第17話
「た、大佐…登校するのは明日の午前中て」
「あれは嘘だ」
「そんなぁ……ああああぁぁぁぁぁああああああ!!!」
第17話
……………
「あ、キースさんお早うございます」
「ああ、おはよう。今日から地図作成をしてもらうのだが、護衛としてこの2人を付けさせてもらうことになった」
名前はまだない。改めキースは適当でD66ロールで出した名前なので特に意味がない。別に名前を覚える必要もないだろう。と言う天の声が聞こえたが気にせず覚えておこう。
「冒険者ギルドBランク、グレッグだ。よろしくな」
「同じく、冒険者ギルドBランク、エリスよ。見た目はあれだけどいいやつだから仲良くしてあげて」
グレッグと言えば、あのインダストリアルモッドのアドンではなないか。レールクラフトを入れると精錬鉄の代替レシピで難易度が激落ちするという、何とも面倒くさいアドンだ。あ、おれはヴァージョン1.2.5で足踏みしている。粘土ブロックとかほしいなとは思うけど、コンクリとペインターで十分なんだよなぁ……ということでいつまでもの1.2.5に踏ん張る予定だ。
「おい、エリスよ。『見た目はあれ』ってどういう意味だ?」
「見た目が粗雑すぎるのよ。ひげぐらいそったらどうなの?」
そんなどうでもいいことを考えているうちに口論に発展する2人。これで大丈夫か?
パンパン
「君たち」
「はい……」
「すみません……」
え? どういうこと。キースさんってもしかして実力者?
「それじゃ、頼むよ」
多大な疑問を残しながら俺たちは迷宮に入っていった。迷宮の中は、遊園地のアトラクション。だろうか? ジェットコースターの類が数時間待ちだからとりあえず入ろうかと言うノリで入って、30分ぐらいガチで迷うタイプの本格的だけど、何かしらのギミックがあるわけではないタイプ。
ホルスターよし。マガジンポーチ、拳銃2個、ライフル1個…よし。ダンプポーチよし。メディカルポーチよし。…ベルトオールオッケー。セカンドライン、カンガルーポーチよし。右カマーバンドの2連マグポーチにマガジン入っている。よし。アドミンポーチの白紙ノートよし。シャーピーよし。ストロボよし。サバイバルキットよし。装備品はすべてよし。
ホルスターから拳銃を抜き、ホールドオープンされていることを確認する。ダンプポーチからマガジンを取り、マグウェルに差し込み、スライドストップを押し下げ、スライドを前進させる。スライドが完全に前進したのを確認してホルスターに戻す。続けて、アサルトライフルを手に取り、チャージングハンドルを二回引きチャンバー内部に異物が無いか確認する。異物がないのを確認したら、チャージングハンドルを引いたままボルトリリースを押してボルトを固定する。マガジンとマグウェルを目視確認して挿入する。そして、ボルトストップを押して、ボルトを前進させる。セーフティオン、ダストカバー、ダットサイトの確認を終えて準備完了だ。
「それじゃ、右手の法則で行きますのでついてきてください」
それじゃ行きますか。
「待て、右手の法則とは何だ?」
……とはならなかった。まさか、右手の法則をご存じでない? いやあり得るのか? 別ポケモンはやった事なくてもいいが、一定の法則がないとこの手の迷路は迷うぞ?
「右手を常に壁に着けているように、分岐を右に曲がり続けて、行き止まりに来たら分岐まで戻って探索を再開する法則です」
「なるほど。勇者探索法か」
勇者探索法? なんだそれ?
