第9話
文字数が少なめですが、本日3度目なので許してください。
第9話
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異世界生活147日目、朝。この日、一人の男が、独立交易都市ストリピタルを旅立った。都市総督府や対外情報総局、冒険者ギルド、商業ギルド、マルーダ商会長など147日間の異世界生活で作り上げた知人や帝国による侵略を知る人間たちの見送りを受けて、美しいヤマハブルーからオリーブドラブに塗り替えられたヤマハDT200WRを先頭に多数の荷物を積載した無人装備運搬ドローン30両のコンボイが一般市民の目に触れられるのを避けるために朝日が昇らぬ内に出撃した。
見送る者たちは、オートバイと無人装備運搬ドローンを見る。日本人からしたら、インターネットでよく見た蹴られても転ぼないロボットを元ネタに持つもので、それがよりスマートになってデータ化されたゲーム上の架空兵器の一つだ。日本人なら『どうせ架空兵器を作るならもうちょっとカッコよくしろよ』それだけ言って興味を失うだろう。だが、動画投稿サイト以前に最速の情報発信手段が電信によく似た特性の魔信という文明の人間には異様に映る。
8本の脚は人工筋肉であり、フレーバーテキストによるとクジラなどの大型海洋哺乳類の筋肉を基に人工培養したものだ。機体そのものはその全体サイズに比べれ極めて軽量で、都合のいいことにタフソーラーとバイオマス転換炉が積載されている。これによって、本物のロバの様に草木を食べ、それを内部のバイオマス転換炉が分解しエネルギーに変換する。そして、そのエネルギーが人工筋肉にいきわたり、それによって驚異的な活動時間と同じく驚異的な積載能力も持つにいたる。その積載能力は8トンだ。武器弾薬食糧医薬品野営道具その他。様々な物資が積載された様は、砂漠かけるラクダのキャラバンやインドの通勤電車のようだ。
その異様な姿は伝説上の魔物カタクラフトなのか、神よりもたらされたものなのか、判断に困る。願わくば、あれが勝利への第一歩となり、生きて再び帝国に支配されぬ自由なこの街に帰ってきてほしい。それが見送った者たちの思いであった。
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見送る者たちの思いなどつゆ知らず、隼人はその日のうちに西に80キロ移動した地点にOPを設営した。時代を考えれば大軍の場合、一日の行軍距離は平均8キロ。12キロもあれば迅速と呼ばれる時代。4キロでも『あぁ、指揮官の質が低いなりに頑張ってるんじゃね』と呼ばれるレベル。まぁ、平たく言えば及第点レベルだ。20キロもあれば神速と呼ばれるレベルだ。ルイ=ニコラ・ダヴ―率いるフランス大陸軍第3軍団は1日65キロも前進したぞ。と言う突込みはなしの方向で。大体インパール作戦の日本軍ですら1日40キロしか前進できていないのだ。(徒歩で山登りながら40キロも移動できる方がおかしいというのは考慮しないこととする)
そして、ストリピタル対外情報総局の分析によると一日の行軍速度は11㎞だという。明日の昼前に目の前を通過するはずだ。
簡単な偽装を行ったら、周辺を双眼鏡で観察してレンジカードを作る。それが終わったら本格的な擬装を行い。ヘロンを離陸させるのに必要な滑走路を造るためにブルドーザーを召喚し、野戦飛行場を作り、ヘロンの準備を行う。
準備は完了したが、まだ飛ばさない。と言うのも航続時間自体は40時間あるのだけど今飛ばしても大半の飛行時間が無駄になってしまうためだ。代わりにハンドローンチ式で対した手間でもないRQ-11Hハイパーレイブン5機を自動ローテート監視モードで監視させる。
最後に、OP周辺にクレイモア対人地雷を多数設置して夕飯を食べて早めに寝る事にした。