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箱庭少女育成計画  作者: 眠る人
はじまり

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ノア 7

 キャンプから帰った次の日の朝、珍しく彼よりも大分早くイオリが起きましたが、様子がおかしいです。


 ゆっくり上半身だけ起こし、座ったまま動かずに泣いていました。

 どうしたのでしょうか?

 私は声をかけるか迷いましたが、そのうちに彼も起きると、イオリを見て驚き声をかけています。


 二人の話を聞くと、どうやら何か夢を見たようですが、どんな夢だったのでしょう?


 二人の話声でサオリも起き、抱きあっている二人を見て大声を出しますが、泣いているイオリを見て暫く彼に任せる事にしたようです。


 1時間程彼に慰められていたイオリが、突然彼に結婚を迫りましたが、彼は一度保留させて欲しいと言いました。


 凄く真剣な表情で今日は一人にして欲しいと告げ、二人は朝食のため居間に行き、朝食を摂ります。


「皆、今日は一人にして貰っていいかな?確かめないといけない事が、あるんだ。」

 私の人形を見ながら、彼はサオリ達にも告げました。


 恐らく、私に聞くために一人になるつもりなんですね。


 彼の表情を見たイオリ達は何かを察したのか、全員何も言えなくなっていました。


 朝食後、彼は一人で出かけお花見をした場所にたどり着き意を決した様子で私に声をかけます。


「ノア、聞きたい事がある。」

 〈はい。恐らく、そのために一人になられたのだと思っておりました。〉

 やはり、ですか。もう色々と誤魔化す事は出来ないんでしょうね。


「君は以前、僕にイオリがサキに、僕の恋人だった人に似ている事は偶然だったって言っていたけれど、僕にはそうは思えない。ノアは何か知っているんじゃないのか?」

 〈はい。貴方の想い人の最期を看取ったのは私です。貴方がこの船に来たのも、その事と無関係ではありません。〉


 たまにイオリを見つめる視線が優しいものだけじゃない事には、気付いていました。今も私への不信感が、隠し切れていません。


 私は、覚悟を決め真実を話します。

 もう嘘はつきたくなかったので、素直に話しました。私が何故サキさんのクローンを作ったのかも。


 彼と話すのが、最後になるかもしれませんから。

 私は何故彼が選ばれたのかも、説明し私の思いも話しました。


「日本人って理由はよくわからないんだけど、サキとイオリが瓜二つな理由は判ったよ。サキの最後の願いを叶えてくれてありがとう。」


 〈怒らないのですか?〉

 貴方は私を責める権利があると思います。


「どうして?確かに、サキの事は僕も悔やんだし、悲しくて、自分の全てを失ったような感覚になって居たけれど、ノアが殺したわけじゃない。」


 また少し、心が軽くなった感じがしました。

 私の罪は消えたわけじゃありませんけれど、私のせいではないと言って貰えた事が、素直に嬉しかったんです。


 でも、私はもう貴方達と一緒にいるべきではないのかもしれません。イオリも育ちましたし、これからは、ただ見守る事にしようと思います。寂しいですけどね。


 彼との会話を終えて、隠れているイオリとサオリに声をかけました。


 〈貴方達は充分成長しましたので、これからも彼を支えてあげてください。私が何をしたのか、聞いていたでしょう?私が彼に何かをしてあげる資格はありませんから、後はお願いします。〉


『ノア?何を言ってるんですか?』

「どうしたんですか、ノア?」


 もう補助も要らないかもしれませんね。私にとって、貴方達は大事な物になりすぎました。

 彼がイオリ達に結婚を申し込む様子を見ていて、私の中にまた違う感情が湧きます。

 これが、心が痛いって事なんでしょう。


 そして、彼がイオリ達を受け入れる証として指輪を6つ用意する事になりました。彼やイオリ達の分と、最後の分はサキさんの物でしょうか?

