第3話
なぜこんなに遅かったのかって? 会社に呼び出されたからだよ。
第3話
……………
「もし、誘拐被害にあったらなるべく早く脱出しろ」
これは民間防衛の分野で一番言われる言葉だ。その理由は、時間がたてばたつほど、より強固な監獄に移動させられ、脱出に役立つアイテムも発見され没収されてしまうからだ。
「ここは時機を見て逃げ出そう」
などと考えて無駄に時間を浪費した結果、より脱出が困難になってはかなわない。つまり可能ならば今すぐにでも脱出すべきなのだ。今持っているアイテムを探してみると、知的財産権対策なのか実在するものと微妙に違うピクセル迷彩の戦闘服上下と上腕部のファスナーポケットにCATが1本づつ2本、左上腕部のペンホルダーにフ米軍でよく使用されているマーカーペンが1本、カーゴパンツの右ポケットにはS&W CK5TBSコンバットナイフ、インナーベルトにBDUベルト…ベルトループにヘアピンが刺さっている。……社会の窓の裏側にカミソリの刃が隠してある細かいな。
BDUベルトの上に全体重をかけてもバックルが外れることは無いとされる軍隊でよく使用される金属製バックル(コブラバックル)のCQB/リガーベルトが巻かれていて、時計回りにドロップレッグポジションの6004SLSレッグホルスター、CAT(コンバットアプリケーションターニケット)止血帯キャリア、メディカルポーチ、ダンプポーチ、AWSGen3 Uni-Magハンドガンマグポーチが3つ。それぞれ、パワータックのフラッシュライトE9と言うハンドライトとレザーマンMUTというマルチプライヤー、グロック19用マガジンが入っている。あと、ガラパニアのベルトリテンショナー(ベルトのずり上がりを防止するモノ)がついている。
腕にはNATOストラップに換装されたGWG-1000-1AJFとタクティカルアドミンアームバンドが。アドミンアームバンド(腕に巻く書類ケースのようなモノ)にはガーミン701GPSデバイスが入っている。グローブは、オークリーのファクトリーコンバットグローブ。フットギアはメリルのMOA82 MID GORE-TEXで靴紐の上部をITWのファステックスを噛ませることで脱ぎ履きしやすくしている。
…以上。あとは、FPSのショップ機能で様々なものが使える。元なっているゲームが、FPSを名乗っているが、RPG要素が強いゲームであるため、人間が文化的な生活を送るうえで必要なものは大概手に入る。このゲームのショップシステムは非課金ですべてのアイテムが購入だが、課金アイテムや超高レアガチャアイテム、イベント報酬、ランキング戦報酬等のアイテムはぼったくりレートだったりする。例えば、通常のベレッタM9(前任の米軍制式拳銃)はチュートリアルクリア報酬であり耐久値がゼロになったら無料で官給拳銃という全く同スペックの拳銃がアイテムボックスに放り込まれるのに対して、ベレッタM9A2ゴールドマッチモデルというイベント報酬は250万クレジットだ。250万クレジットと言えば、戦車1個中隊分だ。ぼったくりでもいいというのであれば可能だ。
だが、問題は敵対MOBと交戦してから30分が経過していない。或いは500メートル以上離れていない。という条件に引っかかった場合は通常価格の100倍に吊り上がる。さらに、インベントリーからアイテムを取り出すのに標準購入価格の5%の費用が掛かるというぼったくりぶりだ。これはデザイナーズノートによれば『極限状態時に容易に必要アイテムを購入して簡単に危機から脱されたら面白くない』というゲームデザイナーの考えがあるらしい。
ただ、今はその制限がかかっていない。恐らく、まだ相手方に攻撃の意図はないのだろう。幸いにしてインベントリー内部は金策のためにだいぶ整理してしまったが、それでも最低限必要なものはそろっているし、その金策をするに至った理由は、期間限定ガチャ(と言っても終了後半年もすれば全商品がぼったくりレートで商品棚に並ぶのだが)を回すための資金であり今は完全に宙に浮いている状態だから潤沢な予算があると言える。
まずは、メイン武器の選択だろう。無難にM4A1にするか、MCXやARX160、XM8の様な新世代のアサルトライフルを選ぶか、携行性重視で短機関銃や個人防衛火器を選ぶか、隠密性と射程を重視して自動式狙撃銃を選ぶか、……よし決めた。M4A1にしよう。ただ、弾薬は6.5CMに変更する。
