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第1話

第1話

……………


 それは、自習(じしゅう)の時間だった。午後の授業を担当する予定だった先生(センコー)がいじめを発見したことで、急遽(きゅうきょ)20人しかいないクラスから5人も連れ出し、その状態で授業を進めても補講(ほこう)が面倒くさいからと言う理由で分厚い問題集を渡され、時間までに予習と応用問題をこなすようにと言い、生徒指導にも使われる職員室の片隅(かたすみ)においてある机に連行した。今頃、校長やあの面倒くさい国語教師にキャンキャンうるさいちびデブの担任にいびられながら、いじめ対象にヘイトをためているのだろう。


 (はやし)隼人(はやと)と表紙の記名欄に書いたが、いっこうにやる気が起きない。窓の外にはほとんど散ってしまったがそれでも先輩たちを送り出した卒業式の記憶を思い起こさせるには必要十分な桜の木と新1年生たちが楽しそうに体育祭の3学年共通種目である組体操の練習をしている。


 おいおい……。そんなにふざけているとケガするぞ?


 見ていてそう思ってしまうほど気分が悪くなる笑い声が聞こえ、その音源(おんげん)に目を向けると逆立(さかだ)ちが出来ずに赤面する女子の姿があった。こりゃ、相当いじられる愛されキャラか相当悲惨ないじめられっ子のどちらかだな。


 なぜわかるか? それは自分がほぼ毎日、相手(いわ)く可愛がってあげているらしい事実上もクソもないれっきとしたいじめを受けているからだ。自称愛されキャラと言うのはいじめられていることに気づいていない天然のことを言うのだ。


 再び教室に視線を戻す。俺含め15人のクラスメイト達は机に向かい、まじめに問題集を解いている。……なんてことは無く、机にしがみついているクラスメイトの半数は机の下のスマホをいじり、残り半数は何やら内職をしている。パラパラ漫画でも書いているのだろうか? 流石にそれは即バレるから止めたほうがいい。


 たしかにこの学校の偏差値(へんさち)は20ぐらいだけどさ……。あとで怒られるのは簡単に想像できるんだからちょっとはやろうぜ? 俺も人のことを言える立場にないけどww


 この教室には16人目がいる。たまたまスケジュールが開いていた教員免許を持たない外部の非常勤講師(ひじょうきんこうし)が教室の一番前の教員用の机にノートパソコンを置き、何やら作業をしている。問題集を配った時には『私はここで仕事の資料を作っているけど分からないところがあったら聞きに来るように』とは言ってたから聞きに行けば対応してくれるんだろうけど、仕事の資料って、社外秘だったりしないのかなぁ……大丈夫か?


 しゃーない。やるか……。あ、シャーペンの芯(シャー芯)がない。


先生(せんせー)


「どうした?」


シャーペンの芯(シャー芯)がないので、外のロッカーに取り入っていいっすか?」


「いいけど、すぐに戻ってきてよ? 見つかったら僕が怒られちゃうから」


「ういーす」


 教室(きょうしつ)と廊下を(へだ)てる引き戸を開け、廊下に足を踏み出したとき、教室の天井と床に魔法陣が描かれていた。昨日見たクラス召喚もののアニメも同じような描写だったなぁ……。などと呑気に眺めていた俺はどうかしていたのだろう。体の半分は廊下にあるのだから、さらにもう一歩踏み出せば、地球に残れたはずである。逆に教室に戻れば……あ、やっぱなしで。


 なぜか死に際の様に様々な記憶(きおく)がフラッシュバックしつつも立ち尽くしていた俺はカメラのフラッシュの様に強烈な光とともに激痛が走り、意識を失った。






……


………


…………ん、ここはどこだ?


「ここはね。天界(てんかい)厳密(げんみつ)には違うけど分かりやすく言えば神様が住む世界だよ」


 目の前には人が好さそうな、それだけが頼りで簡単に騙されるそうなおっさんが居た。どうせ神様転移チートプレゼントコーナーするのだったら、女神さまに渡されたい。


「失礼だな! 最近のガキと言うモノは……」


 ガキとか言っている時点でアンタも相当失礼だと思うけどな? もうちょっと自らを省みたほうがいいと思うんだよなぁ…。


「まぁいい。それと訂正(ていせい)だが、転移ではなく転生だな。君は右半身が廊下に転がって、左半身が時空の狭間(はざま)漂流(ひょうりゅう)した状態だから、転移はちょっと無理……ごめん」


 ……マジで?


「うん。マジマジ。大マジ。こっちとしてもね? 魔法陣を出す前に施錠(せじょう)して今回みたいなことにならないようにすればよかったとは思うけどね? 基本的に技術史って失敗とか事故の歴史なんだよ。昨日の犠牲を明日出さないために日夜安全に向けて努力するのが技術史なの。だから君はその尊い犠牲に……」


 待て待て待て! さすがにそれはないだろう!?


「うん。だからね。さすがにXファイルに乗りそうな死に方しているから、現実世界(にほん)に戻すのはちょっと無理があるかなぁー。って思うんだよね。そこでクラスメイト達の近くに転生させてあげようかと思うんだけどさ、君はどうかな?」


 あほかてめぇー。いやに決まってるだろ?


「ぼくさ。一応君よりも立場上だと思うんだよ。だってさ、君の命を握っているんだからね。そろそろその舐め腐った態度を改めた方がいいと思うけどね。……ただ、そうなると困るなぁ。……そうだ! 君が夢中になってやってるFPSの武器とか車とかを使えるようにしてあげるよ! ただ、体はFPSのアバターで我慢してね!」


 ただ、その代わりにクラスメイト達と同じ場所に転移するのは我慢して。とのこと。え? 敬語? そりゃもちろんしてすよ。


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