず刀を振り上げた。


「いっ!!」


 黒毒は、俺の腹部に当たった。腹に、勢いよく殴られたような熱い激痛がはしる。

 俺はその激痛に小さな悲鳴をあげるが歯を食い縛りこらえる。

 そして、速度を弱めず4連撃を打つため刀を振り下げた。


「!?!………頭でもおかしくなったか!?………いや、それでいい……。そのまま毒に呑み込まれるがいい…………」


「毒に…………呑み込まれる前に……お前を斬る!!」


 ほんの1秒の瞬間に俺とグルネスは思考を巡らせる。多分グルネスは、どうすればこの刀を急所からはずせるか。そして俺は、この一振りで本当にグルネスは死んでくれるだろうか、大人しく斬られてくれるだろうか。


 俺の刀が、グルネスの首を斬りかけたその時………!

「ぐぉぁああぁ!!」


 キシッ


「!!」


 グルネスが俺の刀を素手で掴んだ!?

 まさか刀を素手で折ろうとしているのでは…!?

 やばいやばい!刀を折られればグルネスの首をとれない!

 なんとかならないのか?!

 ここで引いたら間違いなく毒の感覚で身体中痺れて動けなくなるだろう。そうなれば他の町に村人たちを転移させた意味がない!

 ああ、どうすれば、どうしよう………!


 このままじゃ死ぬ………

 その時、たくさんの人の声が頭のなかでながれた。


「お前のような化け物を育てると決意した覚えはないわ!」


「どうせ自分の身は自分で守れるんだろう?」


「なぜお前のような者がこの町にいる。この疫病神め。」


 みんな俺のことを避けている。こんな戦いのときに悲しい記憶を思い出してしまった…………。


 そう、僕は避けられていたのだ。強すぎる力を、普通の人では制御できない力を、俺はもっていた。

 その力は俺を弟子にしてくれた恩人でもある師匠の力だった。

 師匠は死ぬ寸前に眼球と力を俺に託した。師匠の眼球は、とても珍しく黄金色に光っていた。

 理由は、師匠の目には強い魔力が宿っており師匠は死ぬ間際にこう言った。


「この力をあなたに授けます。きっといつかあなたは報われる、だから誰にでも優しく思いやりの心を忘れないで。」


 優しさ…………思いやりの心……

 たしかに俺は殆どの人に避けられていた。だが、全員に避けられていたわけでわない。村長の奥さんが俺を逃がしてくれたこともあったし、優しい無知なおばぁさんが、俺に林檎をわけてくれたことだってあった。


 ……………俺を、まだ信じてくている人はいるのかもしれない。なら、最後まで諦めずに戦う価値はある!


「お前に…………この村を、滅ぼさせない!」


 俺は、残りの魔力をすべて刀に流し刀を強靭化させた。

 すると……


「!?指が…………私の指を切っただと?…………」


 刀が強靭化したことで切れ味がグンとあがり、刀を折ろうとしていたグルネスの指が一瞬で切れた。

 そして、グルネスの首に刀が触れ、斬り込む。


「まだそこまで力が残っていたとは………だが、もうすぐだな……。」


「ごほっ」


 腹筋の辺りが痺れてきた…………毒が全身に回り始めてるんだ。急がないと………そうか!

 俺は感覚が麻痺し始めている左手を動かし、ポケットに入っていた瓶を取り出した。これは、俺が急いで洞窟に行ってきた時に手に入れた液体が入った瓶だ。中には…………


「!!やめろ!その瓶を私に近づけるな!もう一つ黒毒をぶつけるぞ!!」


「……や……やれるものなら…やってみろ!……ごふっ………」


 口から血があふれでてきた。俺の身体もそろそろ限界だ……。

 この瓶のなかの液体を使っても、グルネスが死ななかった場合、俺の負けになる。これがいまの俺にとっての、最後の切り札!

 片手で瓶のふたを開け、中身の液体を刀にぶっかける。そのうちの少しがグルネスの身体にかかってしまったようで、グルネスは悲鳴をあげた。

 瓶に入っていた液体の正体は、グルネスと戦う前に錬金術で付与したテラリスの花の蜜。

 これは魔族や魔物に効果を発揮する蜜で、呪いなども治せる貴重な花だ。

 浄化の蜜が刃に染み込むと、さらにグルネスの首に刀が斬り込まれる。


「ぐぉああああぁぁ」


 浄化の蜜に触れたことでグルネスの首が、ボロボロと崩れ始めている。グルネスは必死にあがき、切り落とされた指を再生した。


 もう再生したのか?!魔力を込めた刃で切ったとしてもあの速度の再生。だが、浄化の蜜が染み込んだ刃は、切れ味が格段にあがり魔族を斬ったならそいつの身体が崩れてゆく。

 要するに、テラリスの花は魔族や魔物に一番恐れられている花だった。


 再生した指で刀を折ろうとグルネスが刀を握ったが、その途端に浄化の蜜の効果でたちまち指が崩れていった。


「ぐぁあああぁぁ!たかが一人の少年に私がやられてたまるかああぁ!!」


「俺は………みんなの……俺を信じてくれてる人の……期待に応えるんだ!!」


 師匠!俺に力をかしてください!!師匠に託されたこの目、使わせていただきます!


