第8話
第8話
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異世界生活125日目昼前。隼人はある商店に向かった。2週間ほど前に、クリーチャーの大群に襲われ、モンスタープレイヤーキラー状態になっていたところをTNTでその大群を丸ごと発破して退治したことから交友を持った商人が商会長をしている商店だ。『何かあったら私の店に来てください。お礼代わりにいろいろ割引しますから』そう言われたのだから何か大きな買い物をするときはここにしようと思っていたのだ。
「こんにちは~」
「いらっしゃいませ、ハヤトさん」
商会長と面識を持ったのは2週間前であるが、それ以前から石鹸などの生活必需品を購入していたため従業員とは顔見知りだ。向こうからすればお得意様に過ぎないのだろうが、2週間前の一件で、さらにランクアップしたのか露骨に割引してくるようになった。
「商会長がハヤトさんが来たらお通ししろ。と言っているのですがよろしいですか?」
「そうなの? いいよ。それと実は俺も買いたいものがあるからそれもついでに交渉させてくれって伝えてくれます?」
「はい。こころえました。此方にどうぞ」
顔なじみの従業員に連れられて店の奥の応接室に連れられ待つこと数分、出されたお茶を半分ほど飲んだ時点で件の商会長が現れた。
「ハヤトさん。呼び出してすみません」
「マルーダさん。ここに来たのは私の意思ですから気にしないでください」
「そうですか。それは有難い」
いつものように頭を下げい、お互いに席に座る。この2週間で何度もやった通過儀礼の様なものだ。
「今日のお茶も気に入ってもらえましたかな? 新茶の柔らかい部分だけを、高度に温度管理された高圧の蒸気でさっと蒸した一品です。入手するのに苦労しました」
「なるほど、それは美味いわけだ。私のような貧乏人だと高いお茶を飲もう。何て言う発想がないのでここ以外だと安物ばかりで自分の舌の安っぽさを痛感するばかりですよ」
お茶に関してはペットボトルが主であったが、俺も日本人。食べることと遊ぶことには外国人がドン引きするほどのめり込む民族だ。焼き鳥、串カツ、カレーパン、ホットドッグ、フライドポテト、唐揚げ、竜田揚げ、フライ、焼きそばなどなど、屋台メニューを結構強気な価格設定でレシピと研究に必要な調味料をそれなりの分量をセットで販売したのだが、向こうが勝手に値を吊り上げて購入していった。向こうは商売のタネが手に入りハッピー。俺も予想以上の効果でレシピが売れて、醤油などのこの世界では入手できない調味料が定期的に売れて、さらにライセンス料までもらえて超ラッキー、マルーダ商会の屋台の近くの屋台も相乗効果を狙える商品を出して売り上げアップでハッピー、行政関係者も税収が増えてハッピーとみんなが得する良い状態だった。
「流石に、嫌味に聞こえてしまいますなぁ。私共が屋台で販売している新料理の売り上げを知っていますか? 毎日金貨6枚です。他の屋台だと銀貨18枚程度なのですがね。もはや異次元ですよ」
「それはマルーダさんの経営手腕によるものじゃないですか?」
「いえいえ。それほどでもありませんよ。レシピを考えたのはハヤトさんではないですか。確かに食材はそれほど高くないですが、あのような組み合わせがあるなんて!? と料理人たちが感動のあまり涙を流していました」
まぁ、ほめ殺し合戦もそろそろ終わりにして、そろそろ本題に入るとしようか。色々と入用のモノを調達しに来た。
ダン
白金貨50枚(金貨5000枚相当)が入っている麻袋をテーブルの上に実体化させ、中身を見せながら言う。
「この白金貨50枚で買えるだけの無属性魔石を集めてくれませんか? それと魔物素材の買取もお願いします。オークが2000体とオーガ400体、ミノタウロス50体ほど」
「分かりました。魔物素材の売却益はどうしますか?」
「魔石の購入に充ててください」
「なるほど。となりますと、オークの単価が金貨33枚、オーガだと57枚、ミノタウロスは103枚なので、金貨98950枚分の無属性魔石ですね。分かりました出来るだけ早く集めましょう」
「いや、ちょっとまってくれ。モノを見ないで価格を決めていいのか?」
「大丈夫ですよ。ハヤトさんを信用しておりますので。それにハヤトさんの持ち込み品は穴が開いている以外はきれいなの最上級品として高値で売れるのです。だからこれでも大分ぼっている方ですよ」
なぜこんなに大量の魔石を必要としているかだが、俺の力はFPSのゲームシステムを移植したものだ。当然、武器弾薬を生み出すためにはゲーム内通貨と言うモノが必要だ。その入手方法は『累計戦闘時間10分ごとに一定数支給(その量はレベル依存で変化)』『課金及びリアルマネートレードによる100$=20000課金通貨=100000クレジット』『クエスト報酬』『クリスタル資源の売却』の4種類であり、クリスタル資源と言うのはゲーム内独自の天然資源で、この世界では無属性魔石がそれに該当するようだった。
「それで、私の要件なのですが、ライセンス料の支払いの件です。合計で金貨4600枚となります。いつも通り、無属性魔石にしますか?」
「はい、それでお願いします」
「では、金貨4600枚分の無属性魔石と、在庫の無属性魔石をお渡しします。ただ、荷馬車10両分になってしまいますが持ち帰れますか?」
「大丈夫ですよ。アイテムボックスがあるので」
ということで、17日で金貨98950枚分の大量の無属性魔石。……クレジットを手に入れた。その総数たるや、戦車や自走砲、ヘリコプターを含む高度に機械化された機械化歩兵戦闘群を丸々一つ作れる程度だ。一人で、ちまちまと漸減する程度ならどんなに派手に使ったとしても底が見えることは無いだろう。早速いろいろなものを買う。
M202ロケットランチャー×20機、AT-8CS×2000本、Mk.19装備のセントリーガン×40機、IAI(産業用ロボットメーカーにあらず)スーパーヘロン、バレットM82A1、弾薬多数、各種装備品、無人装備輸送ロボット多数を購入した。
金貨2万枚のクレジットを一気に消費した。戦場でインベントリーから出し入れするためには大量のクレジットが必要になるため温存することになったが、1個人が金貨2万枚分のクレジットを消費などしたらゲーム時代ではVRMMO専門のまとめサイトで取り上げられているだろう。つまりそれだけ大きい取引なのだ。