第16話
第16話
……………
ドロロロロロ~~ッ
「イヤッホ~~~ッ!!」
ホンダ400X。国産では400㏄クラス唯一のアドベンチャーツアラーだ。フルモデルチェンジを行った新型はシュラウド周りのデザイン変更がなされ、ドストライクだ。高級感とカッコよさに加えて男前度がアップしている。見てくれだけで無く、ウインドスクリーンが20㎜延長されて快適性もアップしている。
さらにフロントホイルが先代の17インチかあ19インチへと大型化してオフロード性能が向上している。さらにリアサスペンションが分散加圧式となったことで基本オンロードだった先代とは違い、『オフロードも行けまっせ!』と主張しているのかようだ。
それだけではない。バブルタイミングやリフト量など、エンジンの徹底的なブラシップアップによって中小型バイクでは難しいとされてきた『ドロロロロ~~ッ』という重厚に回る2気筒エンジンらしさが加わり耳心地の良いツーリングが可能となったのだ。
低速から中速のレンジでの力強さアップと2気筒らしい躍動感、重厚なサウンドその3点に加えて、大型化したフロントホイルやリアサスペンションの一新が合わさり、楽しいツーリング性能がもはや異次元と言えるほどにアップしている。
カスタムは純正よりワンランク上のチェーンと社外品のサイドパイプとLEDライト、グリップヒーター、ミドルツーリング用のシートバッグ、窒素ガス、スコットオイラーで、レギュラーガソリンの組成を見つつ、ポリエーテルアミンなどのガソリン添加剤を加えて、特別仕様としたモノを給油して、同じ組成のものをジェリ缶に入れてインベントリーに保管している。最後に金属に防錆材をぶっかけ、ゴム類には二酸化モブでリンをぶっかけて寿命アップをした。
……まぁ、ゲームに錆びるとか経年劣化と言う状態異常はなかったのだが。……気分! そう、気分だよ! 自分のマシンは自分で整備したいな! って。 ……日本じゃ250㏄の中古街乗り用バイクと試乗車と知り合いから借りた物しか乗ったことないし、中古バイクじゃいくら頑張って整備しようがすぐがたがくるわけだが。
俺がバイクに乗っているのは、昨日聞いたダンジョンに行くため。ヤマハDT200WRではなくホンダ400Xに乗っているのはローマ街道に負けず劣らずの舗装道路がほぼ全区間にわたってあるためだ。(あと乗ってみたかったから)まぁ、流石に最後の800メートルほどは未舗装区間であるからオンオフ兼用のモノを選んだわけだが。
「えぇーーと……。 古代遺跡の発掘現場?」
二重の柵に囲われていることだけを見れば、立てこもり事件にも見えるだろう。後から聞いた話だが、意味合いは同じなのだという。内側の柵が内側の敵が来た時のバリケードで外側の柵が部外者を近づけないようにする為のモノだという。そして、その2つの柵の間に、多数のテントが……。というよりも天幕と言った方がイメージに近いだろうか。とにかく天幕が並んでいる。俺は門番に、ギルドでもらった身分証明書類を見せて本部まで案内してもらう。
「なるほど……ご協力に感謝します。とりあえず、今から潜るには遅い時間なので今日は休んでください。夕飯の時間になったら呼びに行かせますので、寝ないでくださいね。現状を簡単に説明しますと、迷宮の地図作成は一時中断しています。理由はスタンピードの発生でそれどころではない。と言うモノです。それもすでに終わっていて、明日から本格的な再調査の予定なので貴方には地図作成をしていただきます」
迷宮調査隊の責任者さん、名前はまだない。はそういうが、まだ午後一だと思うのだが……。
「あの、まだ時間があるように思いますが」
「その通りなのですが、スタンピード終了後8時間は探索禁止と言う保安規定があるのでどのみち今日中は不可能です」
なるほど。そういう事なら仕方ない。しかし、中世ヨーロッパのくせに意外としっかりしているな。
「分かりました。ありがとうございます」
「はい。では後で会いましょう。…そこの君。この人を宿泊用天幕まで案内して」
「はい。了解しました。では、案内しますのでついてきてください」
そうして、迷宮探索1日目は終了した。食事の質? クソ不味かったよ。缶詰と瓶詰めの食材に火を通したり、味付けをしたりしたものだ。あんまり美味しくなかった。そのおかげで就寝直前にお腹がすいて、寝袋の中でシリアルバーを貪ることになったよ。
ちょっと短いですが、切りがいいのでここで切りました。次回は、本日中に! とは言いたいのですが多分無理なので明日の午前中を目標にします。