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第20話

第20話1回目

………………


「この扉の中がダンジョンボスの前室だ。全員装備チェック」


 探索中のダンジョンの第3階層の奥深く、そこに到着するまでに約2時間かかった。総勢43名のレイドはそれほど消耗することなくここまで到達した。


 広義の意味におけるボス部屋とは、ボスがいる部屋とその直前の前室と呼ばれる部屋、ボスを倒した後に開放される宝物この3つから構成される。ボスがいる部屋にはボスとその取り巻きが数体おり、前室にはボス部屋にいる取り巻きと同種のモンスターが50から200程いるのが通例であるという。ちなみに最頻値は70ほどらしい。


 そして、宝物庫には様々な宝石類や希少な魔道具、ダンジョンに入ってすぐの広場に転移可能な転移魔法陣などが存在する。ダンジョンが存在するRPGゲームにおいて初回ボス撃破ボーナスに相当するものであり、ボス攻略レイドに参加し生き残った者はこれらをもらうことが可能だ。だからこそ競争率が高く、今回のような一般公開されていないダンジョンのボスを攻略する際は調査を主導する冒険者ギルドの職員がレイド参加者の選抜をする。


 その選抜には非常に高い倍率を誇る調査団の中からさらに厳選するため、冒険者たちは普段からギルドに悪い意味で覚えられないように、なろう小説やラノベでよくある冒険者のような暴力的あるいは威圧的な行いはほとんどしない。もっとも新人歓迎行事としてサーガ的な絡み方をする冒険者はいる。というか事前に新人冒険者が来ることが分かっていれば指名依頼としてギルドのほうからやるように指示が来る。ちなみに俺にも来た。断ったが。


 基本的にギルド職員の判断に任せられるのだが、1つだけ例外が存在する。それはボス部屋を発見したパーティーだ。彼らはボス部屋を発見した見返りとしてボス攻略レイド参加の権利が与えられる。しかしボス部屋を発見したパーティーは基本的に地図製作パーティーであるため、本職の戦闘パーティーよりも弱い傾向にある。そのため後方支援に徹することが様々な方面から推奨されるのだが、近接戦闘職にとっては武勲を上げられない傾向があるため、宝物庫での分配で不利になる傾向がある。


 結果として、その推奨がされているにもかかわらず、前に出たがるパーティーが多い。ただ今回は3人とも後方支援に徹するということで合意した。


 俺は、獲物が銃という前に出ないほうが有効なものであるためだ。


 魔法剣士エリスは後衛魔法使い(ダメージディーラー)として参加する予定であるため、むしろ渡りに船であった。


 最近1.7.10にバージョンアップしたため、難易度と言うかめんどくささが増して怨念がたまりつつあるが某アドンと同じ名前の重戦士グレッグは自分1人だけ前に出るのもなんだか……。ということで俺たち後衛の護衛にあたると宣言した。


 結果、わきまえているパーティーということで余計評価をもらったらしい。2人はともかく、俺は後衛のほうが強いからという理由だ。何と言うかこそばゆいものがある。これが学内カースト上位のハイスペックイケメン野郎なら堂々と賞賛を受け取ったのだろうが俺には無理のようだ。


 まぁ、回想はそのあたりにして、装備の確認をする。アパレルラインはクライ・プレシジョンG4コンバットシャツ&パンツに511タクティカルのTDUベルトを通し、トレッキングシューズとメカニクスのタクティカルグローブをつけている。


 ファーストラインはDIRECTACTION製のMOLLEベルトをベースにマガジンポーチとダンプポーチ、メディカルポーチ、水筒、フラグポーチ、ホルスターを反時計回りに装備している。フラグポーチはトリガーポーチのようなものではなく、プラスチック製のバックルを外さなければならない旧式のナイロン製ポーチだ。これは戦闘時の混乱で味方がグレネードを外してしまい、味方もろとも肉片になるという事態を避けるためだ。


 セカンドラインはMBSSという軽量なプレートキャリアを選択した。セットアップは簡単でファーストマグケースとターニケットポーチだけだ。


 行動食やダクトテープ、パラコードなどの便利グッツは5.11タクティカルのベイルアウトバッグに入れて背負っている。


 プライマリーウェポンはストッピングパワーと取り回しの良さを両立することを重視して、ベルギーファブリックナショナルが世に送り出した名銃FALのカービンモデルであるSA-58OSWを選択した。こいつは民間モデルであり、フルオート射撃はできないが、もともとFALは軍用であってもその強烈な反動からセミオートオンリーに変更されたものが多く、大した問題ではない。セットアップは1.25倍の低倍率スコープと可視光レーザーサイト、ハンドストップだ。


 本当はMk.1アイボールセンサーのきわめて鋭いオートフォーカス機能を焦点距離の自由度を増す等倍スコープにしたかったのだが、それはなかったためほとんど等倍と同じ視野の1.25倍のスコープを搭載した。


 CQB対応を考えるのであればドットサイトにするべきではないかと思うかもしれないが、しっかりと肩付できるショルダーウェポンはパララックスが狭いスコープでも十分に使えることと、そもそもスコープの先が見えなくなるほど崩れた除き方をした場合、反動を下ろしきれなくなるカービンモデルのFLAの場合、ダットサイトがスコープに対して有する優位性はほとんどないと考えたため、ショートスコープを選択した。


 セカンダリーウェポンはS&W 3566リミテッドを選択した。日本人にとっては正式名称よりもエアソフトガンのモデル名であるPC356のほうがなじみ深いかもしれないが。使用弾薬の.356TSWは口径9ミリながら高威力であり、単発威力と装弾数を両立できるまさにダンジョンアタック向けの拳銃だ。カスタマイズはマグウェルの拡大とサイトシステムをゴーストリングサイトに変更したぐらいだ。


 マガジン、チャンバー、セーフティーともに問題なし、ほかの装備も問題なし。オールグリーンだ。


「全員準備オッケーということでいいな? 問題ないのであればこのまま突入する。突入後は速やかに陣形を整え、セオリー通りにやるぞ」


「おお!!」


 いよいよもってボス戦の前哨戦だ。人生初のレイド戦に興奮しているのを感じるが、これは、VRMMORPGでもなければ夢でもない。まぎれもない現実なのだ。残機もなければ蘇生アイテムも存在しない、ペインアブソーバーが作動していないのだ。ゲームならばHPゲージが1ドット縮むだけのカスあたりですらスキができる可能性がある。気を付けていかなければ。


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