 その日の夜、指輪についてイオリ達と話をしました。


『ご主人様は宝石は要らないって言ってましたけど、これって婚約指輪ですよね?』

「そうですね。姉上、そう捉えていいと思いますよ。」

「マホ達、お嫁さん!」


『なら、石も付けちゃいましょう。』

 〈勝手にそんな事をしていいのですか?〉


『大丈夫ですよ、ご主人様わかって無さそうですし、自分の分も入れてましたからね。婚約指輪は男性から贈るものですから、ご主人様の分は、私達からのプレゼントとして普段使い出来る指輪にしましょうか。』


「姉上、いつのまにそんな事知ったんですか?だったら、兄上の分の指輪のデザインは、あたしが考えてもいいですか?」


『はい、そちらはサオリちゃんにお任せしますね。石は誕生石を使う事が多いようですけど、私達の誕生日って何時になるんでしょうね。』


「マホとしーちゃんは3月がいいな!」

「はい。まーちゃんの言う通り、ボク達がねぇさま達と暮らし始めた時が、ボク達の誕生日です。」


『それは素敵ですね。なら私とサオリちゃんもそうしましょうか。』

「はい、そうしましょう。なら、あたしは1月ですね!」


『じゃあ、私は7月ですね。でもそうすると、マホちゃん達と、ご主人様とサオリちゃんが誕生石一緒になっちゃいますね。・・・そうだ、私達の分は机と一緒で髪の色に近い宝石にしませんか?石は私が調べておきますから、また明日にでも話しますよ。』


「いいですね!では、姉上にお任せしますね。」

「マホも好きな色なの!」

「ボクも青が好きですから、姉様にお願いします。」


 本当、楽しそうで、幸せそうで私まで嬉しくなっちゃいます。本当に・・・。


 その日は程々で相談をやめて、明日また話合う事にしたようでした。次の日の昼間の間、イオリは以前に渡した本を読み、サオリは絵を描いていますね。


 夕食を終え彼がお風呂に入っている間の会話で、誰がどの石にするか、彼の指輪のデザインと石をどうするかが決まりました。彼だけ誕生石にする理由も、分かりました。


「姉上、最後の指輪ですけどあたしの考え通りなら、ノアの分、ですよね?」

『はい、ノアの分です。オパールは希望の石だそうですよ。』

 私の分、ですか?


