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第2話

第2話

…………


____クソッタレ。


 もしその言葉を口に出せたのなら、どれほど彼の気分は楽なることだろうか?


 少しでも気を抜いたら全身が沸き上がる怒りで震えそうになるのを抑える彼___林隼人は何とかそれを余りうらやましくない学校生活で培った精神力で耐えきった。


「ふむ先ほどの勇者たちとは違い、金髪碧眼(きんぱつへきがん)の人種だな。余は見たことないが昔はいたと聞く。その靴は前々回の召喚の時に似た物を履いていた者がいた。しかし、どういうわけか魔力はみじんも感じられぬ……」


 明らかに見下(みくだ)していた。自らを上位者だと何の疑いもなく胡坐(あぐら)をかく典型的なアホの視線と声色が隼人の目耳に届く。


 人生と言うモノは様々な理不尽が襲ってくる。例えばたまたま実家が学区の端っこにあり、ひたすら長い通学路を往復することを()いられたり。中学校に進学し、自転車通学が認められたが、その中学校が山の上にあったり。シャー芯の予備を忘れた日に限って、授業中に使い切ってしまったり。洗車した次の日の朝に鳥の糞がついていたり。遅刻しそうな日に限って猛烈な逆風が吹いたり、信号や踏切につかまったり。新人研修を終え、現場初日にいきなり残業があることを告げられ、断れる雰囲気もなく半ば強制的に残業をする事になったり。


 そのような、笑えるものもあれば、買い物中にアクセルとブレーキを踏み間違えた車が店に突っ込んできたり。念願の新築マイホームがずさんな手抜き工事で民事訴訟をする事になったり。高速道路を通行中にトンネルの天板が崩落して数百台の自動車とともにガレキの下敷きなったり。


 と言う風に笑えないものも多数存在する。そのほとんどが、繰り返されるものであり、Twitterで『歴史は繰り返す。一度目は悲劇として、二度目はジョークの再現として、三度目以降はラノベのテンプレとしてww』等と言われるぐらいには人は理不尽(りふじん)に見舞われやすい。もしかしたら、平凡な日常よりも不幸な記憶の方が人の記憶に残りやすいだけなのかもしれないが。


 だが、こればかりは現実的な可能性を考慮することのない理不尽だろう。これを予想して備えよ。とは流石の聖書の著者すらも考えていないはずだろう。


「して、使えそうか?」


「そうですな。先ほどの勇者たちは中年男性1人を除き、みな粒ぞろいでしたが……駄目ですな。適性職業が兵士になっています。騎士や将軍ならまだしも、これでは大外れにもほどがあります」


 あの神界だか天界だかを経由して、いかにもな厳かな部屋にクラスメイトと直前に会話をした非常勤講師、俺の16人が立っていた。だが、まず俺を除く15人だけ連れていき、1時間も待たされてようやくここに案内されて、その一切の遠慮もない言葉にいら立つばかりだ。


 しかし、ここで隼人がその苛立ちを表情や立ち振る舞いに出さずに済んだのは日頃の学校生活の賜モノと言うべきだろう。別にそんな成果を得られる学校生活など欲しくないが。


「そうですな…。 これが先ほどの勇者たちがおらずこの無能単体であったのであれば、無駄な魔力袋を使用させた責任を取らせるべきでしょうが、16体の奴隷の一つが無能だっただけです。勇者たちへの見せしめ兼弾除けでよいのでは?」


 イラ。


 特に苛立(いらだ)ちを感じたのはこの部分だ。隼人は自分の右手が反射的にホルスターに伸びるのを感じ、左手でそうはさせないと右手を抑える。今の体は母親からもらった体ではなく、FPSのアバターなのだ。一部でバニラスキンと言われる武装解除状態でも常時グロック19とコンバットナイフを携行している。予備弾倉は1本だけで合計31発しかない。城と言うからには警備兵の数は31人以上いるだろう。とても切り抜けられるとは思えない。


 そうやって苛立ちをねじ伏せている間に謁見が終了して、割り当てられた部屋に連れてかれた。ベッドと机、椅子、キャビネット、クローゼット。おおよそビジネスホテルから電化製品を撤去したような部屋だ。このようなクラス召喚モノの部屋ならばマシな方ではないだろうか?


 いや、部屋の品評はいい。まずは今後の計画だろう。







 作中で上げた理不尽の例ですが、笑えるものはすべて実話で実際に体験したモノです。ただ、笑えない類のものは、伝聞やニュースによるものです。


 第3話ですが、本日中に投稿できるかもしれません。約束はできませんが、その可能性が高いという話です。

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