大筋で決めたら細かいセットアップをする事にしよう。もとからついているサイトシステムはEOTech社のホログラムを投影する近距離戦用照準器である553ホロサイトだが、それなりの射距離が必要とされることが予測されるから4倍ズームの戦闘高度照準器に変更する。元はCQB重視のセットアップだったが、近距離と中距離何方にも対応可能なように変更すると言う訳だ。つぎに、ハンドガードをRISから細身のM-LOKハンドガードに換装して握りやすくするとともに軽量化をする。もとのハンドガードに付けていたMBUSを新しいハンドガードに載せ換えて、バトルグリップからハンドストップに変更、ストックをクレーンストックからCTRストックに変更した。そして、AAC製のサプレッサーを付けて隠密性にも気を遣う。
次にセカンドラインギア(胴周りの装備)の選択。まぁ、インベントリーを見ればJPCしか入っていないのだからそれ一択なのだが。前側の3連カンガルーポーチにSTANAGマガジンを3つ差し込み、右側のカマーバンドにブルーフォースギアの2連マグポーチをセットして左側にメディックシザースポーチを取り付ける。
サードラインとしてファニーパックを選択。携帯食料と火起こし具、サバイバルブランケット、バッテリー、携帯浄水装置を入れておく。
これで粗方漏れはないはず……。って手榴弾がないな。M67フラグを2つとグレネードトリガーポーチを出す。M67の安全ピンとトリガーポーチをインベントリーの肥しとなっていたパラコードで結んで片手で取り出して片手で投げられるようにしてからプレキャリの背面パネルに取り付ける。
あとは移動手段だ。流石に隣町なり農村なり宿場町なりまでの距離が分からないのに徒歩で旅に出るわけにもいかない。移動手段は様々、自動車、ヘリコプター、バイク、バギー……。
インベントリー(実際には別枠のハンガーという格納エリアだが、大体のプレイヤーはインベントリーと言うことが多い)のリストにはM1A2 SEPV2とM8 AGS、RG-33、TOS-1、2K22、BMP-T《戦車支援車》、LAV-25A3、UH-60L、AH-64F、CH-47F、F-5E、F-14D、JAS-39E、F-22A、FB-22、C-27J……と書かれている。
このうち戦闘機を始めとする固定翼航空機は通常型機機であって垂直離着陸機機ではないため使用不能。ヘリコプターは飛行安定性が著しく低く、投槍や投石等でも撃墜されたことがあるため安全上使いたくない。戦車などの装軌式戦闘車両はコストが高すぎる以上事実上の使用不可能。残りはRG-33とLAV-25A3だけど、RG-33は重心が高すぎる上に鈍重で速度が出るとは言えない。また、未舗装道路を高速走行する上では安定性に不安がある。LAV-25A3は水陸両用で走破性もそこそこ高く、何より防護力が段違いだが、ガチャで出したばかりだから使ったことがない。流石にぶっつけ本番で使うのもどうかと思う。
結局選んだのはYAMAHADT200WR。美しいヤマハブルーの車体のオフロードバイク。一時期、どこぞの軍隊が導入していたという国産の2スト200㏄バイクだ。排気量的に車検が必要ないとか侮るなかれ。伝統的に劣悪な燃費を誇るYAMAHAのバイクだが、海外のモトクロスやトライアルにも出場実績(優勝実績ではないが)を有する優秀なバイクなのだ。それに日本ブランド、日本プライドである。ヤマハのバイクはカワサキやホンダの様に変態機構や独創的過ぎる機構を採用していないため独自整備が面倒くさくない。それに、ヤマハの本社は県内にあるのだから郷土愛的なものも理由の一つだ。
もう一つ安心材料を付け加えるとしたら、従兄のDT200WRに乗らせてもらったことがある。ということだ。ゲームと現実は違うかもしれない。と言うか違うはずだから、いくら|同時多人数接続型仮想現実体感型一人称シューティング《VRMMOFPS》であると言っても現実世界で運転したことのあるこのバイクの方がいいのではないだろうかと言う考えの元採用した。後はハンガーの機能である燃料タンクからガソリン携行缶にガソリンを移し替えるだけだ。
バイクの話は一部捏造していますが、そうでもしないとFPSに出てこなそうだったためです。