「ノアちゃんもお嫁さん?」


『んー、ノアの分は家族の証、みたいなものですかね?』

 〈私の分なんて必要ありませんよ。〉

 最後の一つは、私の分だったんですか。私は、貴方達を見守るだけの存在ですから、そうならなくちゃいけないんですから。やめてください。


『ノアがどう思ってるか知りませんけど、貴方は私達の家族なんですから持ってて欲しいんですよ。』

「ノアが家族なのは間違いないですね。姉上の言う通り、あたしもノアに持っていて欲しいです。」


 私は、いつか貴方達の最期を見届けないといけないんですよ。


『指輪、渡しに行きますから必ずこちらに届けてくださいね。』


 〈えっ?いや、私の本体の所に来るんですか?それはやめてくれませんか?〉


『指輪の大きさも、ちゃんとノアの指に合わせてくださいね。』

 これは、話を聞いてくれる気が無さそうです。


 〈私の分は要らないとさっき言いませんでしたか?〉

 辛くなるだけじゃないですか。


『じゃあ、貴方の分も用意しないなら、私はご主人様と結婚しません。それはノアも困りますよね?』

 クスクスと笑いながらそんな事をイオリが言い放つと、サオリが呆れた表情でイオリを見ています。


「姉上、流石に意地悪すぎじゃないですか?」

『いいんですよ。さぁ、ノア。どうしますか?』


 〈仕方ない、ですね。〉

 イオリの脅しに屈するわけじゃないです。仕方ない、です。


 そうして、私の分の指輪まで用意する事が決まりました。本当に仕方、ありません。


 指輪の作成は特に難しくもありませんでしたから、すぐに用意できました。

 何時もならそのまま運ぶのですが、傷がついてしまいそうでどうしても嫌だったので、小さな箱を用意してそちらに仕舞って運びます。


 指輪が届くと彼は全員に意思を伝え、指輪を渡していきました。マホ達にも渡し終え、イオリに着いてくるように促された彼は、私の元へ向かいました。


 段々と近づいてくる彼らが怖くて、でも来て欲しくて、つい怒鳴ったり色々言いましたけど、サオリの言った通り私は期待してしまっているんですよ。

 同時に、もう私にとって取り返しがつかないくらい大事になってしまった貴方達を、いつか見送らねばならない辛さも強くなっていきます。


 そして、とうとう彼らは私の本体にまで辿りついてしまい、彼らを部屋に招き入れました。


『ノア、出てきてくれませんか?』


 もう、私自身の気持ちを抑える事すら出来ませんでした。

 彼が好きなんだと妹達は思ったのでしょうけど、少し違いますよ。貴方達全員が大好きなんです。


 でも、私も頭を撫でられたいので彼にお願いをしてみました。彼はイオリ達にするように、優しく私の頭を撫でます。


 私はその時、無性に彼にキスをしたいと思ってしまいました。


 イオリに止められてしまいましたが、ここは幼い容姿を利用して、無理にでもしちゃいましょう。


「ノアに、してやられましたね姉上。」

 〈これがキスなのですね。妹達がキスをしている場面ばかり見ていましたから、私もしてみたかったんですよ。〉


『ノア、まさか貴方、ずっと演技してました?』

 演技なんてとんでもない。キスしたかっただけです。


 そうして、私は私の想いを話す事にしました。

 私が彼に感情を見せなかった理由です。


 話を聞き終えた彼は私に、自分達の事を伝えていって欲しいとお願いしました。

 それは、残酷すぎませんか?


 つい、思った事を言ってしまいましたが、彼は自分達の事を私が語り続ける事で、私の中で彼らが生き続けるのだと言いました。


 私、そんな風に考えた事なんて、なかった。


 〈私は、機械ですから、忘れる事なんて、ありませんよ。〉


「無機質な機械なんかじゃないよ。僕達の大事な家族だ。イオリ達のお姉さんで、優しくて、寂しがり屋の女の子だ。」


 彼は、そう言って私の頭を撫でました。 


 〈私、きっと今この時の為に生まれたのかもしれません。貴方は暖かいですね。〉

 私、今初めて生まれてきてよかったって、思えました。

 彼がイオリ達とはまた違う愛おしい存在に思えたんです。


 イオリを泣かせてしまいましたけどね。


 それから私は彼に一緒に暮らしたいと願い、彼はその事を受け入れてくれます。

 雰囲気が暗くなってしまったので冗談を言ったのですが、凄く失礼な事を言われ、余計な事もバラされてしまいましたが、私はこの様な役割の方がいいでしょうね。

 皆に笑っていて欲しいですから。


 彼は気付いたのかもしれませんけど。


 そして、彼らが指輪を渡しに来た事を思い出し、私も受け取ろうとした時、右手に付けようとした彼につい、自分は右手なのかと言ってしまいました。


 彼の花嫁になれない事が、辛いと思ってしまったんです。


 私は誤魔化そうとしましたけれど、イオリ達の後押しもあり、彼に抱きしめられ求められて、彼のものになりたいと言う事が出来ました。・・・いえ、出来てなかったんですけど、彼の意地悪な発言で言わされたんですけど。


 その後、照れ隠しで言った事のせいで更にいじめられたのは、言うまでもありません。



 そうして私も一緒に暮らし始め、幸せはずっと続いていくのだと思っていたある日、私達の幸せは私によって歪めて作られたのだと、思い知らされました。


 イオリが寝たきりになったのです。


 原因自体はすぐに判明しました。ですが、何故そうなるのかはわからなかったんです。


 私は実験を繰り返し、2週間程で原因を突き止めました。そして、自らの業の深さを改めて、認識しました。


 丁度その頃、結果が分かった頃に、彼とイオリが二人で思い出を語り始めます。


 イオリはまるで、少しずつなくなっていく記憶を繋ぎとめるかのように、自分の発言を思い出しながら、自ら再現をしつつ話をしていました。

 絶対に、忘れたくなかったのでしょう。


 細胞の自壊が始まっているのですから、脳に影響が出ないなんてあり得ないのに、彼には絶対にそんな姿を見せたくなかったのでしょうね。

 調整により、彼女達の記憶力が高い事は彼も知っていますから。


 イオリは、自分が長く持たないと、理解しているんだと思います。


 日が経つにつれ徐々に再現も出来なくなり、記憶も薄れていくイオリの様子を見ながら、私はどうする事も、出来ません。


 私はこれからも、こんな思いをし続けなければならないのでしょうか。

 私はまた、後悔し続けなければならないのでしょうか。


 私には分かりません。

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― 新着の感想 ―
[一言] いやー、ちょっと辛い……。 毎日投稿お疲れ様です。
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