「勇者探索法って言うのは、過去に召喚された勇者たちが『これをやらなきゃ迷宮攻略じゃない!』と言って行った探索法のことよ。あなたもそれを習ったのだと思うのだけど違うの?」
『勇者』と言う単語は本来は勇敢なものと言う意味だ。敵の手榴弾を見つけて仲間を守るために覆いかぶさって戦死した米軍兵士がシルバースターを授与される。と言うのをFPSのストーリーモードで見たことがないだろうか。映画ネイビーシールズでもそういった描写があった。本来そう言ったものを指すのだが、日本においてはドラゴンクエストが大ヒットしたことで『おお、勇者よ!』のフレーズが広まった結果、日本では『異世界召喚の後に魔王を倒す』ラノベ主人公を『勇者』と呼ぶ風潮が出来た。
しかし、この世界にはドラクエ以前にJRPGやCRPGが存在しない。と言うかTRPGすら存在しないのだ。それらしいものは劇場で行われる演劇だ。ちなみにだが、三大コンピューターゲームの一角であるシミュレーションゲームに関しては原型が既にある。といっても戦略SLGの原型である机上演習のことだが。さらに言うと、最後の一角であるFPSに関してはそもそも銃が存在しない。まぁ、海外製モンハンと言われそうな狩猟シミュレーションゲームならロングボウやクロスボウによる狩猟が体験できるかもしれないが。
つまり何が言いたいかと言うとだ。多分勇者召喚の条件は意思の疎通が出来て、呼び出した側の世界から干渉されない異世界で、召喚する目的を達成できるだけの能力あるいは将来性、なんでもいうことを聞くアホな奴であることの4点が最低条件だろう。
意思の疎通が出来なければ、ボディーランゲージで会話することになる。流石に非効率すぎる。ただ、会話能力があるということは最低限の知性や理性を持つということだ。QEC
召喚と言うのはどう言いつくろったところで、誘拐でしかない以上、向こう側の世界の法執行機関が来たらどう言い訳するのか? と言う話になってしまうし、法執行機関だけで対処できなければ軍隊がやってくる。そりゃ、陸戦は技術的格差が出にくい戦いだからいいけどさ、宇宙艦隊がやってきてミサイルとレーザーで惑星ごと爆発するかもしれないし、地上戦で終わったとしてもオーベルシュタインの芝刈りみたいなことになったらどうするんだよと言う話じゃん。QEC
目的を達成可能な能力あるいは将来性。これが無ければ何のためにやったのか分からなくなる。大抵の場合は戦闘能力だろう。
何でも聞くあほな奴であること。上記3点を達成したところで、いうことを聞いてくれなければ意味がないのだ。この要件に関してはファンタジーな奴隷の首輪的なものが存在する世界ならば、それほど重視されないのかもしれないが、現時点でそう言ったものを見ていない。そういう面では帝国は失敗したのだろう。ただ、なんでもいうことを聞く人物と言うのはどのような人間かと言われると、お人よしや馬鹿という王道召喚ものラノベ主人公からハニートラップ。金銭的報酬。泣き落し。魔王を倒したら地球に返してやるとから手形を切る。などなど様々な懐柔策があるし、従順度合いにも解釈の幅がある。
ここまで条件を挙げた上で出てくるとなると、世界的に見ても高度な教育が施され、高い道徳観を持つ国家に所属し、勇者などと言う偶像を信じられる純真さを持つ人間と言うと、高い確率で日本の中高生がヒットする。例えば、アフリカの少年兵が高い道徳観はともかくとして、勇者などと言う嘘っぱちを信じられるほどお花畑な頭をしているだろうか? 恐らくない。何故なら、戦場では馬鹿から死んでいくからだ。恐らく、召喚される前に死んでいるに違いない。
では、アメリカ人は? ありえない。世界で最も道徳的に堕落している国の人間が事実上の無報酬で他人に奉仕するわけがないだろう。あの国は世界有数の契約社会であり拝金主義者の巣窟だ。世界貢献などするわけがない。なに? アメリカは世界の警察官をやっている? トランプが居なくとも自国第一主義におぼれ、世界秩序の維持をするという気概も能力も失いつつある国に、その様なボランティアをする意思があるわけがない。
そもそも、世界の警察官をするのはアメリカの国益につながっていたからだ。確かに、アメリカには本来の意味で勇者と言われるにふさわしい退役軍人がたくさんいる。だが、銃火器を使う勇者を見たことあるだろうか? ああ、確かにラノベで見ないからとそれは現実的ではないと否定するのはおかしい。だが、弾薬の補給はどうするのだ? それにアメリカ人がそう簡単に従うか? あいつらのせいで『民主主義する』という動詞が生まれたのだ。そう簡単に減庫へこするはずがない。
で、つまり何が言いたいのかと言うと(予想外に前振りがなくなったが今度こそ最後だ。いい加減3300字を超えているのでそろそろ締めたい)過去の勇者たちはドラクエで育った日本の中高生である可能性が非常に高い。しかも外国人はほぼほぼ考えられない。というのもドラクエは北米市場で大やけどを負っているからだ。何事にも例外があるものだが、大筋では間違えないだろう。『勇者探索法』これは、結構ヘヴィーなゲーマー勇者が広めたものかもしれない。勇者が提唱したから、右手の法則と言う名前が勇者の探索法というインパクトとネームバリュー溢れる単語に塗りつぶされたのだろう。
参考文献、小説家になろう『必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない』第460部分及び第461部分他
おかしい……おかしいぞ。1日目の探索を終了させる予定が入り口で足踏みしている。どうしてこうなった…?