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第14話

第14話

……………


 人は、平等ではない。すべての人間が同じ条件を与えられ、同じ成果を出せるわけでもない。なぜなら、完全な情報を持っているものはおらず、感情を排除できる人間はいないからだ。


 だからこそシカゴ学派は破綻しているし、それを擬人化した幼女も失敗する。


 だからこそ、『帝国軍人は驚かない』や『合理的判断そのものである帝国軍』とも称される帝国軍であっても失敗をするし、敗北もする。


 だからこそ、今回の大敗も仕方がない。勝負は水物だ。勝利の女神は浮気性であり、下着をちらつかせていると思ってふらふらと近寄ったら、ぶん殴られて敵方とキャッキャウフフしているところを見せつけられるかもしれない。







 ……と言えるレベルではなかった。帝国正規軍8万と貴族87家、輜重兵2万、それらの軍勢に勝手に随伴した民間人8000名の内、無事に帝国領まで帰ってこられたものは2万名にも届かなかった。その言い方からしてとりあえず1万名は超えていたであろう生還者の内、8割は四肢や目、耳等の欠損があり、労働力としては死んだも同然であった。


 この大敗は単なる軍事的大敗に収まらず、政治的な大汚点に拡大した。政権奪取後初の軍事行動が歴史に残るレベルの大敗となってしまったため、帝国の情勢は急速に悪化することとなった。


 帝国軍戦闘詳報によれば、このようになっている。


『進軍13日目。突如として弓兵による奇襲攻撃を受け、将校数名が殺害される。直ちに討伐部隊を派遣したものの、その全てが手痛い反撃に遭い、撤退した』


『進軍14日目。魔法攻撃と見間違えるほどの強力な矢による攻撃は続き、多数の将兵が殺害された。なお、その大半は将校であり、恐らく将校の殺害を優先しているものと思われる』


『進軍21日目。昨日に続き、倒木が街道を塞いでいること以外に妨害攻撃の類は無し。しかしながら、輜重隊が全滅したため食料備蓄は危機的状況を迎えつつあり』


『進軍24日目。敵山岳部隊による散発的かつ持続的な奇襲的襲撃を受け、多数の損害を受ける。損害極めて大にして損害の集計は不可能』


 これは一部抜粋の上で、現代語訳したものであるが、最後の一文がその壮絶な戦闘を物語っていると言えよう。


 そのように語るのは戦史に詳しい、ヤン・ウェンリー教授だ。彼はストリピタル=メルンボ記念大学の評価を、『金持ちの道楽大学』『就職浪人生の避難所』と言ったものから、『ストリピタル一の歴史学部を持つ大学』と言うモノに変えさせた人物であり、その歴史分析に関する世界的な評価は高い。曰く、少数精鋭によるハラスメント攻撃と漸減邀撃作戦の教科書的戦い。カンメイの戦いと並び立つほどの戦争芸術である。


__統一歴2038年出版 シリーズ『あの戦争を振り返る 第5巻帝国革命戦争』より一部抜粋。


==========

==========



「やっと戻ってこれた……」


 出発の時に見送ってくれた門衛に一言挨拶をしてから、不在時の情報を集めるためにギルドに向かう。特に変わりない日常を送る街の様子を見て、自分が何のために戦ってきたのかをやっと理解したような気がする。この光景を守るために戦ったのだなと。


 出発日から数えて、約4カ月が経過している。4カ月もたてば季節が変わる。景色が変わり、街行く人々の服装が変わり、店頭に並ぶ商品も変わっている。


「まぁ、ここは変わってないのだが」


 若干の苦笑をにじませつつ、ギルドの扉をくぐる。ギルドの外からでも聞こえていた食堂で騒ぐ冒険者や戦闘中の将校にも負けず劣らずの気迫ある指示を出し続ける料理長、受付のカウンターを挟んで条件交渉で激論を飛ばす依頼(クエスト)発注者と受付嬢、食堂で騒ぐ冒険者からおひねりをもらおうと様々な楽器で演奏する少年少女たち、そういった騒がしいがどこか心地よい喧騒に包まれている。


 いうなれば、いつものギルドだ。俺の姿を確認した瞬間、ギルドの中の空気が変わった気がする。料理長の声はもはや罵声と称せるレベルにまで変化し、ベテラン冒険者たちの目が光った。少年少女たちも期待の目を向けている。空席となっていたほぼ俺専用の大量討伐成功者確認カウンターに顔なじみの受付嬢がすっと移動してスタンバる。


 いつも通りな反応にさらに苦笑しながら、その専用カウンターに歩いていく。



==========

==========


「では今回も依頼完遂を確認しましたので、報奨金として白金貨600枚(金貨6万枚相当、日本円にして約6億円)を受け渡します。アイテムボックスの容量は大丈夫ですか? 大丈夫なら金庫から出しますので、受け取ってくださいね」


 俺は、白金貨が50枚入っている麻袋11袋をインベントリーに入れて、最後の1袋から白金貨20枚(金貨2000枚相当、日本円にして約2000万円)を出し、食堂の会計に手渡す。


「久しぶりに俺のおごりだ! 白金貨20枚だ! ここの食糧庫を空にするぞ!」


「「「「おおおおお~~~~!!!」」」」


 その日、宣言通りギルド直営の食糧庫は空になり、次の日の朝にギルドに行くと白金貨3枚と金貨76枚が返金された。なお、俺が妬まれない様におごりをするようになった直後は白金貨2枚でも食糧庫を空にできた。それが今では白金貨16枚と金貨24枚(約1624万円)でやっと空になるレベルだ。急速に拡大しすぎだろう。


 回転すし大手のスシローに勤務する母の話を聞く限り、飲食業の売り上げは高齢者一人当たり500円。学生1000(大学生&ひょろっぴー)から1500円(運動部部活帰り&女子)。社会人(平日昼)800円。休日ファミリー(大人2人、子供2人)4人組4500円。とのことです。なお夜の部は分らないそうです。

 なお、JKの客単価が高いのはケーキやパフェなんかを集中的にオーダーするからだそうです。そんなに食べたないなら300メートルしか離れていないガストかバーミアン行けよ! おかげで芝が大変なことになってヘルプで東奔西走することになるんだが!? と愚痴をこぼしていたので自重してください。

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