 俺は心のなかで師匠に叫び、少しの魔力を自分の目にそそいだ。

 すると、俺の師匠から託された左目が光だし、底を尽きようとしていた魔力があふれでてきた。その魔力をまた、刀に注ぎ最大まで強靭化させる。


「うぉおおああぁぁ!!斬れろーー!!」


「………せめて、相討ちで貴様も消えろおおぉ!!」


 グルネスは魔力を暴走させ黒毒を俺に浴びせた。

 俺が毒の激痛に襲われると同時にグルネスの首が斬れた。そして、浄化の蜜の効果でグルネスの身体はボロボロと崩れていった………。



 俺は、もう空中で浮く魔力すらなく背中から重力に引っ張られた。

 ふと、ボヤけた視界を村の入り口に向けると、村長や住民達が戻ってきた。


「おい!あそこに人が落ちてきてるぞ!?」


 村長らが俺の真下に走ってきた。


「!!あいつは………!」


 村長は俺のことをみて、目を見開く。

 そりゃあ、驚くだろうな。だって自分がしりぞけていた疫病神(少年)がグルネスを倒したなんて、憎たらしいだろうに。


 きっと俺は、死ぬ寸前でも村長らに罵倒されるのかな…………もしそうなら、聞く前に死にたい……。

 だげど僕には、魔法を行使することも腕を動かすことも出来ない。

 毒の影響で、目のピントもあわないし血の循環がおかしくなっていて、吐き気とめまいに襲われる。

 ………………吐き気がするというか、もう吐血してしまっているが………。


 あ、でも、地面に落ちたら村長らの声は聞こえないかもしれない。だって、この弱った身体が重力に引っ張られ地面に叩きつけられるからだ。


 よかった、村長らの罵倒は聞かなくていいみたいだ。

 俺は、グルネスという一人?一匹の魔王を倒せた達成感と、もうこんな退屈な生活とはおさらばてきるという気持ちでいっぱいだった。

 アルおばー様の期待にも応えられたし、村の住民の半分は助けられた。


 目を閉じ、自分の理想の親を想像してみる。

 太陽のように明るい笑顔のお母さん。

 海のように視野が広く、何があっても自分を受け入れてくれそうな広い心をもつ父。

 あとは………厳しいけど優しいところもちゃんとあるお姉ちゃんがほしかったなぁ。

 でも、俺には贅沢すぎるかなぁ。親と一緒に過ごすことが殆んどなかった俺にとって家族にはどうやって接したらいいかわからないんだよな………。

 それに、この願いはもう叶わない。もうすぐ地面に叩きつけられて死ぬんだから。


 最後に楽しかったことだけを思い出しながら、幸せな気持ちで意識を途切れさせようとする。

 なにも考えずになにも感じずに、痛みも悲しみも全て忘れて無心になる…………。


 ふと、村長らの騒がしい声が聞こえる。ガヤガヤと聞こえるくらい近づいてきてるみたいだ。


 でも、耳は傾けない。罵倒される言葉、声は聞きたくないから。

 しかし耳を塞ぐことは出来ないので少しだけ聞こえてくる…………


「ヤエコは俺の前に回ってくれ。コウスケは俺の腕のしたに手を重ねてくれ。」


「わかったわ。」


「了解しました。」


「皆も手伝ってくれ!アルメラ様に期待を寄せられていた者は、きっとこの少年だ!」


(!!罵倒……じゃない………俺を、助けようと…してくれてるのか……?)


 涙が溢れてくる。目元がジンジンと熱をもち顔が歪む。


 どうやら地面に叩きつけられて死ぬことはなさそうだ。その代わり、毒で死んでしまうけど。


 それでも、すぐに死んでしまうとしても、俺にとってはとても嬉しいことだった。

 俺のために、みんなが必死になってくれてるんだから。

 師匠は言ってた、最後までみんなを信じ努力すれば報われると。

 きっと俺は報われたんだ。


 もう未練はない。あとは天国で休んでいたい……。



 ドスッ


 俺は落ちた振動で少し吐血してしまった。

 ……………死んで…ない……

 回りを見ると人影が沢山ある。みんなが俺を支えてくれたんだ……。

「今まで………本当にすまなかった。自分を嫌ってる人たちのために、こんなにも尽くしてくれて……」


「「ありがとう」」


(!!……うれ…しい……………)

 ポロポロと涙がこぼれ落ち、俺はふにゃっと笑う。


「……ど……ういた…しまして……」


 最後にそう呟き、俺は毒の影響で意識が途切れた。


諸事情のため制作できない期間があり、一ヶ月後くらいに投稿いたします。

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