第4話
第4話
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「装備の準備はできたが、情報がまだだったな」
一人暮らしをすると独り言が増えるという。そして、隼人も例外ではなかった。脱出した後に、天井裏とかに監視がいるかもしれないのに何やってたんだ俺……。となり独り言が減るのだが今は多かった。
ゲームオリジナルの|電子光学式照準システム《EOTS》…F-35の航空機搭載電子装備である。を小型化したモノを搭載し、タフソーラーとリチウムイオン電池、高性能電動モーターを搭載したドローン、RQ-11Hハイパーレイブンをベランダ(と言うよりもテラスと言いたくなるほどの豪華さだが)からハンドロンチ、平たく言えば手で投げた。
用が済んだらすぐに部屋に戻る。パナソニックが世界に誇る如何なる極限状態でも壊れない装甲車のように堅牢なラップトップパソコン、タフブックCF-20を開き、無線機と有線接続して、ハイパーレイブン操作用のランチャーを起動している間に、ゲームパッドを接続する。今時のドローンや潜望鏡はゲームパッドで操作するのだ。理由は、『操作に特別な訓練を要さないため』である。これは、入隊前に家庭用ゲーム機をプレイしたことがある兵士が多数存在するためだ。
若干異なるが、エアライン各社でコックピットが毎回フルモデルチェンジされその都度免許の取り直しを要求されるボーイング機よりも、可能な限りコックピットを流用して、最低でも自動車で言う所の限定解除レベルの互換性を有しているエアバス機を好む傾向があるのと似ている。
そうこうしている間にランチャーの起動が終了し、アプリケーションを起動する。起動した画面はJAS-39E(スウェーデン空軍の主力戦闘機)でおなじみのスナイパーXRポッド(目標指示ポッド)の白黒画像と同じものだ。起動したアプリケーションを操作して、ドローンを標準の自動旋回待機モードからマニュアル操縦モードに移行して、門衛や警備室、兵舎などの兵士が多数いそうな場所を重点的に探す。そして、実際に発見した兵士たちにマーカーを設置していく。そうすることで設置後12時間に限り、マップ上に動向が表示されるようになる。粗方設置し終わったら上昇させてから自動旋回待機モードに戻して、周辺警戒をさせる。ついでに自動追従モードに切り替えられるように無線機の多機能ボタンにショートカット登録しておく。
しかし、この自動旋回待機モード。GPS信号を受信して自己位置を評定しているとフレーバーテキストに書いてあったが、GPSどころか機械動力の航空機すらなさそうなこの世界でどうやって受信しているのだろうか?
情報を手に入れる。と言う最後から2番目の準備を終えた俺は、最後の準備をする。すなわち迷彩だ。このゲームの迷彩は某有名ステルスアクションの第3作と同じシステムで、同じ装備でもマルチカムと、トロピックとブラックとAOR1とAOR2と……が個別に存在するのではなく、主にアイテムID整理のために購入時はコヨーテブラウンであり、そこに有料のダウンロードコンテンツ、(50クレジット程度買えるのだが…)で追加される迷彩。例えばマルチカムセットであれば、通常のモノとブラック、トロピックエトセトラエトセトラ。と言う風に、陸自迷彩セットであれば1型、2型、3型、砂漠用、冬季用などがそれぞれ追加され、装備画面のカモフラージュタグで使いたい迷彩を全体または個別に適応するシステムとなっている。
なお、フェイスペイントはご自分でやって下さいと言わんばかりにドーランが無料配布されるにとどまる。さらに補足すると、VRゲームであるためドーランは汗(もっともシステムが病院などで収集した心拍数などのビッグデータからこういう行動したらこのぐらい発汗するという分析を行い、アバターの表層に水滴状のポリゴンを生成して、“汗”と言うネームタグを付与しているにすぎないのだが)で落ちていくのだが、肝心の化粧落としが単品では実装されていないため、完全趣味アイテムで無駄に高額な変装セットを購入するしかない。
この変装セットだが、英国秘密情報部のエージェントが使いそうな特殊マスク作成セットが1つずつ入っているのだがこれ単体で5万ゴルドぐらいする。需要があるにはあるためオークションに出せばとりあえず4万ゴルドぐらいで売れるのだが、化粧落としを買うためだけにこういう無駄が発生するのはどうかと思う。
RQ-11Hハイパーレイブンのタフソーラーですが、月明かりでも発電できるので故障するまで飛び続けることも可能です。まぁ、その前にゲームシステム上の制限時間が来る設定ですが